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クシャラ


           *


「クク……」


 タラール族のクシャラは、苦境に立った侵入者を眺めながら、勝ち誇ったようにせせら笑っていた。


 無頼ノ屍(ぶらいのかばね)。発動すれば、自身と一定範囲の味方に超常的な再生能力を付与する魔杖である。


 例えば弓で脳天を貫かれた瞬間に、瞬時に細胞の再生が発動する。身体を斬られても、互いの部位パーツを重ね合うことで、即座に部位を接着することができる。


 クシャラが皆殺しを選択するのは、その残虐さのためだけではない。自身の戦闘スタイルがバレることを防ぐためでもある。


 この魔杖の凶悪なところは、相手の魔杖の能力を把握し対処ができることだ。必殺の魔法を喰らわせた相手は必ず油断が生じる。その上で相手を冷静に分析して強力な部下たちと共に殲滅する。それが、クシャラの常套手段だった。


「ククク……」


 そして、今回は見事に大物が釣れた。タラール族を討伐する強力な侵略者。噂では、末弟のルカが糸を引いているらしいが。


「……」


 次男のガロに末弟のルカ……そして、長男のジブラ。昔は何事も一緒で仲がよかった。だが、もうあの時に戻れないし、戻る気もない。


れ」


 クシャラは、禍々しいほど真っ赤な目を向け、部下たち指示する。相手の魔杖はすでに把握した。なるほど、瞬間移動は確かに脅威だ。まさしく必殺の魔杖だが、こちらとは相性が悪すぎる。


 スキンヘッドの青年が勝利を確信した時。


「くらえ……五星ノ爪(ごせいのつめ)


 侵略者は叫び、ナイフのような魔杖を部下に対して投げつけてきた。


「……っ」


 部下がかろうじて回避すると、その魔杖は木々を貫いて遥か遠方へと突き刺さる。


 投擲型の魔杖か。


 飛距離は数百メートルと言うところか。軌道も直進的で威力も申し分ないとは思うが、いかんせん使い慣れてはなさそうだ。


 先から見せている剣技は見たこともないほど洗練されているが、今回の投擲は動きがかなりぎこちない。歴戦の死闘に生き残ってきたタラール族にとっては、『避けてくれ』と言っているようなものだ。


 侵略者は、苦し紛れに続けて2本目、3本目、4本目の魔杖を投げるが、部下たちはそれもことごとく回避する。


「終わったな」


 クシャラは勝ち誇ったようにつぶやき、自身の片方の得物を構えて襲いかかる。巨大な刃を持った鎖鎌のような魔杖である。


 亡者ノ鎌(もうじゃのかま)


 魔杖同士が触れるだけで、毒が相手の身体に流れ込み、死にいたしめる必殺の魔杖である。クシャラは、猛然と侵略者のもとへと突っ込み、勝負を決めに行く。


 殺す。


 皆殺しだ。侵略者は殺す。余さず殺す。徹底的に殺す。残虐に殺す。2度と逆らわないよう殺す。殺し尽くす。裏切り者も殺す。


 穢れた侵略者どものせいで。醜き裏切り者の異民族のせいで。偉大で尊き兄を失った。タラール族の耀しき未来を失ったのだ。そんな奴らには、すべて残らず兄と同じ末路を味合わせてやる。


「うおおおおおおおおおおおおおっ!」


 クシャラが大声で大鎌の鎖を振るい放とうとした時。


「がっ……」


 身体が、まるでなにか電気を流されたような衝撃を受ける。そして、身体が痺れて微動だにすることができない。


 眼球を必死に動かすと、部下たちも、全員が同じような状態らしく、身動きが取れていない。


 侵略者が安堵した表情を浮かべている。


 そして。


 侵入者の手に持っている魔杖を見ると、魔杖の刀身と自分の身体を貫通して、目に見えるほど大きな電流が流れていた。


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