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帰国


           *


 数日後、ノクタール国サザーランド城。『緊急本部』として貸り切った一室の豪奢なソファで、特別顧問に就任したバリゾは、ふんぞり返って座っていた。側には、特別顧問補佐のケッノがピッタリとつき従っている。


 特別顧問は、ノクタール国内で筆頭大臣よりも上の地位だ。


 もはや、バリゾは指摘などは行なっていない。この老人の中では、すでにそのレベルを卒業していた。ノクタール国の大臣たちの相手など、彼以外に派遣された帝国将官に任せればいい。


 上の地位にいる者こそ、どっしりと構え、鷹揚でなければならない。仮に彼らが迷って自分に相談にきたら、キッチリと指導してやればいい。


「まったく、私は現場肌だから、こうしてゆっくりと構えるのは苦手なんだがな」

「仕方ありませんいやむしろ仕方ありません。偉くなればなるほど、そう言った指導はできなくなりますから」


 隣のケッノが相槌で答えていると、派遣された帝国将官の秘書官が急ぎ足で部屋へと入ってきた。


「はぁ……はぁ……へ、ヘーゼン少佐が城に到着しました」

「やっと来たか! すぐ呼び出せ!」


 バリゾは立ち上がって叫ぶ。本来ならば、こちらがノクタール国に到着した時に、真っ先に出迎えをするべき立場のはずだ。


 それを、『外遊』などと言うくだらない名目で放棄した。そのナメた態度は、屈辱だった。なんとしても、土下座で謝罪させて落とし前をつけなければ我慢ができない。


 そんなことを考えていると、黒髪の青年が部屋に入ってきた。


「初めまして、ヘーゼン=ハイムと言います」

「……特別顧問のバリゾだ」


 老人はむっつりとした表情で答える。この男は、どのようにして挨拶しなかった言い訳をしてくるだろうか。どんな風に言っても許す気はないが。


「早速ですが、献策をさせてください」


 !?


 こ、こいつ……なんの言い訳も……


「おいお前いきなりその失礼な態度はなんだありえないだろいやむしろありえないだろ!? その前に挨拶が遅れたことの謝罪は!?」


 隣にいたケッノが食ってかかる。


「挨拶など遅れてませんが」

「き、貴様っ! 格下の将官は格上の将官が配属された時に必ず出迎えるんだよ! こんなの常識だぞいや圧倒的な常識なんだよ!」

「知りませんね、そんなマイナールール。聞いたこともない」

「……っ」

「そんなくだらないことよりも、献策に目を通して頂きたいのですが。ここは、緊急本部でしょう?」

「くっ……常識知らずの礼儀知らずが! 物事には順序と格式がある。バリゾ特別顧問は、筆頭大臣の格よりも上のポジションだぞ? まずは、特別顧問補佐の私に……いや、そこにいる特別顧問補佐官のガナアクに……いやいや、その下の……いやいや、その前に挨拶の件について、貴様っ……」

「いや、見よう。ここまでするからには、相当に素晴らしい献策なのだろうな?」


 バリゾは鷹揚にふんぞり返って尋ねる。くだらないものであれば、即刻破り捨て、降格処分も食らわせてやる。


「はい。自信があります」


 ヘーゼンはニッコリと笑顔を浮かべる。


「ふは! 楽しみだ! どれ」


 バリゾはひったくるように、持ってきた献策案を奪って読み始める。


「……」

「……」


             ・・・


 数分後。バリゾは、こめかみを手で押さえて頭を抱える。


「ケッノ特別補佐官」

「はい。どうしましたかどうしましたか?」

「私はおかしくなったのかな。これに目を通してみてくれ」


 そう言って、書類を手渡す。ケッノが読み始めると、同じような表情を浮かべて、他の帝国将官に手渡す。そして、彼がそれを読み始め、次の帝国将官に手渡す。それから、次々と帝国将官たちが回し読みをしていき、最後にまたバリゾのところに到着した。


 そして、老人は恐る恐る訪ねる。


「……おい、これって、ギャグじゃないよな?」

「はい。至って真面目に作成しました」


 ヘーゼンがそう答えた途端、その場にいた帝国将官が全員漏れなく爆笑する。


「がはははははは! お、おまっ……真面目にこんなくだらない提案を?」

「きゅほーーーー! きゅほほほほ、きゅほほほほほほ、アホ過ぎるいやアホ通り越してアホ過ぎる」


 ケッノもまた、腹を抱えて寝転ぶ。


「イリス連合国に宣戦布告!? アホ過ぎるにもほどがある。それを真面目に? まーじーめーにー!? アホ過ぎ通り越して頭がおかしい―――! ぶはははっ!」


 バリゾはお腹を抱えながら、心底喜びながら指をさして笑う。


「そ、そ、そんなことしてみろ! イリス連合国の面子は丸潰れだ。こんな極小国に喧嘩を売られたとなれば、ノクタール国を徹底的に攻撃するしかなくなる。滅亡だ滅亡!」

「そんなこともわからないのかいやそんなことは絶対にわかるはずだ! 皆殺しにされるぞ! ノクタール国の王も、大臣たちも国民もお前も! 我々だって……きゅほーーーー! きゅほほほほ、きゅほほほほほほ」




























「そうですか。でも、もう送りましたから」

「えっ?」


いつも本当にありがとうございます! 本日、1巻が3月19日発売になってます! ぜひぜひ読んでみてください!


下記専門店にて購入特典として限定SSがもらえます。気合いを入れて書いたので、ご購入いただく方がいれば、ぜひ、おまけ付きのものをご検討頂ければと思います。


【専門店特典】

 ゲーマーズ様 SS『エマの手紙』

 TSYTAYA様 SS『モスピッツァ大歓喜』

 メロンブックス様 SS『レィ・ファの想い』


【電子特典】

 BOOK⭐︎WALKER様 SS『ヤンの未来』

 

【応援店特典】

 特定セリフ付きキャラカード

 ヘーゼンが何かが高いと指摘しているイラスト

 ヤンが、ちょうど今、浮かべているであろう表情

 上記2点のどちらかがもらえます

 ※応援店特典は店舗数が多いので、ファンタジア文庫のHPを確認頂ければと思います(こちらは専門店であればもらえます)



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