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次元の狭間 4

大宴会場中から総立ちで拍手喝采を浴びたシェイドの顔面は蒼白だ。

思わずフィアレインとルクスは冷たい視線を向けてしまう。

だから、言ったではないか。

そろそろ自分の運の悪さを自覚して欲しい。


「あの……別に俺、その景品いらないんだが。

辞退は……」

「まあ!ご冗談を!

もし負けたとしても鱗を一枚頂けることになってますし、ご心配なく」


何がご心配なくなのか分からない。

三人の間に気まずい沈黙が流れる。これはもはやパーティ解散の危機どころでない。

命の危機である。

たとえ鱗一枚もらえるとしても、その時三人の命があるかも分からないのだ。

なんせ相手はドラゴン。過去の勇者には大軍を率いてドラゴンと戦い散った者もいたはずである。

そもそも飼いドラゴンって何なのだろう。ドラゴンは飼うものなのだろうか。


「冗談じゃないんだが」


シェイドは項垂れる。

そして己の足元を見て、ギョッとしていた。

フィアレインもそれにつられ足元を見る。

そこには魔法陣が禍々しい赤色に光りながら浮かび上がっていた。

どこかに飛ばされるらしい。


「それではご武運をお祈りしております」


大宴会場の客が一斉にはやしたてた。

深々と頭を下げる蛇女の姿が薄れていく。

自分たちは今、問答無用でそのリントヴルムの元に送られるところなのだろう。



目を開くと、全く別の場所にいた。

自分の姿を見下ろす。何時の間にやらユカタから元の格好に戻っていた。

他の二人もそうである。


「参ったな……」


シェイドがガシガシと頭を掻きながら周囲を見渡す。広々とした平原だ。

今のところ、リントヴルムらしき姿は見当たらない。

シェイドは周りを散々見渡したあと、フィアレインとルクスの方を向き勢いよく頭を下げた。


「すまん!

ほんっとうに悪かった!」

「いや、よい。

今更そのような事を騒いでも仕方あるまい」

「うん……リントヴルムがここに来るのかな」


まだそれらしき気配は感じない。だが向こうも移送魔法で来る可能性があるのだ。準備はしておかねば。


「だろうなぁ。

そのリントヴルムってのは話通じるのか?」

「さあ、分からぬが……。

だがドラゴンは皆、高い知能を持つと言うからな。

可能性がなくはなかろう」

「権利放棄するって言って大人しくお帰り頂きたいんだが」


確かにそれが一番安全である。


「別に魔界から人間世界に来て人に被害を与えてるドラゴンって訳じゃないんだし。

敵前逃亡したとしても勇者として問題ない……。

そもそもクジ引きの景品で死ぬ方が世界には迷惑だろうしな」


何やら自分に言い聞かせるようにシェイドがブツブツ言っている。

フィアレインは先ほど景品としてもらったカドゥケウスをアイテムボックスから引っ張り出した。

そこでとある事を思い出し、青ざめる。

自分は魔女の家からお菓子の扉を盗んだ時、これ以上なにも宝は要らないと心に誓ったでないか。

それなのにこれを受け取るのはまずいだろう。困った。

悩み、思わず俯く。


「どうしたのだ、フィア?」


フィアレインの様子を訝しんだルクスに声を掛けられた。

そこで一つ案を思いつく。ルクスはメイスの使い手である。ならば杖も使えるのでないか。

自分から見ればメイスもこの杖も似たような物である。

そう思いパッと顔をあげる。


「ルクス!これあげる!」


カドゥケウスをルクスに差し出した。

怪訝な顔で二人はフィアレインを眺めている。


「どうしたんだ?」

「これはお前の杖であろう。私には教団から支給されているメイスがある。

案ずるな」


ポンと肩を叩かれる。だがここで引き下がる訳にはいかないのだ。


「でもこれ、特別な魔法素材なんだよ。

そのメイスより強いと思う」


おそらくこの素材はアダマンチウムだ。

エルフが作るオレイカルコスに並ぶ金属である。

何やらいつになく必死なフィアレインの様子に何か感じたらしい。

ルクスは少し離れたところへフィアレインを連れていき小声で聞いた。


「一体どうしたのだ?」

「実は……」


フィアレインは観念して先ほどの魔女の家での行為を話した。

シェイドに聞かれないよう注意して。

ここまできてルクスにしらばっくれるの無理である。素直に理由を話してカドゥケウスをもらってもらおう。

シェイドは物言いたげな顔でこちらを見ているが、あえて近づいては来なかった。

一通り話が終わったところで、ルクスがなるほどと頷いた。

そしていつもの胡散臭い笑顔を浮かべる。


「フィアよ。

要はシェイド殿に知られなければ良いだけの話でないか。

なに、証拠さえ無ければ何もやってないも同じ。

シェイド殿に見つからぬよう、その菓子を食べてしまい真実は胸の内に仕舞うが良い」


フィアレインは思わずルクスを見つめる。

何とも心動かされる提案ではあるが果たしてそれで良いのか。

その提案たるや悪魔の囁きの様である。

聖職者の意見としてそれが正しいのかも分からない。


「おーい!

二人ともそろそろ戻れよ。

何かあったら危ないぞ」


離れたところからシェイドが二人に叫んだ。

その時、強力な魔力を感じ三人は凍りつく。

恐る恐る魔力を感じた方向を見た。

そこには何時の間にやら緑色の巨大なドラゴンが現れている。

ヒュドラが可愛くさえ見える大きさだ。

これがリントヴルムだろうか。

フィアレインはドラゴンを見るのは初めてだ。何やらとかげに翼がついたような姿である。

ドラゴンは赤い瞳で三人を見つめている。


「あー、えっと。

アンタがリントヴルムか?」

「いかにも」


やはり目の前のドラゴンはリントヴルムであったらしい。

言い伝え通り、人語が通じる様だ。これならば何とかなる可能性もあるのでは、とフィアレインは期待した。

だが油断は禁物である。戦わずにお帰り頂けねば意味がないのだ。


「クジ引きの景品の件なんだが。

俺は権利を放棄する。

よって、戦う気はない。

つーことで、帰って欲しい」


きっぱりとシェイドは言い切った。


「景品?権利?

そのような物は私には関係無い物。

私は主の命により、お前たちと戦いに来ただけの話よ」


フィアレインは杖をギュッと握りしめた。これは最悪の展開ではないか。

交渉しようにも主の命で来ただけなんて言われては取り付く島もない。

シェイドの様子をそっと伺う。判断は彼に任せて有る。シェイドが戦うと言うならば勝ち目があろうがなかろうが戦うまで。

だが交渉をあっさり拒絶された今、彼はどうするつもりだろうか。

ドラゴンは人など比べ物にならない怪力、強大な魔力を持ち、それを高い知性で使いこなす。

その生命力の強さも強敵たる所以だと言う。


「なるほどな。どうあっても戦闘の放棄は認めないと。

じゃあこれならどうだ?

戦闘中の降参!」

「降参?

……お前は人族の勇者でなかったか?」


シェイドは胸を張り堂々と宣言した。


「勇者だからこそだ。

俺には果たさなければならない義務がある!

だからこんな下らん余興で死ぬ訳にはいかないんだ!」


リントヴルムが高く舞い上がる。三人の間に緊張が走った。


「まあ、良かろう。

降参は認めてやる。

だがお前たちに降参を宣言できる余裕などあるかな?」


リントヴルムが上空から激しい炎を吐いた。

三人はそれぞれ何とか避ける。あんな炎が直撃したら確実に炭になれるに違いない。

だが三人それぞれが別に避けた為、前衛も後衛もバラバラとなってしまった。

これではリントヴルムに狙われたら危ない。

シェイドにリントヴルムの鋭い爪が襲いかかる。ルクスに炎の魔法が、フィアレインには雷撃の魔法がそれぞれ襲ってきた。

三人ともかわすのが精一杯だ。特にシェイドは爪の猛攻に耐えるのに必死である。

どうやらリントヴルムはシェイドに目標を絞っているようだ。

フィアレインとルクスはかなり場所を引き離されつつある。

ルクスが降参を言い出す余裕の無いシェイドに代わり


「降参だ!」


と叫ぶが、リントヴルムからは


「聞こえぬな!」


と言われてしまっている。どう見ても聞こえているが。

フィアレインは覚悟を決めた。ここに連れて来られた時から用意していた魔法を使うのだ。

だがそれにはシェイドをリントヴルムから引き離さねばならない。

シェイド本人に叫んでもリントヴルムに意図を知られれば妨害される。ならばシェイドを離れた場所に転移させる他ない。

フィアレインはシェイドの背後に転移した。

リントヴルムがフィアレインをその視界に入れる。シェイドは襲いかかる爪を剣で防いでいる最中で、こちらに気づいたようだが特に何も言わない。

フィアレインは咄嗟にここで降参を叫べば良いのではと思ったが、すぐにその考えを消した。

聞こえてるくせに聞こえないふりをするような奴である。

リントヴルムが口を開こうとした。炎を吐くつもりだろう。

その瞬間、フィアレインはシェイドを連れて離れたところへ転移する。ルクスの場所も確認した。大丈夫だろう。

リントヴルムが翼を広げ、こちらに近づこうとしたその時。

ずっと準備していた魔法を発動する。リントヴルム目掛けて隕石が降り注ぐ。

隕石召喚メテオライトである。

確かにリントヴルムへ直撃はした。ダメージは与えられたが、その命を奪う程でない。

リントヴルムは態勢を立て直し咆哮を上げ、更にスピードをあげてこちらに迫る。


「フィア!シェイド殿!」


ルクスの叫びが耳に入る。

シェイドがフィアレインの身体をかばう様に背後に押しやった。

リントヴルムがどんどん迫って来るのを見ながら、過去こんなに集中した事はない程に集中して魔法を構築する。

今までやった事はない。だが自分がその魔法を受けた事はある。

その時の事の事を思い出すのだ。

そしてそれらしい魔法を作り上げた。転送先を強く思い描く。あの腹立たしい笑顔を。

そして真近にまで迫ったリントヴルムにその魔法を放とうとした。

その瞬間、リントヴルムは炎を吐き出したがシェイドがフィアレインを抱えて回避した。


「降参!」


フィアレインは叫び、今度こそ魔法を発動する。

炎を吐き出した後すぐに態勢を整え、またこちらへと突撃して来たリントヴルムがその場から忽然と姿を消した。

それを見届け、へなへなと座り込んでしまう。


「大丈夫か!」

「シェイド殿!フィア!」


ルクスが駆け寄って来る。


「ルクス、そっちは大丈夫か?」

「問題ない」


二人に見つめられているのは分かるが、それどころではない。

さっきは本当にギリギリだった。

一歩間違えば死んでいたかもしれない。魔法が間に合うか、ちゃんと発動するか、この二つはもはや賭けに近かった。

フィアレインはとりあえず落ち着こうと、アイテムボックスから魔女の家で頂戴した鎧戸をひっぱり出す。

あのほろ苦く甘いお菓子。

あれならば心落ち着かせるにピッタリだ。

冷却魔法でシッカリと冷やされた菓子は良い歯ごたえだ。パリっという音とともに砕ける。

咀嚼している内に口の中の温度でとろけてくる。ゆっくりと飲み込み、一息ついた。


「さっきのは何だ?」


シェイドがフィアレインの様子が落ち着いたのを見て声をかけてくる。


「転送魔法」

「転送……自分以外の人間を転移させる魔法であったか」

「うん。帝都でメフィストフェレスが使った魔法」


なるほどと二人は頷いた。


「見様見真似でやったんだけど、上手くいったみたい」

「そうか……。

良く出来たな!

すごいぞ!」


シェイドは興奮してフィアレインの肩を叩く。


「ちなみにどこへ転送したのだ?」

「うーん。飼い主のところが一番かなと思ったんだけど……。

でもフィア会ったこともないし。

だからメフィストフェレスのとこにした」


プッとルクスが吹き出す。シェイドは何やら楽しげに言った。


「そうだよな。

あいつはあのお方とやらの従者だからな。

飼い主のすぐそばにいるだろうよ」


恐らくメフィストフェレスは今頃、こちらに突撃する形で転送されたリントヴルムの突進を受けているだろう。


「まあ、危機はひとまず去ったが。

これからどうすれば良いのだろうな」


三人は再度周りを見渡す。

見渡す限りやはり何もない。

あのお方とやらに元の場所へ戻してもらえなければ帰れないのだろうか。

俯いて何やら考えていたシェイドが顔をあげる。


「とりあえずここで考えていても仕方ない。

進もう。先に何かあるかもしれない」


フィアレインとルクスはその提案に頷く。

そして三人は歩きはじめた。

だがその時、目の前に突然一人の魔族が現れた。

メフィストフェレスである。

なにやらメフィストフェレスは髪も乱れ、着ている真っ黒な服も所々ボロボロだ。


「なぁ、アンタそんなボロボロでどうしたんだ?」

「なっ……!

誰のせいだと思っているのですか!」


メフィストフェレスは苛立たしげに答えた。


「事もあろうにあのお方のいらっしゃる玉座の間にリントヴルムを送り返してくるなんて!」


フィアレインは首を傾げる。

別に玉座の間に送った訳でない。メフィストフェレスの所へと送り返したのだ。


「へー。

それで?」


メフィストフェレスは乱れた髪を手櫛で整え、服を叩いて埃を落とす。


「突然リントヴルムが現れ突撃して来たのですよ!

私へ向かって!

その勢いのままリントヴルムは玉座にまで壊したのですから」


どうやら自分の思惑通り、メフィストフェレスはリントヴルムの突撃を受けたらしい。

成果としてはなかなかであろう。


「あのお方は咄嗟に避けられましたけれど……。

私のこの惨状を見て大笑いなされ……」


メフィストフェレスはガックリと肩を落とした。

三人はそんなメフィストフェレスを黙って見つめる。

何故この魔族がここへ来たのか気になったのだ。


「それで一体なんでここへ?」


シェイドの問いにメフィストフェレスは自分の目的を思い出したらしい。

何やら懐から取り出した。

そしてそれをシェイドに渡す。


「あのお方からですよ。

負けても鱗一枚与える約束とか?

ちなみにもう一枚は笑わせてくれた礼、更にもう一枚は私にリントヴルムをぶつけた礼だそうです」


二つ目の理由までは分かるが、三つ目の理由は何だろう?

メフィストフェレスにリントヴルムを激突させた礼?

あのお方とやらにメフィストフェレスは疎まれているのだろうか?


「ねえ。メフィストフェレスは嫌われてるの?」


思わず聞いてしまう。

メフィストフェレスは深々とため息をついた。


「さあ……?

そうでないことを祈りますがね。

ちょうどその時、私はあのお方に魔界のとある案件についてご報告中だったのです。

それをあのお方は退屈で長い話だと嫌がっておられましてね。

私がリントヴルムにぶつかられ吹き飛ばされた事で話が中断となりお喜びなのですよ」


やはり従者と言う名の使いっ走りは苦労が多い様だ。

思わず同情の眼差しで見つめたフィアレインにメフィストフェレスは何かを気付いたように宣言した。


「私は従者ですから!

使いっ走りではありませんからね!」

「別にフィア何も言ってない……」

「目は口ほどに物を言うのですよ」


キラキラと輝く大きな緑色の鱗にシェイドは困惑した顔で見つめている。

ルクスは鱗とシェイドを見比べ、メフィストフェレスに問いかけた。


「メフィストフェレスよ。

この鱗、一体どうするのだ?」

「おや?

ご存じない?

まあ仕方ありませんね。あなた方は人間ですし。

それは錬金術の貴重な材料ですよ。

特に武具にするのに適しています」

「錬金術……」

「確か教団でもやっておいでですね。

でも人間では扱いきれないでしょうね、それは」

「じゃ、意味ないだろ」


ふて腐れた様に呟くシェイドをメフィストフェレスはいつもの人を小馬鹿にした笑顔で見つめた。


「そうですね。

意味がないかも知れないしあるかも知れません。

私には知り得ぬことですが」


フィアレインはふと思いつき、シェイドに伝える。


「エルフならそれで錬金術出来ると思うよ」

「エルフねぇ……」


会う機会もまずないけどな、とシェイドは鱗をしまう。

確かに普通に生活しているとそうかもしれない。エルフの都にでも行かない限り。


「それで?

もう頂く物は頂いたので、俺たち帰りたいんだが」

「そうですか。

お楽しみ頂けました?」


三人は全員で嫌な顔をしてしまう。


「ああ、そりゃあもう。

魔界健康ランドの素晴らしさには感動したよ」


メフィストフェレスはそれを聞いて微笑む。


「そうですか。それは良かった。

あの魔界健康ランドはあのお方がお作りになったのですよ。

混沌の中の我々も主神すらも知り得ぬ程の遥かかなたの記憶をのぞき、それを参考にしてね」

「混沌の……?」


フィアレインは思わず問い返す。主神すらも知り得ぬとはどういうことだろう。

だがメフィストフェレスは黙って首を振った。


「知らなくて宜しい。

ではそろそろ皆様をお帰し致しましょう」


三人が何かを言う前にメフィストフェレスが転送を開始する。

視界が暗転した。



身体が揺さぶられる。

ゆっくりと目を開くと、シェイドとルクスが覗き込んでいた。

二人に助け起こされ、起き上がる。

周囲を見渡せば見覚えのある森だ。

ここは自分たちが港へ向かっている最中に通った森。あのヘビに連れてこられた場所だろうか。

見渡しても例の怪しい銀色に輝く木は見つからないが。

魔力で刻をはかる。どうやらあの世界に送られてから一刻もたってないようだ。


「無事帰ってこれたな」

「うん」

「一時はどうなることかと思ったが……。

これで一安心よ」

「全くだ。魔界の奴と関わるとろくな事がない!」


憤慨して叫ぶシェイドにルクスが何やら意味ありげな視線を送る。


「そうか?

シェイド殿はラミア達にたいそうモテていたでないか?」


シェイドがギョッとする。

フィアレインは思わず聞いた。


「ラミア?モテる?」


ルクスはいつもの笑顔で頷く。


「ラミアとは半身が大蛇のあの女性たちよ。

シェイド殿は大層な人気でな。

実は……」

「待て!待て!」


ささっとシェイドはフィアレインの耳を両手で塞いだ。

自分の聴力は人より良いからこの程度では何も意味をなさないのだが。

何やらシェイドは聞いて欲しくないらしい。


「そ、そんなことより。

こんな所で油を売っている暇はないぞ!

次の大陸に行くんだからな!

港町へ急ぐ!」


シェイドはフィアレインの手をひき、そそくさとその場から離れようとした。

その後ろにやれやれと呟くルクスが続く。

また出発である。港町へ行き、船に乗るのだ。

フィアレインは違う大陸へ行くのは初めてである。船に乗るのもそうだ。

なにやら楽しみだ。

そう言えば、とシェイドがフィアレインを見下ろす。


「さっきフィアが食ってたあの茶色い板、あれは何だ?」


背後でルクスが吹き出すのを聞きながら、フィアレインは視線を彷徨わせたのだった。

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