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満場一致


「はっ……くっ……」


 殺した。何の躊躇もなく、容易く、まるで収穫した麦を刈るかのように、国のトップを殺した。諸王たちは眼球をガン開きにして、目前で起きている光景を疑った。


「しょ、正気か……貴様っ」


 諸王の一人であるビスコンティ王が、震えながら立ち上がる。だが、ヘーゼンは平然とした表情を崩さない。


 それどころか。


数合せ(モブ)でしょ? だって」

「……っ」


 ハッキリと、キッパリと、サッパリと言い切り、スッパリと斬り捨てた。


 ヘーゼンの手には魔杖が握られていた。小型の枝のようなそれで、モクセル王の首を切断したのだ。


 だが、そんな諸王たちの動揺など歯牙にもかけることなく、目の前の異常者サイコパスは、淡々と話を続ける。


「諸王会議を成立させるためには、3分の2の出席率が必要。だが、逆を言えば、3分の1は不要。イリス連合国の盟主以外は、代替かえが効くんですよね」

「ふ、ふ、ふざけるな!」

「ふざける? ふざけてなんていませんよ」

「ひっ……」


 激昂するビスコンティ王に、へーゼンはゆっくりと近き、漆黒の瞳で見下す。


「あなたたちの存在価値は、『賛成する』ということ。ただ、それだけです。そこの、モクセル王(モブ)は反対だった。すなわち、存在価値がなくなった。そういうことです」

「こ、こんなことをして……ザヌセル国が納得するとでも思うか?」

「潰せばいいんですよ。残りの国々で」

「……っ」


 へーゼンは、こともなげに答える。


「これでも、気を使ったんですよ? ザヌセル国は武力も国土もイリス連合国で一番小さい。みんなでやれば、すぐに捻り潰せますよ」

「……っ」


 この男は、いったい、何を言っているんだ。完全に理解ができない。意味がわからない。まるで、他の国が、自分たちの仲間かのように振る舞っている。


「次に小さな国家は……べヴァリス王か……エバゴ王か……うーん、甲乙つけ難いな」

「……っ」


 混乱する諸王たちなどお構いなしに。へーゼンは淡々と話を進める。


「ああ、一応説明しておきますね。ジオス王の新盟主就任に、反対だったらあなたたち2人は殺します」

「はっ……くっ……」

「安心してください。賛成だったら、何もしませんから。そして、次に国力の弱い王に尋ね反対だったら、やはり、殺します」

「そっ、そっ……そんな……」

「諸王の皆様方が鉄の結束を発揮し、3分の2までになれば、仕方ないですから、仇花を体内で育ててもらうことになりますね」

「ひっ……」


 諸王たちは、未だ、ビクンビクンと脈打ちながら悶えているシガー王をみる。反対すれば死。全員が反対をすれば、死を越えるほどの拷問。


 どのみち、地獄しか待ってはいない。


「では、どっちに聞きましょうか?」

「エゴバ王に」「べヴァリス王に」

「……っ」「……っ」


 互いが互いを指さす。そして、指された2人は、互いに親の仇同士かのように睨みつける。


「わかりました、じゃ、同時に聞きましょうか?」

「「……っ」」


 どちらの提案も、当然の如く否決したへーゼンは、2人に近づき、自身の手のひらを向ける。


「5秒あげます」

「ごっ……!?」

「あなた方はジオス王が次期盟主となるのに賛成ですか? 反対ですか?」

「ちょ……まっ……ひぐっ……」

「5

 4

 3

「「賛成です!」」


「「「「「「……っ」」」」」」


 諸王たちは信じられないような表情を浮かべて睨むが、エゴバ王もべヴァリス王も、全力で目を逸らす。


「素晴らしい英断です。そして、おめでとうこざいます……あなたたちは勝ち組です」


 へーゼンは満面の笑みで、2人の王の肩をポンポンと叩く。


「じゃ……ああ、次はあなたですか。何かと反対意見をお持ちの、ビスコンティ王」

「がっ……ぐっ……はっ……」


 指名された王は、震えながら数足後ずさる。


「あなたには、まあ2秒でいいですか」


 !?


「に、にっ……」

「反抗的ですからね。賛成しないならしないで、さっさとって、次に行きたいんですよ」


 ニッコリ。


 満面の爽やかな笑みを浮かべて、へーゼンはもう片方の手で魔杖を構えている。すでに、る気満々である。


「では、聞きますね。ビスコンティ王、あなたはジオス王がイリス連合国の盟主となるのに、賛成ですか? 反対ですか? 2……」

「賛成だ! さ、さ、賛成! 賛成だから命だけは助けてくれ!」

「……なるほど。快く賛成いただけて嬉しいです。おめでとうございます。あなたも勝ち組ですね」

「ぐふぅ……ぐふぅ……」


 訳のわからない擬音を発しながら、泣きそうな顔をしながら、顔を真っ赤にしながら、食い気味にビスコンティ王は頷き縋りつく。


 へーゼンは同じように彼の肩をポンポンと叩く。そして、残りの諸王たちに向けて、尋ねる。


「さて……じゃ、次々と行きますか」

「「「「ひっ」」」」


「賛成ですか? 反対ですか?」

「さ、賛成です」

「あなたは?」

「賛成です! もちろん、賛成」

「次」

「賛成! 賛成賛成!」

「賛成ですよね?」

「もちろんです!」

「じゃ、あとはみんな賛成ですか? もう定員に達しましたから殺すでもいいんですけど」

「「「「……っ」」」」


         ・・・































「じゃ。満場一致ということで」

「「「「「……っ」」」」」




 



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