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平民出身の帝国将官、無能な貴族上官を蹂躙して成り上がる〜ムカつく上司は全員ざまぁ! 転生した最強魔法使いの蹂躙下剋上譚〜  作者: 花音小坂
第一部 軍人編

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謹慎


 ジルバ大佐の問いに対し、ロレンツォ大尉は、冷静に答える。


「……私たちができるのは、ヘーゼン少尉の不敬罪を見送ることだけではないでしょうか?」

「正気か?」


 ジルバ大佐が目を大きく見開いて睨みつける。


「皇帝陛下のためを思えばこそです。確かに味方にするのは危険すぎる男です。しかし、敵にすることの方が遥かに脅威になるでしょう」

「くだらない! この広大な帝国が、一人の男すら敵に回せないだと!?」


 シマント少佐が叫ぶ。


「ヘーゼン少尉はギザール将軍を一騎討ちで叩きのめしました。少なく見積もっても、ディオルド公国の大将軍以上の実力を持っています。決して大袈裟な話ではありません」

「臆病者が! ジルバ大佐、こんな者に重要な交渉が任せられるはずはありません! 私が後を引き継ぎます!」

「……シマント少佐。任せられるのか?」

「必ずや」

「わかった。ロレンツォ大尉、君は謹慎処分。ヘーゼン少尉の処分は、追って考えるが、それは極刑を前提としたものであることに変わりはない」

「……わかりました」

「シマント少佐。停戦交渉は取り敢えず、ヘーゼン少尉抜きでやってくれ。そして、あの男の息がかかった者は使うな」

「わかりました! 必ずや」

「すまないな。この件が成功したら、君を中佐……いや、私の待遇次第では大佐に推薦しておこう」

「ほ、本当ですか!?」

「もちろんだ。当面は、ケネック中佐が謹慎になり、君に中佐業務までをやってもらわなければならない。苦労をかけるがよろしく頼む」

「はい!」


 シマント少佐は元気のいい返事をする。ロレンツォ大尉は無表情でお辞儀をして、部屋を退出する。廊下を歩いて自室へと向かうと、部屋の前にはヘーゼンが立っていた。


「どうした?」

「いや、大変ですね。無能な上官とは、敵よりも厄介なものだ」

「聞いてたのか?」

「いえ。でも、そうなのでしょう?」

「はぁ……ここにいるところを見られるとまずい。私の部屋に行こう」


 ロレンツォ大尉は深いため息をつき、自室へと入った。


「私はこれから謹慎になる。あまり君といるところは見られるとまずいので、ここには来ないように」

「わかりました」

「当面、君の身柄が拘束されることはないと思う。バカな真似はしないように釘を刺しては置いたが、こればかりはわからないな」

「ありがとうございます。助かります」

「助ける? 勘違いしてるようだが、私は彼らを助けたいのだよ。そして、私の身もな」


 下手にちょっかいをかけると、彼らが負けることは目に見えている。その度に、仲介に入るのでは身が持たない。


「クミン族との領地交換案。本当に君の名を出さなくてもよかったのか?」

「出せば、受け入れられない可能性がありますから。その様子だと、しっかり乗ってくれたようで安心しました」

「……彼らは君を外そうとしているぞ?」

「ご自由に。やれるのなら、別に誰がやったっていい。それが上官の権限ですから」

「やれない理由があるのか?」

「それは言えません」

「なぜ?」

「あなたが優秀な帝国軍人だからです」

「……」


 ロレンツォ大尉はその褒め言葉を警戒する。今後もこの男の発言にはある程度のフィルターを持たなくてはいけない。ある意味で、ジルバ大佐やシマント少佐などよりも心許せない怪物なのだから。


「仮に、私があなたに言えば、あなたは帝国にとって最適なのかを判断して行動しようとする。それは、あなたの立場を危うくするかもしれない」

「ヘーゼン少尉。発言には気をつけたまえ。帝国軍人が帝国のために行動することは当然の責務だ」

「もちろんです。ですが、あなたが思う帝国のための最適解と私が思う最適解は異なります」

「……私もまた無能だと言うことだな」

「違いますよ。あなたはご自身をいつも犠牲にしようとするところがある。実際のところ、私はあなたに守られなくても、彼らに拘束されない手段など準備してました」

「……」

「しかし、あなたは謹慎の憂き目にあった。帝国のためを思った進言かもしれないが、無駄に上官の評価を下げたことになる」

「辛辣だな。やはり、無能だと言うことではないか」

「そうではありません。実直なだけです」


 ヘーゼンの答えに、ロレンツォ大尉は不思議な感情に襲われる。彼の言い方は、まるで引退間近の教師が、子どもを褒め称えるかのようだ。しかし、あり得ない。ヘーゼンは18歳であり、ロレンツォ大尉より10歳歳下だ。


「……君から言われると、変な感じだな。だったら、次に私が言うことがわかるかな?」

「いえ。私は実直ではありませんから」

「とにかく、ここ数日は疲れた。謹慎中に胃の痛くなるような行動は慎んでくれ」

「まあ、聞いておきましょう。ただ、謹慎中の発言ですので、参考までと言うことにさせてください」

「……ふっ」


 その発言を聞いて、多分無理だなと悟った。

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