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マネージャー  作者: 夕顔
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タイプ

 私は電車通学だ。


 自宅から学校へは二駅しか離れていないので、我が家の近郊から同じ高校に通う生徒は雪が積もるまでは自転車で通学する人の方が多い。

 私もたまに自転車を使用する事もあるが、通学路の途中に大きな陸橋があるため、それを超えるのが億劫なのと、もう一つ理由がある。


 同じ中学で同じクラスだった一人の男子が電車で通学しているのだ。

 彼の高校の所在地はかなり遠く、夏場でも自転車で向かうのは難しい。


 「おす菜々子。お前んとこの女子可愛いの多くね?

  ちょっと紹介してよ。」


 そう、全くもって私の片思いである。


 この男子は横山という名前で、中学の頃は野球部に所属していて、坊主頭なところを見ると高校でも続けているのだろう。


 「羨ましいだろう。ふふん。」


 いつか振り向かせたいと頑張っているのだが、これがまた難しい。


 この前髪で隠しているが隠しきれていないニキビがもう少しひけたら、彼の視界に入るだろうか。


 ニキビにも色々種類があるのだが私の場合は赤色だ。

 大分良くなってきてはいるが、比較的肌の色が白いため凄く目立つ。

 これがまた厄介で、決して不潔にしてできた訳では無い。

 洗顔に拘りすぎた故の後遺症なのである。

 元々清潔好きなのだが、一生懸命に洗顔をしたところ「ニキビ肌」というものになってしまった。


 何事もやり過ぎは良くないとこのニキビで私は学んだ。

 

 本来なら前髪を作ったり部活動などで汗をかく事もあまり良くないのかもしれないが、悩んでいる割に楽観視している部分もある。

 姉もニキビ肌に悩んだ運動部の高校生だったが、高校を卒業する頃には綺麗に治っていたので、きっと私もいつか治るだろうと希望を抱いているのだ。


 その時には横山に告白のひとつでもできるだろうか。




 「お前高校でもバスケやってるの?」

 「うんやる事にしたよ。」

 「へえ、俺も野球部入ったわー。」

 「分かるよその頭見れば。」


 二駅分の彼とのお喋りは私の毎日の楽しみになりつつある。


 「なんで野球部って坊主なんだ?」


 彼は頭をなでながら不満そうに話した。

 そういえば気になるところだ。

 私の中学の野球部は坊主ではなかったのだが、高校は何故かどこも坊主のようだ。


 彼が暫く遠くを見てから


 「あのさ」


 と言いかけたところで私の降車駅についてしまった。

 二駅は短すぎる。


 彼は言いかけた言葉を飲み込んで


 「またな。」


 と笑顔で言った。

 

 何を言いかけたのだろう。

 十中八九下らない事なのだろう。

 それでも気になってしまうのは私が彼を好きだからなのだろう。


 この関係を楽しんでしまっている自分に不安を感じる時がある。

 それは何も変わらないという事だから。 




 駅から高校へは徒歩5分。

 

 校門へ向かって歩いていると

 

 「おはよう菜々子!」


 後ろから声をかけられ振り向くと唯が笑顔で私を追い越していった。

 唯は自転車通学のようだ。


 せっかく声をかけてくれたのだからと、私は彼女が自転車置き場から出てくるのを置き場の手前で待つ事にした。


 すると自転車置き場から出てきた彼女は私の姿を見て


 「あれ、どうしたの?

  早く行かないと遅刻するよ!」


 と素敵な笑顔で言ってから、私を置いて走っていってしまった。


 なるほどそういうタイプなのか。


 恐らく「今を生きる」タイプで、物事を深く考えないさっぱり系の人なのだろう。

 実はこういうタイプの人が私の中学のバスケ部にもいた。


 このタイプは最も信用できて最も危うい。

 陰口は言わないがうっかりが凄く多いので、秘密の話は危険である。


 しかし私はこういう人が好きだ。

 とかく裏表がある人間より、うっかりしても良いから嘘の無い人間と友人関係を築く事の方が有意義で楽しいものだ。

 それに類は友を呼ぶと言われるように、結局私もそういう気質なのだ。




 唯と仲良くなれそうな気がする。 

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