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平民出身の帝国将官、無能な貴族上官を蹂躙して成り上がる〜ムカつく上司は全員ざまぁ! 転生した最強魔法使いの蹂躙下剋上譚〜  作者: 花音小坂
第一部 軍人編

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咆哮


 シマント少佐の指示に対し、カク・ズは微動だにしない。それは、先ほどの暴凶とはまるで異なる静寂だった。


「まさか……もう、力尽きているのか?」


 ロレンツォ大尉がつぶやく。確かに、あの爆発的な能力は異常だ。同じ事をディオルド公国の兵たちも感じたようで、数十名の小隊が突撃を開始する。


 しかし、彼らの期待とは裏腹に。鎖状の剣が奮われ、しなるような斬撃が数十名の首を瞬時に斬り離した。


「う、動くではないか」

「おい! カク・ズ、聞こえるか!?」

「……ゔっ……ゔゔゔゔゔゔっ」

「ダメだ」


 ロレンツォ大尉はカク・ズが、ただ一つの命令で動いているのだと察知した。しかし、シマント少佐はそれに気づかずに、怒り狂いながら叫んでいる。


 ギザール将軍も、どうやら気づいたらしい。彼は、兵たちを引かせて自身の雷切孔雀が届くほどの距離まで近づく。


「このまま、時が経つのもいいが、それでは思う壺なのでな」

「……まずいな」


 ロレンツォ大尉は唇を噛む。


 カク・ズの能力は明らかに自身の限界を超えている。それ故に、活動時間はかなり限定されるはずだ。


 ここで、敵側は2つの選択肢があった。1つは、軍を随時投入してカク・ズを削り取る方法。そして、もう一つは実力者が彼に対峙してカク・ズを削り取る方法。


 この強者は、迷わず後者を選んだ。


「行くぞ……『駿雷』」


 駿雷は雷切孔雀の正式な技名である。ある地点までの高速移動。単純だからこそ、防ぐのが難しい必殺剣である。ギザール将軍は瞬時にカク・ズの背後に回って剣を振るう。


 ガキン! という金属音が爆ぜ、跳ね返される。そこで一瞬制止すると、カク・ズが高速の斬撃を振るう。ギザール将軍は、間一髪で駿雷を発動して、身をかがめて避ける。


 さらに、次は突きで鎧の隙間を通そうとするが、それすらも弾かれる。


「くっ……どんな硬さをしてるんだ」


 思わずつぶやいて、次の攻撃に移ろうとした時、すでにカク・ズの斬撃がギザール将軍に飛ぶ。またしても、駿雷を使って一旦、距離を取る。


「ぶはぁ……はぁ……はぁ……なんてヤツだ」


 決して、駿雷の速度に追いついている訳ではない。しかし、攻撃を受けた瞬間の反撃速度は、明らかにギザール将軍を捉えている。


 確かに、駿雷の発動範囲は一連の動作ごとで区切られる。なので、動作の中断が入ると、連続的な駿雷を発動しなくてはならず、その間は通常の動きになってしまう。


 しかし、本来は視認できない箇所からの攻撃で、運良く防げたとしても即座に反応できる者などいない。


 カク・ズは、類い稀な戦闘センスとこの異常な魔杖の効果で見事にそれを実戦しているのだ。


「厄介だ。全身鎧だから、どこを狙おうと弾かれてしまう」


 視界も完全に覆われており、差し込む隙が一部もない。


「がはははははっ! ギザール将軍恐るるに足らず! どうした、もう終わりか?」


 シマント少佐が高らかに笑う。そんな光景を見ながらギザール将軍は睨んで叫ぶ。


「囀るなゴミが! 降りてきて戦うか?」

「ひっ……」

「余計なことは、謹んだ方が身のためかと。彼ならば、一瞬にしてここまでくるのすら容易かもしれません」


 ロレンツォ大尉が、軽率な上官の口を封じる。


 しかし、ギザール将軍の駿雷についても少し見えてきた。確かに、その圧倒的な速度は驚異的である。一騎討ちのような単体戦ではその能力は遺憾なく発揮されるのだろうが、集団戦闘においてはカク・ズに軍配が上がる。


 そして、ギザール将軍に有効な攻撃手段がない以上、攻め手にも欠ける。ロレンツォ大尉は、微かにだが、この戦の勝機が見えたような気がした。


 しかし。


「仕方ない。これは、かなり消耗するんだがな」


 ギザール将軍はため息をつき、再び駿雷でカク・ズの場所まで高速で移動した。そして、次の瞬間、雷切孔雀をカク・ズの背中に当てる。次の瞬間、全身鎧に無数の放電の火花が散った。


「ぐわあああああああああああっ!」


 カク・ズは巨大なうめき声をあげ、その場に膝をついた。


「……はぁ……はぁ。『舞孔雀』を使うのは久々だ」


 ギザール将軍は再び駿雷で、戻っていたが、やがて、息を切らしながら膝をつく。


 舞孔雀。本来、速度に変換する雷を単純な電流に変更し流す技である。ギザール将軍は、雷切孔雀の能力を速度に特化していたため、ほとんどこのような使い方はしない。


 よって、その魔力消耗度は比ではないし、出力もそこまで多くはない。しかし、全身鎧には、効果的面だったようだ。


「おいっ! おい! 化け物、返事をしろ!」

「カク・ズ! 大丈夫か?」


 反応はない。


 ギザール将軍の魔力も底をつきかけている。これで、ピンピンしているようであれば、追撃は断念せざるを得ないが。


 ギザール将軍は手を挙げて他の兵たちを突撃させる。しかし、カク・ズは微動だにしない。


「……よし」


 勝利を確信したギザール将軍は手を挙げて、突撃を指示する。すると、全軍が中央門へと突撃を開始する。


 その時。


「ぐああああああああっ!」


 咆哮と共に、再びカク・ズが立ち上がる。そのあまりの迫力に、ディオルド公国兵の足が止まった。


「……引け」


 ギザール将軍は、やがて、そう指示をした。


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