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ギザール(2)


 ギザールは目を疑った。確実に脳天を貫抜かれているはずのクシャラが、むくりと起き上がり何事もないように部下に指示を飛ばしているのだ。


 一方で。


 シルフィは、間髪入れずに遠方から魔弓を放つ。それは、クシャラの心臓、また、周囲の取り巻きの胸にも寸分違わず突き刺さるが、今度は全員がつき刺さった魔弓を自らの手で抜き始める。


「……っ」


 明らかに異常だ。魔杖の効果だと言うことはわかるが、まだ効果の全容がつかめていない。クシャラだけでなく、その取り巻きたちも死なないなんて。


 シルフィの居場所も、発射角から特定された。すぐさま、獰猛な手下の一人が、山道を高速で駆けていく。


 まずい。


 このままシルフィが殺されれば、ゴクナ諸島における戦略が崩壊する。ギザールは躊躇することなく雷切孔雀らいきりくじゃくを連続で発動させ、手下の首を両断した。


 たが。


「……っ」


 首を飛ばされてもなお、胴体が動き、その首を何事もないように取りつける。この状況は、かなり異常だ。


 幻術型の魔杖か? 


 しかし、自分がそれにかかった形跡はない。雷切孔雀らいきりくじゃくの天敵となり得るため、幻術型の魔杖対策については、以前からかなり実施していた。


 なにより、ギザールの周囲にいたドグマ族たちも同じように戸惑った表情を浮かべている。幻術型の魔杖は強力だが、対象は単体に限定される。一度に広範囲でかけられるものはない。


 総合的に考え、幻術型の魔杖ではないと結論づけた。


 一方で、ギザール自身の状況も刻一刻と悪くなっている。クシャラ一派にその姿を特定されたからだ。下手に味方の戦力を減らしたくはないので、ギザールの指示で、ドグマ族の戦士たちはその場で潜伏させ続けている。


 実質、この状況を一人で乗り越えなければいけない。


 ギザールは、すぐさま雷切孔雀らいきりくじゃくを連続で発動させ、クシャラと周囲の取り巻きの胴体を両断する。


 斬っても死なないことはわかった。だが、胴体ごと斬りとれば、少なくとも身体を接着させるのに時間がかかるはずだ。


 だが。


「はぁ……はぁ……マジかよ」


 まるで、夢を見ているようだった。クシャラの胴体は匍匐前進で迷わずに下半身に辿り着き、数秒と経たずに接着する。他の部下たちも同様だ。


 次の瞬間、部下たちが火属性の魔法を放ち始める。ギザールは雷切孔雀らいきりくじゃくで瞬時に避けるが、火は木や草に燃え移ってより広範囲の炎になる。


 まずい。


 避ける対象範囲が、どんどん狭まっていく。それを敵も理解しているのか、火属性の魔法を間髪入れずに放ち続けられる、ギザールの周囲は火で囲まれ始める。


 一方で、近接系の大斧のような魔杖を振るう戦士と槍のような魔杖を使う戦士が猛然と攻撃を仕掛けてくる。この2名も大した使い手で、どんどん追い詰められていく。


「はぁ……はぁ……くそっ!」


 ギザールは観念したようにつぶやいた。


 本当に癪だ。


 まるで、こうなることを見越したかのように。


 ヘーゼン=ハイムと言う男は、ギザールにもう一つの魔杖を持たせたように思える。


 この魔杖を実戦で使うのは初めてだ。


 上手く使えなければ死ぬ。


 その感覚になった時、脳内のアドレナリンがガンガンに注がれていくことを感じる。決死の状況になる時に味わうこの感覚。


「ふっ……面白ぇ」


 ギザールは笑い。


 左手に小型の投げナイフのような魔杖を指に4本挟み、放つ。























「くらえ……五星ノ爪(ごせいのつめ)

 

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― 新着の感想 ―
切り口を土や汚いものでドロドロに汚せば破傷風で近いうちに死ぬんじゃないか?毒に強い特性がないとくっつけることが出来ても無敵じゃない。半身や首を崖下に捨てるとか煮るなり焼くなり自由だし。
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