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交わる蒼玉と紅玉

帝国歴1183年、秋。


黄金の陽が傾くころ、広大なヴィオレーヌ邸の門をくぐる馬車があった。降り立った少年は、漆黒の軍服を思わせる詰襟を着込み、凛とした蒼い瞳で屋敷を見上げた。


シリル・ヴィゼリウス、9歳。

左手首に浮かぶ〈月影の牙印〉――正妻の紋が、彼の“正統”を主張している。だがその輝きこそが、叔父である現公爵にとって目障りだった。追放同然に帝都から遠ざけられ、唯一庇護を申し出たのが、このヴィオレーヌ家だった。


案内もなく歩いた中庭で、少年は本を読む少女を見つける。黒檀の長い髪、紅玉の瞳。年端もいかぬその背筋は、手本のようにまっすぐだった。


「おまえ、名前は?」


声をかけた瞬間、少女は本を閉じて静かに立ち上がる。


「……レーヴ・ヴィオレーヌ。あなたは?」


「シリル・ヴィゼリウス。」


紅の瞳がわずかに揺れた。

互いの左手首に光る紋。同じ“正妻の印”を持つ者同士だと気づいたのは、そのときだった。


「変わった髪色ね」


「そっちこそ、変わった目の色だ」


幼いふたりの会話は不器用で、どこか噛み合わない。けれど、それは確かな始まりだった。

短過ぎた…

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