リアルーレット突入
僕の名前は、周寺 劣、ボードゲームが大好き一家の長男。
ボードゲームにハマりすぎた周寺家はある日、賭けに全員が飽きた。
何を賭けようが、「つまらない」のだ。
そんな時にルーレットから神を名乗るミニマムな魔神が現れ、最低最悪な“ルーレット”を僕達に与えた。
家族全員が1から6の数字に割り当てられ、コマとして様々な影響を受ける。
某ボードゲームで例えるなら、止まったマスに“子供が産まれた”と書かれていたとしよう。
その瞬間、問答無用で見ず知らずの子供の親となる。
そう、何でも実体化してしまう。
それぞれに割り当てられた数字は──
1 劣
2 勝
3 立花
4 優花
5 勝利
6 豪
「実体化するとなると、慎重になるな」
「父さん、目はすげー輝いてるけど?」
「もしかして“大金持ち”になるのも夢じゃないのね」
「世の中、金じゃないっていつも言ってるのは母さんなのに」
「ぼく、御免ライダーのノリモノがほしい」
「そんなの誕生日かクリスマスまで待てばいいだろ」
「わしゃあ女に囲まれてぇなあ、おい」
「健康ランドでやってくれ」
「若い子じゃい!」
「じいちゃんより若い子なんて多いだろ」
「イケメンに歳はかなわん」
「あっそ……ってかさ、みんな欲しいもんばっかじゃん」
「へぇ。劣もあんの、欲しいもの」
「あるよ。例えば──」
「あたしもあるよ。……せっかくだし、王様ゲームやろうよ」
優花のこの言葉に全員が盛り上がった。
だが、これがキッカケとなり大変なことを招くとも知らずに。
王様を決めるのはジャンケン。
もちろん、動かされる人はルーレットで決める。
「やったー!」
ジャンケンで王様になったのは勝利。
勝利はきっと物をねだる、信じて疑わなかった。
しかし──
「ルーレットでとまったフタリはケッコンする」
“結婚”という言葉を知らないで使っているのかも知れないが、今のルーレットで言うとは……
「可愛い王様ね、勝利は」
「将来はイケメンになるぞー、コイツは」
父さんも母さんも感心してる場合かよ!
僕の心の叫びも虚しくルーレットは回る。
止まった数字は──
1と6
僕とじいちゃんは一瞬にして夫夫となった。
『おぇぇえええー!!!』
家族全員が悲惨な悲鳴を上げる中、勝利だけはケタケタと笑っていた。
「ははははははーれむ計画がっ」
「親父、不倫は駄目だぞー」
「ちょ、父さん! どうにかしてくれ!」
「めでたいじゃあないか」
「今夜は赤飯にしましょうね」
「ふざけないでくれよ! 僕には好きな人が──……」
言ってしまった後に後悔の嵐が押し寄せる。
それぞれが目を光らせ、口元に笑みを浮かべ僕とを見ていた。
片思い中ということは、家族の誰にも知られたくなかったのに……
「不倫じゃあ──」
「ないつーの! じいちゃんもイヤだろ、こんな関係はさ!」
「死んだばあさんが生き返ってきたような賑やかさじゃあ……」
「じいちゃん、しっかりしてくれー!」
……もし、ルーレットの神と名乗った魔神が“思いこませる”魔法のようなものをかけているとしたら?
恐ろしい想像に僕は一人、身震いした。