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マネージャー  作者: 夕顔
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バカップル

 自分に彼氏が出来た唯は、私に恩を感じているのか私にも協力したいと言いだした。


 その一環として電車で横山の現物を見たいという事で、ある日の平日に我が家に泊まりに来て朝の電車に共に乗った。

 私は唯のマネージャーであり、不思議女子の彼女に多くを求めているわけではないのだが、気持ちはとても嬉しいものだ。




 しかしいざ横山を見ると彼女は目を丸くした。

 進学校で割と硬い我が校には、ああいう悪そうな見た目の人が少ないからだろう。


 「なんか意外だ。」


 私の顔を見ていつになく真剣に言った。

 少し苦い気持ちが広がった。


 「本当はああいう人じゃないんだよ。

  部活で先輩と喧嘩して野球部辞めてからああなったんだ。」


 すると唯は凄く厳しい顔をして横山の方を見た。

 その後は何も言わなかったが、電車を降りるまで彼女の表情は変わらなかった。






 唯と澤村君の交際は順調だった。


 二年生にあがる頃から澤村君は彼女から「うーたん」と呼ばれるようになる。

 名前に由来しているように思えないため愛称なのだろう。


 そこで彼女に聞いてみると




 「彼オランウータンが好きらしいんだよね。」




 私は思わず無言になった。




 恐らくやはり澤村君は「ゴリラ」と呼ばれるのは嫌だったのではないだろうか。

 唯を少しずつ理解したうえでの苦肉の策というところか。 

 それとも本当にオランウータンが好きなのか。


 だからこの二人は付き合う事ができたのだろうか。


 まあ、由来さえ聞かなければ「うーたん」という愛称はなかなか可愛らしい気がしないでもない。

 「ゴリラ」よりはよっぽどマシだ。

   

 ただ私なら呼ぶのは恥ずかしい。


 これはすっかりバカップルと思われてしまうだろう。

 いや。紛れもなくしっかりとバカップルだ。




 しかし私はこういうカップルが好きだ。


 勿論お似合いの美男美女カップルや雰囲気を持っているカップルも素敵だが、意外性のある組み合わせだったり多少バカップルの方がお互いを思い合っているように感じ、部外者的に信じられる気がしている。

 

 しかし全くの部外者がそのような事を言うなど本人達には失礼な話だ。本当に何様のつもりか。

 自分に救済でも求めているのだろうか。




 横山は見た目が変わってから電車の中ではよく女子と話している。

 色んな高校の色んな女子が日替わりで彼の近くにいる。

 皆綺麗だったり可愛かったり、気合の入ってる女子が多かった。


 本人は「彼女ではない」と言うが、女子の方はそうでもなさそうに私には見える。


 横山の事を好きなのだろうか。


 しかし私は今の彼の姿がかっこいいとは思えない。



 だから流行りの髪型で制服を着崩していつもタバコの臭いのする彼に近寄る女子を、失礼かもしれないが薄っぺらく感じていた。

 中学の頃のライバル達の方がよっぽど横山を思う気持ちは本物だったのではないのか。




 そこまで考えてからいつも落ち込む。

 人の思いは千差万別で、彼女達も間違いなく彼を思っているのかもしれないのに、どこまで上から目線なのだろう。

 野球をしている彼を好きになって「野球をまた始めて欲しい」と願う私には本来他人の事など言えないはずなのだが、このように理不尽な発想をしてしまうのは情けない事に嫉妬からくるものだ。


 私は彼を見る度にずっともやもやしていた。




 彼は女子に囲まれていない日や私が一人でいる時はよく話しかけに来る。

 それはそれで嬉しいのだが


 「お前まだバスケやってるの?」

 「やってるよ。」


 足の怪我の事は言いたくなかった。

 特に今の状態の横山には。


 「へえマジか。すげえな。」


 そう言った彼の顔は中学の時のそのままで、その後凄く寂しそうな表情をする。


 「横山も野球部戻ればいいじゃん。」


 喉元まで出かかる。




 しかし色んな思いがわいてきて、全て自分勝手な思いで

 結局言えない。


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