二話 初陣
10歳を過ぎた頃から訓練が本格的になった。
先ず剣術は領内の兵士達に混ざって素振りや基礎の型から、兵士との打ち合い、防衛を基本にした攻めの形を築き上げるのが第一との事。
槍術は攻撃が基本とし、素早く重く突き出すのが第一、ひたすら木に向かって突く。
弓術はひたすら的に射る、ある程度的に当たったら距離を伸ばして射る。
馬術にかんしては乗る、駆ける、走り廻る、領内をひたすら走り廻る。
―――
広場で喧嘩してから数年、あれからロイ達とは仲直りして一緒に遊ぶようになった、子供に良くある歪み合ってケンカして仲直り、本格的になった訓練をみんなで兵士に混ざって汗水流して、時には学んだ技術をお互いで試し、負けたら悔しいともっと頑張って互いに負けぬと張り合って。
そんなある日、ロイが成人した。
「おめでとうロイ」
「ああ」
ガルがロイに成人を祝した、数年前二人が切っ掛けで喧嘩したとは思えないくらい馴染んでいた。まぁガルやロイだけじゃないが。
「ロイお前の初陣って決まったのか?」
祝いの言葉も言わずロイの初陣が気になるベオウルフ。最近、成長著しく剣術槍術弓術は基本越え応用や工夫と次の段階に進んだベオウルフ達は訓練だけでは物足りなくなってきていた。
「それが決まってねえらしいんだよ」
初陣が決まらない理由は多々ある。バルト伯爵領はエンフィール王国の北西部にある、エンフィール王国は大陸の南東に位置し東と南は海、北と西は隣国との国境。
要はバルト伯爵領は北と西に隣国と面している事になる、だが、北は山岳地帯で砦が領内にある事から防衛に隙なく、西の隣国とは最近小競り合いもない。
「今の所、兵を出す必要がないからだね」
「そうなんだよ、待ちに待った初陣が待った有りなんだよ」
ガルとロイの言葉尻に残念と聞こえたベオウルフが提案する。
「待って来ないなら動くしかないな」
「「動くって?」」
―――
バルト伯爵領には城がある、領地の北と西に敵を抱えるバルト領にとって要で、エンフィール王国に置いて唯一領地の二面を敵と隣接するバルト領は最重要防衛拠点のひとつだ。
昔から、幾度となく北のリンターク帝国と、西のガンノ王国に攻められても堕ちぬ難攻不落の堅城だ。そこがバルト伯爵の居城である。
「オヤジ」
バルト城(通称)の執務室にノックもなしに入って来たベオウルフ達。
「失礼します」
「…失礼します」
礼節正しく入るガルとそれを真似てぎこちなく入るロイ。
「ベオウルフ……と、ガルーザス・ボルフィード… ロイド・イシュタークか如何した?」
バルト伯爵は無作法に入って来た息子を咎めようとして、続けて入って来た二人に気付いて問う。
「オヤジ、ロイの初陣を盗賊狩りの方に組み込んでくれ!俺達と一緒に。」
「「なっ!!」」
「ふむ」
バルト伯爵は少し考えて最近領内に流れて来たと思わしき盗賊団なら大丈夫だと答えを出す。
盗賊とは不思議なもので、狩り尽くしたと思ったら暫く経つとまた住み着いている。
最近結成された盗賊団なら、危険は低いだろう。ただ、盗賊とは傭兵崩れや兵士崩れもたまに居てなかなかの強者もいる。
「良いだろう。最近発生した盗賊団の討伐隊に入れる、正しベオウルフお前達はまだ14歳だ、成人まで後2年もある。ロイドの初陣補助、お前に指揮権もなければ文句も言わせん、兵士見習いとしてでも行くのか?」
「ああ、行く」
「ガルーザスそなたもか?」
「はい、お願いします。」
「ふむ、ではそうしよう」
バルト伯爵もベオウルフの父で武門の出、早く実戦を経験して強くなりたいと思う気持ちが分かるから、強く否定できなかった。
早急に討伐隊が組まれた。兵士長を筆頭にベテラン兵士10名、新兵5名、初陣4名(ロイ含む)、見習い兵士3名(ベオウルフ、ガル含む)。
「オレもやっと初陣か」
少し緊張した顔でロイが呟いた。
「なんだ、ビビってんのか?」
「ベオっ!」
「なっ!ビビってねえよ、何でオレ様が盗賊如きビビらなきゃならねえんだよ」
「緊張したって仕方ないさ初陣なんだから、ならず者相手だからって油断するより少し緊張を持って挑んだ方がずっと良いよ」
「ああ」
「結局ビビってるって事じゃねーか」
「ちげえっつってんだろうが!!」
兵士長が討伐作戦の会議を開くと言うことで全員で作戦をたて、数日後、討伐作戦のため出発する事になった。新兵、初陣組、見習い兵士達が緊張の面持ちで。