表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

381/700

ルカ



           *


 五星ノ爪(ごせいのつめ)には2つの能力がある。1つ目は、遠距離用の魔法攻撃。恐るべき貫通力を誇り、投擲武具としては異常な距離を叩き出す。


 しかし、この魔杖の真価はもう1つの能力にある。


 雷切孔雀らいきりくじゃくに魔力を込めた瞬間、五星ノ爪(ごせいのつめ)と連動し、その刀身に向かって雷属性の魔法が走る。その速度・威力は、落雷に匹敵する。


 さらに、雷切孔雀らいきりくじゃくを起点とし、五芒星を描くことで、範囲的に雷属性の魔法が敵を縛る。


 広範囲の捕縛魔法。


 敵は完全に雷切孔雀らいきりくじゃくの特性を把握していた。クシャラの前には常に死を恐れぬ護衛が立ちはだかり、相手の動きを止めなければ、魔杖を奪うことができない。


 ギザールは、相手を仕留めるのではなく、あえて躱すように五星ノ爪(ごせいのつめ)を放った。相手に悟られぬように、さも慣れていない攻撃するように見せかけて、相手を残らず捕縛するような範囲にマーキング地点を散らした。


 結果として。


 身動きが取れないクシャラたちを、ドグマ族の戦士たちが捕縛した。


 やがて、タラール族の族長候補であるルカが合流した。彼はクシャラとしばらく視線を合わせていたが、やがて、悲痛な面持ちで言葉を絞り出す。


「兄さん……」

「殺せ」

「……なぜだ? なぜ、タラール族を追い込むような真似を?」

「……」


 ルカは問いかける。


 クシャラのやり方は、いたずらに敵を増やすものだった。そこに未来などなく、ただ、自分たち以外の者を排除する。


 そんなやり方が通じないことは、誰が見ても一目瞭然だ。それにも関わらず、クシャラは復讐のみに身を投じ、味方にもそれを強いた。


「ジブラ兄さんだって、こんなことは望んでいなはかったずだ」

「……殺せ」


 クシャラは再びつぶやく。互いの視線が重なり合い、しばらくの時間が経過した。昔は、仲のよい兄弟だったと言う。


 やがて、ルカは真っ直ぐな瞳で、クシャラに答えた。


「殺さない。俺は大首長になり、タラール族を救ってみせる」

「甘いな。そんなことで、部族をまとめられるとでも? ガロに勝てるとでも思っているのか?」

「まとめるんじゃない。勝つのでもない。タラール族は皆でまとまり、皆で共に生きていく」

「……」


 そう断言し。ルカはギザールの方を振り返る。


「ついてきてくれ。これから、クシャラ兄さんを連れて、ガロ兄さんの下に向かう。もはや、タラール族の内輪争いをしている時ではない」

「やれやれ。人使いが荒いな」

「お互い様だろ? この後、ゴクナ諸島に我が部族を送り込むのだから」

「おうさ! 手伝った恩は返してもらわなきゃいけねぇな」

「……」


 海賊のシルフィが威勢のいい声をあげる。こちらの能天気な陽キャは、誰の都合もお構いなしだ。ある意味で羨ましいなとは思う。


「ところで、頼みがある」


 ギザールはルカに向かってきりだす。


「なんだ?」

「ガロが首長になるにしろ、お前が大首長になるにしろ、クシャラはタラール族に置いとけないだろう?」

「……ああ。追放することになるだろうな」

「……」


 クシャラはあまりにも多く殺しすぎた。敵もそうだが、自身の意見に逆らう味方も皆殺しにした。大首長の肉親であろうと、遺恨の火は燻り続けるだろう。


 その様子を眺めながら、ギザールはため息をついて答える。


「こんな猛獣を野に放つのか? 危険すぎるだろう。こいつらの身柄を預けてもらえないか?」

「……どうする気だ?」

「いい猛獣使いがいる」


 ギザールはそう言って笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ