みじかい小説 / 030 / 俺のパーカー
だいたい、世の中、女向けのCMが多すぎる。
どこを見ても若い俳優や女優を使って女向けのCMばかりしている。
なぜだろうと疑問に思って少し考えてみたが、すぐに答えが分かった。
CMを見る大半の人間が女だからだ。
女はだらだら流されるCMを見て、たらたらしている。
男はそんなに暇ではない。
男は、どこかの誰かが作ったCMなどに影響されずに、自分のセンスを頼りに自分で調べて選んで買うのだ。
休日、俺はそんなことで頭をいっぱいにしながら、ショッピングサイトでこの秋着るためのパーカーを物色していた。
しかしだめだ。
服は実際に袖を通してみないと不安で仕方がない。
というわけで、パーカーの色や形といった傾向だけ目星をつけて、妻とイオンにやってきた。
妻には俺の服を買うことは伝えてある。
早速、メンズコーナーに行ってパーカーを探す。
妻もまるで自分の服を選ぶかのように集中してくれている。
しかし思うが、自分のセンスよりも、日頃からファッションに興味がある妻に選んでもらう方がいいのではないか。
だんだんと選ぶのが面倒にもなってきた。
とそのとき、「あら、これなんかいいじゃない」と妻が一つのパーカーを持ってきた。
なるほど、色といい形といい、俺にぴったり合いそうだ。
試着して鏡の前に立ってみると、なるほどなるほど、俺にぴったりと合っている。
「よし、これにしよう」
俺は満足してそのパーカーを買い物かごに放り込んだ。
その勢いで、今日はズボンも購入した。
大満足して家路に着く。
「CMでやってたのよね、あのパーカー」
と、妻が言ったのは、帰りの車の中でのことだった。
「へぇ」
俺は何食わぬ顔でハンドルを握り続けるのだった。
※この小説は、youtubeショート動画でもお楽しみいただけます。
以下のurlをご利用ください。
https://youtube.com/shorts/E78rKzddxXw