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平民出身の帝国将官、無能な貴族上官を蹂躙して成り上がる〜ムカつく上司は全員ざまぁ! 転生した最強魔法使いの蹂躙下剋上譚〜  作者: 花音小坂
領地運営編

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ケッノ=アヌ

           *




 天空宮殿総務省。次官のケッノ=アヌは、今日も、長官よりも早く来る。部屋のドアを開けると、毎日、彼よりも早く出勤している次官補佐官のジナイ=ガデルが出迎える。




「おはようございます」


「……」




 ケッノは挨拶も返すことなく、長官の机をチェックし、自分の机もチェック。埃がないことを確認した後、コクリと頷く。




「……では、失礼いたします」




 ジナイ次官補佐官は、お辞儀をして部屋を出ていく。その姿を見送った後、ケッノは満足気な表情を浮かべる。




「クク……今日もキチっと整理整頓ができているいやむしろ整理整頓ができ過ぎている」




 当たり前だ。自分が使えるヤツに育てたからだ。部下の教育も完璧であるいやむしろこれこそが部下の管理であると自画自賛の表情を浮かべる。




 ガチャ。




「あじゃじゃーっす!」


「……」




 出勤した長官のラゴラスに、ケッノは真っ先に駆け寄り、満面スマイルで挨拶をする。だが、上官は挨拶を返すことなく、忙しなく席へと座る。




「今日はどうされるんですか? 私で何か力になれることがあれば仰ってくださいいやむしろ何でも仰ってください!」


「……」




 パタン。




「……」




          ・・・




 ラゴラス長官は、何も言わずに、忙しそうにその場を去った。ポツンと取り残されたケッノは、なんとも言えない顰めっ面を浮かべ、ため息をつく。




「……ふぅ」




 ここ半年、ロクに口を聞いてもらえない。いったい、何が気に食わないのか。




「上官というのは、天気のようなものだな」




 ポソリとつぶやく。もちろん、毎日、ラゴラス長官よりも早く出勤している。帰宅も当然、彼よりも後だ。机は毎日部下に掃除させている(自分がやってるアピールも欠かしていない)。




 あんなに慕ってますアピールの挨拶をしているのに……目下、いろいろなパターンを試しているが、どうやらこれもお気に召さないらしい。




 ……うん、やはり、自分は悪くない。




「クソったれいやむしろクソ過ぎる」




 気難しい上官だな、とケッノは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。




 それから、気を取り直して、部下たちが働いている部屋へと回る。アイツらは、自分がいないとすぐサボるから、管理が大変だ。




 ガチャ。




「さあ、お前らの納期けつを確認しようか」


「「「「……っ」」」




 ケッノは部屋に入るや否や、設置してある進捗確認ボードの前に立つ。これは、ケッノが部下の仕事の納期けつを把握するために準備させたものだ。




 納期けつの管理……それがケッノ=アヌの仕事の流儀だ。




「……マル……マル……いやむしろマル……」




 進捗状況の確認。それぞれの仕事に対して、当然の如く◯が入っている。すべてにおいて完璧な管理。これこそが、管理職の見本であると、ケッノは再び自画自賛する。




 うん。遅れはないようだと、指でボードをなぞりながら目視で確認していく。




「……っと、ここの納期けつは?」




 そんな中、一箇所だけ、進捗に◯の入っていないマスを発見する。すぐに、周囲を見渡して『誰だ!?』と叫ぶと、バツの悪そうな表情をした部下(名前は知らない)が手を挙げた。




「あっ……とそれは、書き忘れまして」


「本当か?」




 ケッノは、証拠を残すために、◯のついてない箇所に*を深く深くマーキングする。




「えっ、あっ……その……」


「あー・やー・しー・いー・ぞーいやむしろあぁ・やぁ・しぃ・いぃ・ぞぉ!」


「……っ」




 ケッノは、部下の顔を下から覗き込みながら息を吹きかける。




「本当に終わっているんだろうないやむしろ終わっているんだろうな?」


「は、はい……」


「ふーん。では、聞かせてみろ? お前の物語ストーリーを」


「えっと、いや、そういうことではなくて、あの、本当に書き忘れてまして。申し訳ありません」


「それがお前の物語ストーリーか?」


「……」


「あ? お前、新人か?」




 ケッノは下から顔を近づけて、何度も何度も部下の顔を覗き込む。




「えっと、はい。昨日、この総務省に配属されましーー」


「上官いやむしろ上官ーーーーーーーーーっ!」




 ケッノは甲高い声で叫び散らかす。




「は、はい!」


「教育がなっておらんぞいやむしろ教育がぁ! 物事の組み立ての仕方を……物語ストーリーが全く理解できておらんじゃないか!」


「も、申し訳ありません」




 上官の何某は、深々と頭を下げて謝罪する。




「いいかぁ? い・い・か・ぁ? 何事も大事なのは、物語ストーリーだ。物事の筋道。それがしっかりしていれば、大抵の仕事の説明は上手くいくものだ」


「……はい」




 ケッノは、もはや、何百回もいやむしろ何千回も言ったであろう説明を繰り返す。




「いい加減に覚えろよいやむしろ叩き込め! もう一万回いやむしろ十万回は同じ説明させたぞ! いい加減に覚えろよ!」


「は、はいっ!」


「はぁ……」




 まったく、どいつもこいつもバカばっかりで泣けてくる。本当にダメな無能どもで、自分がいないと何にもできない輩どもだ。




「それで? 納期けつは? 本当に間に合っているのか?」


「は、はい」


「本当に?」


「……はい」


「本当にか? 絶対に? 天地神明に誓って、お前の命に賭けて?」


「……」


「……」




          ・・・




「そ、それがですね……少し、進捗の方が遅れてまして」


「あっ、お前っバカっ」


「ククッ……ちょっとまていやむしろちょ待てよ!」




 上官が新人の言葉を止めようとしたが、もう遅い。




 罠にかかったと、ケッノは心の中でほくそ笑う。




「何? 今、お前、なんて言ったいやむしろ何を吐き出した?」


「えっ……いや、その……ですから……」


「お前っ!」


「ひっ!」


「今、こ・と・も・あ・ろ・う・に! 納期けつが遅れていると言ったかいやむしろ納期けつが遅れていると言ったか?」


「は、はい……申し訳ありません」




 新人の何某がお辞儀をし、上官も慌てて頭を下げる。




「おい、そこの」


「わ、私ですか?」


「お前以外に誰がいるいやむしろ誰がいる!?」


「ひっ……申し訳ありません」




 指を刺された上官の何某は、慌てて頭を下げる。




「ねえ、なんで? こいつはいやむしろこいつはなんで嘘をついた?」


「えっと……嘘というか」


「嘘だろいやむしろ嘘だろ!?」


「も、申し訳ありません!」


「いや、謝罪の言葉なんていらないんだよいやむしろ必要ないんだよ。私は、『なんで嘘をついたか?』って聞いているんだよ? ねえ、なんで?」


「お、おいなんでーー」


「私は上官のお前に聞いているんだいやむしろお前上官だろう!?」


「ひっ……」




 ケッノは上官の何某に叫び散らかす。




「私に、嘘ついたのか?」


「いえ、嘘というかーー」


「嘘だろいやむしろ嘘だろ!」


「ひっ……も、申し訳ありません!」


「はぁ……」




 まったく。部下に嘘をつかれるなど、言語道断。管理がなってない証拠だ。




 再教育が必要だな。




 あらためて、ケッノは、トントントンとボードを指で叩きながら、甲高い声で叫び散らす。




納期けつだろ! いやむしろ、納期けつだろ納期けつ! 納期けつ納期けつ納期けつ!」


「……」


「……」




           ・・・




 誰も何も話さない、気まずい空間が支配する。だが、これでいい。部下の管理は、緊張も緩和だいやむしろ飴と鞭。




 飴と鞭いやむしろ鞭……これがケッノの仕事の流儀だ。




「……むふっ」




 そろそろ、飴を、くれてやるか。




 ケッノはボードに手を添えて、真剣な表情で彼らに語りかける。




「い・い・か? 仕事は要するに、いかに、納期けつを守るかだ。そのためには、順序立てて物事を運ぶ物語ストーリーが大事なんだ? そのためにできること。まずは、物語ストーリーをまとめていこう」


「は、はい……」




 嬉しいだろうな。自分のような次官いやむしろ天上人に直々に指導してもらえるなんて、本当に貴重な時間だろう。




「まずは、仕事の経緯、目的など初めから、す・べ・て、ここに書き出していけ」


「さ、最初からすべてですか?」


「当たり前だ!」


「ひっ……申し訳ありません」


「はぁ……いやむしろ……はぁ……」




 まったく、こんなこともできないのか、とケッノは呆れ返る。




 自分の頃は、こんなのではなかった。まず、上官が来たら子犬のように真っ先に出迎え、『あじゃじゃーっす』とバカそうな挨拶をして愛嬌を振りまき、大好きアピールを欠かさないものだった。




 最近の若い者はいやむしろ最近の若い者はーー




 ガチャ。
































































「では、始めましょうか。あなたの地獄ストーリーを」


「……っ」





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