遊
そこにいたのはオレがもっとも警戒していた相手。
村雨と廻は何かの魔法であろう、完全に動けないまま固まっている。
「いきなり最難関の登場かよ」
オレは笑ってしまった、これがわらわずにいられようか。
来春先生。彼女は恐らくプリビレッジ一の実力者。彼女が出てくるのは最後の最後だと予想していたが、まさかこんな序盤で来るとは。
まぁ、一番強い敵は一番最後、なんてのはチャレンジャーの妄想でしかないか・・・
敵からしたら最初から本気を出してつぶしておく、こちらの戦力が小さいからこそ使える鬼の戦法。
どうやら敵の指揮官は相当優秀なようだ。それとも、その優秀な指揮官も彼女自身なのか・・・
「どう? 予想外だった? 先鋒の二人にかき回させて混乱させてから、君たちも合流。突然の戦力倍増に驚いた敵をいっきにたたく。こんな感じかな? 相変わらずまあまあを超えられない戦法だね!」
「き、貴様! いくら先生といえども翼さんを侮辱するのは許さないぞ!」
「落ち着け、椋。お前と天音で二人を救出するんだ」
オレはできるだけ冷静になって、指示を出した。
「あら、私がそんなことさせると思って?」
「思うさ。だってあなたは、オレたちの脱出計画を妨害しに来たわけじゃないんだから」
彼女はニヤッと笑みを浮かべる。オレもニヤッと笑みを浮かべる。
「あなたは全くの単独でここにいる。そうだろう?」
「・・・。証拠はあるのかしら?」
「根拠ならあるさ」
オレは廻とその近くに転がっている兵器を指差す。
「この二人には魔法、センサーのそれぞれの感知をさせていた。あなたが序盤でここに現れた場合、それが独断なのか作戦なのかを判断するためにな」
機械を使うにしても以心伝心タイプの何かを使うにしても、この二人が絶対に感知する。電波が流れていれば彼女は部隊に、舞台に組み込まれている可能性が高いが、そうでないなら彼女の行動は独断。
まあ、ダミー電波という返してもあるけど、こっちはほかにも手は打ってあったから、それも無駄だっただろう。天音の感知ロボットは既に門の中に侵入しているから、そっちからの情報と照合すれば、ダミーの真偽は分かる。
もっとも、オレたちの脱出を阻むなんて面倒なことをやる彼女ではないし、ダミーを思いつかない彼女ではないことは、この一年間で思い知っているけど。
だから、これはあくまでも遊び程度のものなんだろう。まったく、なんて人だよ・・・
「ふふっ、麒麟は本物のようね。そうよ、私はあなたが麒麟を持っているかどうかを確認しに来ただけ。麒麟だったら何もする気はなかったし、そうでなかったら、拘束でもして本部に差し出していたわね」
どうやらこの勝負は勝ったようだ。どうして麒麟を知っているのかは疑問だけど、相手が彼女ならばオレのことを調べるなんて造作もないことなのだろう。
今注意すべきは彼女のこれからの行動。ここから突然攻撃してくるなんて、そんなことをする人間じゃないことも、今までの一年間でよくわかっている。かといって遊びとはいえオレに看破されて、このまま通してくれるほど甘い人間でもないことは確かだ。
ならば、残された最後の選択肢、オレにもっとも迷惑をかける方法を使ってくるだろう。
そして、現状ではそれを止める事はできない。
わかっていても止められないなんて、ため息が出るぜ。
「それじゃあ確認も済んだことだし、退散でもしますか。それと、君たちの事は本部にチクっておくからね」
「先生」
「何? チクるのやめてほしいとか? お願いしまちゅって言うのなら考えてもいいけど」
「違いますよ。ぜんぜん違う」
というか、それを言ったところで、本部への報告は免れないだろう。彼女がそういう人間だということすらも、この一年で理解している。
この質問がどういう結果につながるかはわからないが、少なくとも中吉か小吉といったところか。大吉を期待するほどご都合主義でもない。それでは行ってみよう、おみくじタイム。
「仲間になってくれませんか?」




