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マネージャー  作者: 夕顔
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夜の車内

 へたれな私と横山の関係はなんだかんだ言いつつも進展した。




 新天地に移り住んでから最初の年の花火大会で、ついに私は彼に告白をしたのだ。

 

 この時もまた私は意を決して性懲りもなく浴衣で出陣した。




 しかし彼が最初から最後まで手を繋いでいてくれた事で私の勇気と決意は最高潮に達し、打ちあがる花火の美しさと大きな音に励まされ、ついに中学の時からの想いを伝えた。


 彼は照れくさそうに笑ってから、握っていた手を肩に回して抱いてくれた。


 花火の光を浴びながら顔を合わせて笑った時は本当に幸せで涙が出た。






 しかし付き合いが長いからなのか、彼が「今を生きる」人だからなのか私達は度々些細な喧嘩をしては別れる。

 そしてその後よりを戻すという行為を繰り返す。

 毎回売り言葉に買い言葉の喧嘩別れなので、つまる所お互いに本意では無いからなのだろう。

 だから別れても常に「友人」として繋がり続けて完全に切れる事がない。


 子どもの喧嘩のようだ。 


 


 しかし最近になってようやく私も反省しなければならない事に気付いた。


 同じタイプの唯と同様に彼と仲よく過ごす事ができないのは、愛情の種類が違うところにある。

 「母親」であるか「恋人」であるかの違いだ。

 そしていつしか彼女に対して「マネージャー」だったのに対し、彼に対しては「パートナー」になっていた。

 そして彼にも「パートナー」である事を望んだ。


 つまり自分でも気付かないうちに彼に見返りを求めていたのだ。 


 しかし高校時代を思い出す事で、彼に対しても「マネージャー」で良いのではないかと考え始めた。 


 ただその愛情の種類は母親とは少し違うものである。

 



 結局私が得意とするのも「マネージャー」なのだろう。

 





 唯と澤村君は遠距離恋愛を貫いた。


 比較的距離が近い方なので度々帰省をしてはデートを重ねる事ができたのは大きい。

 しかし最も幸せの足掛かりとなったのは彼女も彼も筆まめだったということだろう。

 二人の書いた手紙は莫大な量になり、唯が警察官として地元に勤めるようになる頃までには段ボール一箱が一杯になった。

 これは是非友人代表の挨拶で使わせてもらおうと考えている。










 エンドレスに流れるテンションの高い音楽をBGMに高校時代を思い出した私は助手席を見た。


 助手席にいるが助手にならない二週間程前からの友人は、まだ寝ているのだろうか動かない。

 

 周囲が暗くなってきたためヘッドライトのスイッチを入れる。

 地元はもうすぐだ。

 

 


 故郷の光景は何度見ても心躍らせるもので、私のテンションは高まっていく。

 住まいも活動拠点も今は仙台にあるが、生まれ育った空気というものは絶対に忘れられるものではない。

 町並みも山の形も歩く人達も行き交う方言も、全て愛しく私に安らぎをくれるものだ。




 高速道路を降りたところで友人が動きだした。

 

 「やっと起きた。夕食どうする?」

 

 いつも寝起きが悪い彼なのだが、今回は寝起きの割にしっかりした顔をしている。

 珍しい。


 「んー。」


 そうでもないか。


 「なあこの曲変えていい?」

 「まだ覚えてないからだめだって。それより夕食どうする?」


 


 料金所を抜けると市内へ向かう。


 見慣れた風景に差し掛かったところで赤信号に捕まった。




 寝ぼけているのか何なのか。

 表情の割にどうもぱっとしない友人は私の質問には答えずポケットから小さな箱を取り出し私に差し出した。




 「この曲どうにかならねえかなあ。」


 

 受け取って蓋を開けると中にはどう見ても高価で素敵な指輪が佇んでいる。

 

 驚いて彼を見ると


 「もうちょっと雰囲気あるBGMが良かったんだけどな。」


 左手の薬指にその指輪をはめてもらうと私達は顔を見合わせて笑った。


 そして彼は私に言葉を告げ、私はそれに頷いて微笑んだ。



 

 最近考えていた事もあり少しも躊躇はしなかった。



 

 信号が青に変わりハンドルを握りアクセルを踏む。

  

 プラチナの爪がダイヤモンドを持ち上げているデザインのその指輪は本当に高価なものなのだろう。

 少しの光りにも反射してキラキラと輝いて見える。


 


 彼は私を見て嬉しそうに照れくさそうに微笑んでいる。






 そして横山は先程まで嫌がっていた音楽のボリュームを上げた。


 


 結婚式の余興ではぜひこの曲をリクエストしよう。




 友人代表の挨拶は唯にお願いしよう。




 これからは「妻」としての愛情を持って彼の「マネージャー」を楽しんでいこう。




 この先に広がる彼としか見る事のできない景色は、きっと幸せなものであるに違いない。






 FIN

最後まで読んで下さってありがとうございます。


今回は「間違いと正解と」と色々丸被りになりました。


当初は恋愛のジャンルになるのか友情のジャンルになるのか非常に悩んだのですが、「間違いと正解と」と背景を同じくする事で当時の青春や当時の恋愛事情に沿ったリアルなものを目指そうとしたらこのような作品になりました。


モデルとなった実際の唯と菜々子はもっと素敵で爆発力があって輝いていたのですが、文才が乏しく悔やまれるところです。


彼女達が幸せに笑っている事を願いつつ


これからの皆さまの景色が幸せなものでありますように、心から祈っています。

最後まで本当にありがとうございました。


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