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マネージャー  作者: 夕顔
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三年生の部活動

 三年生になってからは一年時に同じクラスだった大谷の家に遊びに行く事があった。


 そこには様々な部活動に所属している三年生が出入りしていた。

 何をするというわけでもない。

 ただ喋っているだけなのだが、お互いの部活動の話などがメインで皆の状況を聞いたりするのは楽しかった。




 他の部活動のマネージャーの話も参考になった。

 この時初めて部内男女交際禁止の部活動がある事を知った。

 

 外の部活動のマネージャー達は皆部員達と共に真っ黒に日に焼けていて、特に野球部のマネージャーについては


 「うちのマネージャーには本当に世話になってる。

  皆が帰ってからも遅くまで学校に残って仕事してるんだよ。」


 と、野球部の皆が感謝の言葉を言っていた。

 そういえば真っ暗なグラウンドの中を一人動いている彼女を見た事がある。


 澤村君がうんうんと頷くのを見て


 「菜々子!私もマネージャーになる!」


 と唯が言った時は少し焦った。

 不思議女子の冗談は分かり辛い。




 サッカー部のマネージャーは試合の度にスポーツドリンクの他にレモンのはちみつ漬けを作ってるらしい。

 代々伝わるもののようで、レシピは先輩達から教えてもらったと話していた。

 サッカー部は監督が気難しいとのことで、監督の機嫌をとりながら選手のフォローをするのが一番重要な仕事だと言っていた。




 その時にバレー部の幸やクラスメイトの育実とテーピング談義をよくした。

 三年生にもなると皆体のあちこちがボロボロだった。

 

 当時の運動部の練習というのは今考えると体を壊すようなものがほとんどだった。

 うさぎ跳びで階段数十往復の筋トレなども珍しくなく、ひたすら体に鞭を打つ。

 だから筋肉の出来上がりは早く、その分早くから故障をする者も非常に多い。

 

 体は消耗品なのだ。

 

 恐らく私達の年代やそれより上の人達でスポーツを頑張ってきた人達は、大人になった今でもその後遺症に悩んでいる者が割合的に多くいるのではないだろうか。


 私の膝も足首もそういう練習のたまものだと思う。


 


 育実も膝の調子が悪いようで、膝のテーピングとアイシングについて詳しかった。

 幸も指を度々痛めているようで


 「部費じゃ全然間に合わないから結局皆追加で自腹きってるんだけど破産しそうだわ。」


 と笑っていた。


 バスケ部の皆は割と体が無事だった。

 監督が当時にしては珍しく体を壊すような練習を好まず、筋トレなどよりストレッチを大切にする人だったのが幸いしたのだろう。


 だが私も含め中学の時に無理な練習をした者は多い。

 これまでそういう人達が度々故障する事に対するサポートやフォローに注意してきたつもりだが、皆のボロボロの体の話を聞いていると、応急処置的な技術や知識を増やすべきではないかという事と、突発的な故障に対しての気構えについてを改めて考えるようになった。




 しかしマネージャーとは奥が深い。


 ラグビー部の人達は


 「うちのマネージャーは何もやらないで笑ってるだけだよ。

  でもまあそれで良いと思う。」


 と笑って話していた。

 彼女の笑顔は部員達をよほど癒しているのだろうか。

 存在だけで十分と言わしめるとは凄い事ではないか。


 色んな形のマネージャーがあるのだ。






 こういう交流は様々な部活動に所属している皆の意欲を高めたと思う。


 このあたりからバスケ女子部も自主的に朝練をする者が出てきた。

 

 はじめは唯が個人的に基本練習を減らす分のフォローとして行っていたのだが、次第にそれに共感した者達が共に朝練をするようになり、夏の大会前にはほぼ全員が毎朝参加するようになる。


 泣いても笑っても私達の高校バスケは夏までだ。 

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