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マネージャー  作者: 夕顔
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マネージャー?

 しかしマネージャーと言っても本当に名ばかりだ。

 松葉杖生活で治療とリハビリが必要な私は、そもそも部活動に顔を出す事が出来ない。

 

 そのために登下校は親の自家用車での送迎だ。

 毎朝電車で横山に会う事が楽しみだったのだが、こればかりは仕方ない。




 「おはよう菜々子!」


 あの泣いた日以来唯が玄関で私を待ってくれているようになった。

 そして張り切って教室まで鞄持ち係をしてくれている。

 

 心から感謝をした。

 まるで私の専属マネージャーのようだ。

 



 松葉杖になってから私達はバスケの話より、私生活の話をするようになった。

 こういう事には不器用なはずの彼女が私に気を遣っているのだろうか。


 




 そんなある日彼女の口から爆弾発言が出た。


 なんと好きな人が出来たらしい。

 相手は同じクラスの野球部所属で澤村君という男子だった。


 しかし失礼な事に私は澤村君がどういう男子か分からない。

 彼は普段とても大人しく、野球が上手いという話も聞かない。

 イケメンでなければ身長も唯とそんなに変わらない。


 対して唯は色白美人でバスケが上手い。

 明るく活発でいつも笑顔だ。

 ただサバサバ系と言われているが、最近私の中では不思議系の色が濃くなっているのが欠点な位。


 澤村君には少し失礼だが、うちのクラスにはもっと魅力的な男子がいる。

 ラグビー部の大谷や同じ野球部の外崎は面白い上に身長も高く男らしいし、帰宅部だが宮本もイケメンだと思う。


 


 「どこが良かったの?」


 と聞くと


 「見た目がサルみたいで愛しくならない?」


 と頬を染めて答えた。

 



 わからん。




 しかしまあ、その話をする唯は凄く女の子らしくて、いつも以上にテンションが高かった。

 そんな姿が可愛くて


 「応援するよ。頑張って!」


 彼女の中では王子様なのだろう。心から友人の恋路を応援しようと思った。

 すると彼女は染めていた頬の色が全体に渡り、顔を真っ赤にしながら


 「うん!ありがとう!」


 と答えた。

 表情を取り繕って平常に見せようとしているのが顔の色とミスマッチで、思わず笑ってしまった。

 だがその姿は本当に可愛かった。子犬をわしわしとしたくなる気分に少し似ていた。






 だが唯は相当不器用な色白美人だ。

 例えば今日は凄い髪型をして登校してきたので急いで整えてあげているところだ。

 昨日私が少し高い位置からのツインテールの髪型で登校した事で彼女のスイッチが入った。


 私は幼い頃からロングヘアで、髪型を造るのは得意だった。

 少し癖のある猫っ毛なので、実は下ろすだけの方がセットに時間がかかる。


 「その髪かわいいね!私もやってみる!」


 同じくらいのロングヘアの彼女はそう言って張り切っていた。

 彼女の髪の毛はサラサラの直毛で普段は下ろしているが、部活動の時だけは無造作に後頭部へ纏めるのがいつものスタイルだ。


 あまり髪型を気にしない彼女が珍しいとは思ったが、恐らく澤村君に恋をした事がきっかけなのだろう。




 そして今朝玄関で私を待っていた彼女を見て私は驚いた。


 左右の高さが全く違ううえに櫛を通さずに作り上げた非常に独創的な髪型だった。

 ゴムの色がピンクと黄色なのは拘りなのだろうか。

 口を開けたまま彼女を見ていると


 「昨日の菜々子の髪型真似してみたんだ!似合うかなあ。」


 右の髪は耳の上に左の髪は耳の下にテールを揺らしながらモジャモジャの結び目で、顔を赤らめた。


 「いやあ。教室行ったらなおしてあげるわ。」




 こうして私は彼女の髪を整えている。


 彼女が求めているであろうツインテールが出来上がると


 「マジ凄い!昨日の菜々子の髪型と同じだ!」


 彼女は目を丸くして鏡をずっと見ている。

 そしてあの素敵な笑顔で


 「ありがとう!」


 と言った。




 私は大好きな唯を見ながら、彼女にも専属マネージャーが必要だと思った。  

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