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第一功


 エヴィルダース皇太子も、大臣級の面々も唖然とした。完全に、当たり前に、堂々と、自分こそがNo.1だと、まさか言い放つとは夢にも思わなかった。


 当然の如く。マスクメロンのように血管を浮き立たせて怒るエヴィルダース皇太子。


「き、き、きき貴様ぁー! 何を言っているのか、わかっているのか!?」

「えっ? 私、何かおかしいことを言いましたかね?」


 キョトン。


 絶対確信犯的なキョトンをかます、演技派異常者ブリッコ・サイコパス


「くっ……きっ……ぐぅ……」


 言葉が出てこない。あまりにおかしいことを言われ過ぎて、言葉が全然出てこない。


 その間で、ヘーゼンは淡々と会話を進める。


「えっと、逆に私がよくわからないんですが、今は第何功まで決まっているのですか?」

「第1功は未だ決まっていない! いや、今の無礼行為で、貴様は自らが第1功になる機会を逸したと思え!」


 エヴィルダース皇太子が、勝ち誇ったように叫ぶ。

 

「……なるほど、わかりました」


 へーゼンは淡々と頷き、血管プルプルの皇太子に背を向ける。


「エマ……聞いたか?」

「……えっ? はっはひっ!?」


 完全に空気になろうとして頑張っていた美女は、突然の話題に振られてしまう。


「私は第1功ではないようだ。せっかくの会食だが、お断りしようかな」

「あう……でも、あっ、いや……」

「いや、よかったですよ。これから、ヴォルト様にご招待いただいたのですが、いや、恥をかくところでした。私、第1功だと勘違いしてましたので、ついついそう言ってしまうところでした。()()()()()()()()()()()()()()()()


 !?


「……かっ……き……くぇ……け……こ、こ、皇帝陛下ぁ!?」


 エヴィルダース皇太子は、眼球が飛び出そうな程に驚き唸る。


「そうなんです。恐れ多くも、ご招待頂くようで。ですが、まあ、合わせる顔もありませんし、仕方がないですね」

「じ、じ、辞退なんてで、で、できません! 絶対に! 皇帝陛下に招待されて、断るなんて、ぜ、ぜ、ぜ、絶対に無理です!」


 エマが小鹿のように震えながら答える。


「そうなの? いや、だったら謹んで謝罪しなければいけないな。いや、ヴォルト様にも恥をかかしてしまうな。『へーゼン=ハイムの第1功を祝う会』なのに」

「「「「「……っ」」」」」


 あの、暴走クソ老人ジジイ


「いや、客観的な事実を見れば、私かなと確信してましたが、色々あるんでしょうね。さぞや、高度で、高尚な、喧喧諤諤の議論が繰り広げられているとお見受けしました。皇帝陛下も、そこらへん、非常に興味があるのではないですかね?」

「「「「……っっ」」」」


 へーゼンは、大臣たちに対し、満面の笑みを浮かべる。


「いや、でも心配ですね。すでに、反帝国連合国との戦が終わり2週間以上が経過しているのに、第1功すら決まっていないとは……ついつい、余計な心配をしてしまう」

「「「「……っっっ」」」」


 余計過ぎる。


「あっ、安心してください。皇帝陛下には、余計な心配をしないように、キチンと報告しておきますから」

「「「「……っ゛」」」」


 めちゃくちゃ余計ー。


「いや、でも……第1功も未だ決まっていないとなると、やはり、心配ですね。以降の論功を決めるのには、より多くの時間がかかるでしょう? 『雁首揃って何をやっているんだ!?』というお話にはならないかなー……いや、余計な心配ですけど」

「「「「……っ゛っ゛」」」」


 果てしなく、余計な心配ばかりしてくる。


「あっ、アウラ秘書官とデリクテール皇子は、心配しないでくださいね。いや、むしろ反帝国連合国との戦に参加して、このような論功行賞の議論にも参加して、さぞやお疲れでしょう。皇帝陛下にも、その旨はお伝えしておきます。くれぐれも、余計な心配はなされぬように」

「「「「……っ゛っ゛っ゛」」」」


 エヴィルダース皇太子と他の大臣級に、ドシッとのしかかってくる、余計な心配。


「えっと……ウマルコ=ビッジ様……マーラー=ノカミ様……バス=トポヨン様……ユーレ=ルーケツ様……」


 そして。


 へーゼンは、指を刺しながら次々と名前をつぶやく(圧倒的非礼)。


「あき、きしゃまぁ……な、な、何を……」


 ウマルコ大臣が、口から泡を吹き出しながら尋ねる。


「いや、この場にいた大臣級の方々のお名前の確認を……皇帝陛下に聞かれた時に報告しないといけませんから」

「……よ、よ、余計なお世話だぞぉー!」

「いや、陛下の指示とあらば、余計なお世話とかないです」

「……はぉっ!?」


 バッサリ。


 冷たく、バッサリと一刀両断で意見を斬る。


 その時。


「……へーゼン=ハイム」


 アウラ秘書官が、額をトントンとしながらつぶやく。


「はい」

「その……皇帝陛下の会食はいつに開かれる?」

「2時間後ですが、万が一にも遅れるわけにはいきませんので、もう失礼します」


 !?


 いつの間にか、時間切れ。


 失礼をし尽くした上での時間切れ。


「……少し時間をくれないか? すぐに、まとめさせて第1功を決めよう」

「でしたら、5秒後に行きます」


 !!?


「「「「「ごっ……」」」」」


 めちゃくちゃ勝手に入って来たのに。


 めちゃくちゃ勝手に去って行く。


「いや、待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て!」

「待てませんよ、『皇帝陛下を待たせろ』と言うなら、その旨お伝えしますがね」

「……く、くぅーーん……」


 子イッヌのように。


 今にも泣きそうなほど目頭をウルウルさせて、エヴィルダース皇太子は、アウラ秘書官の方を振り返る。

 

「まあ、我々も準備があるのでね。では、数えますよ」

「あっ……ちょまっ……ちょ待てよ!?」


「5

 4

 3……


「「「「……っ」」」」


 か、カウントダウン始めたー。


 エヴィルダース皇太子の制止をガン無視して、指を容赦なく折りはじめた(異常非礼)。


「はぁ……」


 アウラ秘書官は、深く深くため息をつく。


「皆様、へーゼン=ハイムの第1功に賛成の人は手を挙げてください」

「「「「「……っ」」」」」









 






















 


 



 満場一致で、へーゼン=ハイムの第1功が決定した。


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