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マネージャー  作者: 夕顔
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前夜祭

 文化祭の前夜祭は各クラスの出店のアピールと、大型の打ち上げ花火がメインのイベントだ。




 前夜祭が終わってから興奮冷めやらぬ生徒たちがクラス毎に集まり、一般家庭用の花火を近くのコンビニから買ってきて、陸上トラックを3面取れる程に無駄に広いグラウンドで遊び始める。

 近所のコンビニからは花火が一斉に売り切れる。

 これはどうやら毎年恒例のようだ。

 

 もちろん唯も知美も大興奮で不思議女子達は怪しいオーラを発している。

 しかし利き手を怪我しているので今回は大人しいだろう。




 と思ったのが間違いだった。






 唯はあまり家庭用花火の種類が分からないようで、様々な形や色に光る花火の全てに感動し、まるで子どものような表情で嬉しそうに眺めていた。 

 左手が動かせない唯は手持ちの花火が消えると笑顔で次々と着火をねだる。


 すると隣のスペースで澤村君がいるC組も花火をはじめた。

 当然唯のテンションはだだ上がり、自分の手持ちの花火に火が着く度に彼のところへ行って喜んで見せていた。

 澤村君はそんな唯と笑顔で話している。

 はたからみるとなかなか良い雰囲気である。




 するとそれを見た不思議女子仲間の知美が何か閃いた笑顔をしてから、唯が花火を取りに来るタイミングで手元の花火に火をつけてすぐに手渡せるように動き始めた。

 

 唯の手を見て心配して泣いた彼女は唯のために何かをしたいと思ったのだろう。


 火のついた花火を唯が受け取って走り出すと知美は凄く嬉しそうな顔をした。




 いいやつだと思った。




 ロケット花火を手渡すまでは。




 気付いた時にはもう遅かった。

 不思議女子の化学反応だ。


 ロケット花火を知らない唯は受け取って直ぐにまたC組の澤村君の所へ走った。




 止める間もなくロケット花火は唯の手から放たれ、低い軌道でC組のど真ん中に飛んでいった。






 C組から悲鳴と驚きの声があがる。


 唯は驚いて固まっている。知美も隣で固まっている。




 それを見たC組の大谷と宮本がニヤニヤしながらロケット花火を手にした。




 ああ。これはやばい。 


 


 案の定そこで着火された二本のロケット花火は我がクラスに向けて放たれた。


 


 戦争の幕開けだ。




 二つのクラスの女子は悲鳴をあげながら花火を持って避難した。

 しかし唯と知美は避難した先から目をキラキラさせながら戦争状態の男子達に向けてロケット花火を着火させる。


 「菜々子!これなら片手でも大丈夫だね!」


 地面に突き刺された複数のロケット花火を次々に着火させ、発射される度に唯は喜んだ。

 そうだった。唯に利き手はあって無いようなものだった。

 知美は目をキラキラさせて子どものような顔で地面に突き刺す作業をしている。


 援護でも何でもない三つ巴というか横っ腹を撃つというか。

 





 しかしこの戦争は長引かなかった。

 何故ならここは学校の敷地内だ。


 青筋を作って走ってきた彼等に激しく成敗された。


 手元のロケット花火が無くなった唯と知美は共に成敗されずに済んだが、そもそも開戦させたのはこの二人である。

 二人は一応反省しているようでかなり慌てておろおろしている。




 この時初めて知ったのだが、私達の三学年上の先輩が前夜祭の日に全く同じ事を海岸で相当派手にやったようで、通報され警察のお世話になり30人程停学になったという事件があったらしい。


 ロケット花火で停学とか後にも先にも聞いた事がない。

 そのクラスにいなくて良かった。


 その停学事件以来他で悪さをされる位ならと、グラウンドを解放するようになったのだとか。




 「ロケット花火は人に向けて使うものじゃありません!」


 二人は私に怒られると捨てられた子犬のような顔をした。

 躾もマネージャーの仕事か。


 しかし不思議女子というのはロケット花火を知らないのだろうか。




 並んで怒られている皆は怪我が無いようで良かった。

 

 しかし制服やシャツに穴が開いた人が多くいたようだ。




 花火はくれぐれも正しく遊びましょう。 

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