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平民出身の帝国将官、無能な貴族上官を蹂躙して成り上がる〜ムカつく上司は全員ざまぁ! 転生した最強魔法使いの蹂躙下剋上譚〜  作者: 花音小坂
第一部 軍人編

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困惑


 シマント少佐は、しばらくその場に立ち尽くしていた。誰もいなくなってしまった。すでに、大尉たちは戦死していて、残る中尉たちがいないとなると、後は小隊を指揮している少尉しかいない……


「うっうわあああああああああっ!」


 思わず頭を抱えて叫ぶ。どうして、こうなった? いったい、なんで、どうして。


 もうケネック中佐のところにしか人材はいない。だが、頼れる訳はない。それは、ジルバ大佐が許さないだろう。


「えっ……じゃ、どうすんのこれ?」


 独り言が止まらない。言ってないと、どうにかなりそうだった。


 考え得る選択肢は2つ。ヘーゼン少尉に指示をして、クミン族との会談を成功させる。


「そんなことあり得ないだろう!?」


 あれだけ大見得を切っておいて、ジルバ大佐だって大層呆れるに違いない。そうなれば、大佐への特進など見送られるに決まっている。


「……くはぁ! うおえええええっ」


 ストレスのあまり、胃液が逆流する。すべての中尉がボイコットした事で、そのことも当然責められるに決まっている。管理者不適格の烙印を押されても不思議ではない。


「はわわっ……そうなれば中佐昇格だって危ういではないか! 危ういではな・い・か!」


 ひとしきり叫ぶ。精神を落ち着かせるために、声を出しておかないと、胃からすべてのものが逆流してしまいそうだった。


「なんとかしなきゃ……なんとかしなきゃ……」


 爪を割れんばかりにガジガジと噛みながら、シマント少佐はつぶやく。


  クズ中尉共も。ケネック中佐の派閥の者も。少尉? いや、駄目だ。配属されて数年あまりの将官にやれる仕事ではない。


「クソッ。ロレンツォ大尉め……こんな時に一人だけ謹慎なんて! ん……ロレンツォ大尉……ロレンツォ大尉」


 自分で言っておいて、自分の言葉を何度も連呼する。


「ははっ! そうだ、なんで気づかなかったんだろう! あいつにやらせればいい」


 シマント少佐は狂喜乱舞した。一人、大尉格が残っていた。しかも、ヘーゼン少尉直属の上官が。すべて、あいつのせいなんだから、すべてあいつに責任を取らせればいい。


 彼は、すぐさま部屋の扉を開け、ロレンツォ大尉の部屋まで全力で走った。そして、彼の扉をガンガンと叩いて叫ぶ。


「ロレンツォ大尉! いるのか? いたら、返事をしろ!」

「ど、どうしたんですか!?」


 驚いた表情を浮かべながら、ロレンツォ大尉が出てきた。


「どうしたもこうしたも……くっ」


 思わず怒鳴り散らしそうになって、慌ててシマント少佐は口をつぐんだ。もし、他の中尉みたいにロレンツォ大尉にもボイコットされたら……もう、正真正銘に打つ手がなくなる。


「ロレンツォ大尉ぃ。あのぉ、元気かなぁと思って。ほら、私は上官だし、心配に思ってぇ」


 シマント少佐は、殊更に甘ったるい声を出す。


「ま、まあ謹慎なんで元気と言うべきかはわかりませんが、身体は健康そのものです」

「それならよかったぁ。いやぁ、落ち込んでるんじゃないかと思って心配だったんだぁ」

「……ありがとうございます」

「それで……あの、君に一つ提案があるんだ」

「何でしょう?」

「私の言うことを聞いてくれるなら、君の謹慎を解いてやってもいい」

「……いえ、結構です」


 !?


「うおおおおおおおおいっ!? なんで!? なんでなんだ!?」


 シマント少佐は、扉を閉めようとしたロレンツォ大尉を必死に引き止める。


「私は謹慎を命じられ、私はそれを文句なく受け入れております。だから、せっかくのご厚意ですが、お断りさせて頂きます」

「な、なんでだ!? ロレンツォ大尉。私はねぇ、ジルバ大佐は誤解していると思うんだよ。君は帝国のために良かれと思って行動を起こした。それは、小さなボタンの掛け違いであったと思うんだ」

「……なら、なんで交換条件なんでしょうか?」

「それは……あれだよ。困った時は、お互い様ってやつだろ」

「申し訳ありませんが、私は謹慎中ですので。その問題はご自身で解決して頂ければと思います」

「た、頼む! そこをなんとか!?」

「……はぁ」


 ロレンツォ大尉は大きくため息をついた。

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