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自分に優しい気分転換を

作者: 宿木ミル

「色々疲れること多すぎて、ヤバい」


 食堂で会話する友人の一言。

 なんだかげっそりした表情なのも相まって不健康な印象を感じさせる。


「なにかあったの?」

「SNS関連で色々」

「……炎上するようなことでもした?」

「いやいや、してないしてない! ただ、なんていうかね、うん、疲労困憊」


 炎上騒ぎに巻き込まれていたら、それこそ大変だっただろう。それとは違う事実にほっとする。

 一方ではぁ、とため息をつく友人。人によっては軽い悩みに捉えられるかもしれないけれども、これは深刻な問題な気がする。


「どういうのに疲れるの?」

「んー、空気感的な? ほら、ピリピリしてる時に自分だけ楽しんだら申し訳ないなぁみたいなの」

「気にしなければいいじゃん」

「それができてれば悩んでないよぉ!」


 うわーん、と泣きつきそうな勢いで言葉にする友人。

 私はSNSにそこまで詳しくないから、何とも言えないけれども、そういう対人関係もなかなか大変そうだ。


「あと、重いニュースばっかり見てると疲れちゃうっていうのもある!」

「なんだか情報って暗い気持ちになるものが伝わりやすいよね」

「そうそれ! 明るいニュースじゃなくて、暗いニュースが多すぎて気が沈む!」

「情報化社会の悩み……」


 便利だからこそ、気が休まらなくなるという部分も大きいかもしれない。

 横になりながら使える機材が増えれば、それだけ気軽に情報に触れられるということ。

 多量な情報によって頭にかかる負担だって大きい。

 現に、目の前の友人は頭を抱えている。


「夜さ、見かけたニュースとかのこと考えてばっかりで眠れなくなってる」

「その目のクマを見ればよくわかる」


 今の友人はなんていうか、アニメとかに出てくる内気系インドア系少女みたいな風貌になってしまっている。

 元々比較的綺麗な顔だし、まだ、容姿としては悪くはないかもしれないけれども、美容が損なわれているのは気の毒だ。


「気にしないっていう選択も、夜だと難しいよね」

「うん……横になって眠る前に頭によぎっちゃう」

「よくあるやつだ」


 何も考えずに眠れる人もいるけれども、横になっているとついつい余計なことを考えてしまうというのも少なくない話だ。

 私だって悩みを抱えている時は、考え事をしてしまうことが多い。そうして重い気持ちを引きずることで、眠れなくなる……というのもそこそこある。


「うああああ、わたし、どうすればいいんだろう!」


 机にうつぶせになって嘆く友人。

 このまま放置していたら、かなり身体、精神ともにダメージを受け続けてしまうだろう。

 こういう時の対処方はしっかり伝授するべきだろう。


「私なりのやり方なら、教えられるよ」

「ほんと!? 教えて教えて!」

「その前に……今日、外で活動する元気はある?」

「え? まぁ……そこそこ」

「よし、じゃあ放課後に一緒しよう」

「い、いいけど……急にデートみたいなことするね?」

「気分転換はいつだってやっていいからね」


 そんなこんなで約束をして、放課後に再び集まることにした。







「どこ行くの?」


 放課後、バックを持った友人と一緒に学校を出て移動する。

 最初の目的地、アイス屋を見つけて声を掛ける。


「まず、アイスクリームを食べよう」

「暑いから?」

「そうそう、涼しくなろう」

「たまにはいいかも!」


 友人とアイス屋に並び、それぞれ別のフレーバーのものを買う。

 友人はバニラ、私はチョコレートだ。

 購入したのちのんびりと二人でアイスを堪能する。


「ひんやりしてて美味しいー!」


 笑顔でそう言葉にする友人。

 悩んでいる時よりも、明るい表情になっていてほっとする。


「バニラ味って素直なものを選んでるよね」

「うん! なんだかすっきりしたものを食べたいから!」

「なるほど……でも、チョコの濃厚さもなかなか美味しいよ」

「なら、今度頼んでみようかな」

「そうするといいかも」


 アイスクリームの包み紙をしっかり処分したのち、再び移動していく。

 次に赴いた場所はゲームセンターだ。

 カジュアルな雰囲気が印象的な綺麗な場所だ。


「おぉ、こんな場所があったなんて!」

「たまに暇つぶしで遊びに来たりするんだ。音ゲーとか好きだし」

「色々賑わってていいよね、ゲームセンターって!」

「わかる」


 それぞれ別々に好みはあるけれども、ゲームを遊んでいく。


「うわぁ、取れそうだったのに!」

「ちょっと次いい?」


 友人がクレーンゲームで苦戦している時に、そっと手を差し伸べる。

 この景品の形ならば、うまく動かせば……


「ほら、取れた」

「凄い!」

「じゃあこれ、プレゼント」

「いいの?」

「頑張ってたのは見てたからね」

「ありがとう!」


 笑顔で受け取る友人。

 ちょっとした思い出みたいになってくれたら幸いだ。

 その後、私は友人と一緒に音ゲーに挑戦していた。


「うわぁ、譜面凄い」

「それなりに通ってるから、慣れてきて」

「わ、わたしは控え目にいこう」

「楽しめるレベルで遊ぶのがいいよ、マイペースにやろう」


 音ゲー独特のリズム感ある曲を楽しむ友人の姿。

 それは、リラックスできている雰囲気になっていた。

 しばらくゲームセンターで楽しんだのち、私と友人はまた別の場所に赴いた。


「次はどこに行くの?」

「ちょっとした癒しスポット」


 少し歩いたのち、到着した場所。それは自然に囲まれた公園だ。

 鳥の声や、風によって発生した木の葉っぱが擦れる音が聞こえる。

 人の数も少なく、のびのびできる環境になっている、私のお気に入りの場所だ。


「わぁ、凄い」

「なんだか、細かいこととか気にしなくっていい気分になるでしょ?」

「うん、なんだか自然の一部になった感じになっていい!」


 大きく呼吸をする友人。

 澄んだ空気が心地よいのもあってか、気持ちよさそうにしている。

 そんな彼女に、私はそっと声を掛ける。


「色々考えちゃうことも多い時代になっちゃったけど、こういうのびのびした時間も大切だと思うの」

「自分の時間を大切にする、みたいな?」

「情報からあえて離れるっていうのも自分のケアの為にやっておきたいなって」


 私なりの意見を、しっかり伝えていく。


「暗いニュースが多いならば、自分で明るい出来事を増やす、自分に優しいことをする。そうすることで回復するメンタルもあるはずだから」

「自分の身は自分で守る、みたいな」

「困った時は私とか頼ってもいいけどね」


 考えすぎになるならば、リラックスする。

 友人が困っているのならば、もっと積極的に助けていきたい。

 頭を悩ますことは多いかもしれない。だからこそ、こういう機会を増やしていきたいのだ。


「んー、じゃあ、今度から散歩とか考えたりしようかな!」

「それがいいと思う」

「なんだか、こうやって気分転換してたら、世界が広がった気がする! ありがとう!」

「どういたしまして」


 友人の笑顔に、私も応じる。

 なかなか気持ちが沈みがちな時でも、気分転換できればきっと改善できる。

 自分に優しく、のんびり生きる。それがきっと大切なことだ。

 暑くなってきた日の空。青い色が広がっていた。

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