秘密にしたい三角関係
僕とじいちゃんが夫夫になって長い夜が明けた。
この関係も一日限りと思っていたが、そうではないらしい。
だが、自分が認めてしまったらこの関係が“普通”になってしまう……
「なぁ、みんな。もう一度、王様ゲームしないか?」
「悪いな。今朝は時間が──」
「私も勝利とママ友さん達との約束があるのよ」
「わしと二人でやるか?」
「あたしも学校」
「まけいぬー」
一瞬、幼稚園児の言葉とは思えない一言が聞こえた気がしたが蓋をした。
「頼む、一回でいいんだ!」
そう、“一回”でいい。
僕はこのゲームでどうしても勝たなくてはいけない。
じいちゃんとの夫夫関係に終止符を打つためならば、イカサマだってしてやる!
「よし、分かった」
父さんの一言でみんながゲームの竹串を握った。
この時、僕は竹串を入れ替えなければならない。
しかし──
その竹串はポケットにはなかった。
「わぁい! また、ぼくがオウさまだー」
「……勝利、お前──」
「ルーレットでとまったヒトは、だいすきっていうのー!」
「勝利は本当にいい子だな」
「幸せなことしか命令しないなんて……まさに王様だわ」
僕は、思いっきり被害者だけどな……
「いくよ、えーいっ」
ルーレットは1で止まった──
「わーい、にいちゃんだいすきっ」
「不倫じゃ、不倫じゃあぁ……」
「あぁ、不倫になる。この際だキッパリ別れよう、じいちゃ……」
「容易く別れるなんていうもんじゃないわ、劣。少しはおじいちゃんの気持ちを考えなさい」
「どうでよいいけど、お兄さん。ちゃんと好きな人に告白するんでしょーね」
「あ、あぁ……」
心の準備は全く出来ていないのに、告白したくてしょうがない。
これもあいつの力なのか?
不安と焦る思いに掻き立てられながらバイト先へ向かう──
悪魔の笑い声は僕の耳には入らない。
僕は地元から少し離れたファミレスでバイトをしている。
「周寺くん、顔赤いけど大丈夫?」
「あ、うん。桃香ちゃんが好きなだけだから」
そう言った後に口を押さえたが、もう遅い。
樋村 桃香。
僕の一つ下でまだ女子高生。
そして片思い相手である。
「私も好きだよ」
いとも簡単に僕達は恋人同士になった。
……これは不倫になるのか?
「って事で、じいちゃん別れてくれ!」
「ここはルーレットで決めようじゃあないか! 勝った方の言うこと何でも聞く、よいな?」
ルールは簡単だ。
数字を半分にわけ、その分けた数字のところに止まった方の勝ち。
勝敗は2ぶんの1の可能性だ。
「年下をつかまえるなんてやるじゃないか」
「けどねぇ。今は年の差ブームらしいじゃない?」
「元々、劣達は孫ほど離れてるしな……」
「……実際に孫なんだけどね」
何だかんだとやり取りしている間にルーレットは止まる──
「なっ……!」
「わしの勝ちじゃな。そうじゃなあ……不倫相手は、わしに気があるとかどうじゃ?」
「そんなの無理に決まってんじゃん!」
しかし、ルーレットは不可能を否定するかのように眩い光を放った。