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兄弟


           *


 朝。ノクタール国の第一王子、チンゴックは部屋のベッドで目を覚ました。


「ううっ……」


 昨日は飲みすぎて、頭が多少ガンガンする。ふと、隣を見ると、そこには名前も知らない裸の娼婦が寝ていた。


「……」


 こんな顔だったっけ、と胸を一揉みだけし、それから起き上がって雑に蹴る。


「おら、起きろ……おら!」

「きゃ! ったい!」

「帰れ、クソブス」


 そう言い捨てると、女は信じられないような表情を浮かべて吠える。


「なっ……なんだってのよ! 失礼にもほどがあるでしょう!?」

「失礼? 俺はノクタール国の次期王だぜ? お前みたいな下賎な女など、どう扱ったって構いやしないんだよ」

「さ、さいってぇ!」

「呪うなら、生まれを呪うんだな」


 唾を吐き捨て、もう一度強く、女のみぞおちを蹴ってベッドから落とした。女は痛がりながらも起き上がって反撃しようとするが、屈強な兵たちによって阻まれる。


 その間で、数名のメイドたちが彼に駆け寄り、次々と服を脱がし、着替えさせる。そんな中、執事がチンゴックに駆け寄り、深々とお辞儀をする。


「おはようございます。王から呼び出しを受けております」

「あ? 面倒だな」


 欠伸をしながら、髪をガサツになでる。鏡の自分を見ながら、いろいろな表情を試す。最近は体重が100キロを超えてきた。腹の出っ張りがどうにも気になるが、それでも自分の顔は変わらず凛々しい。


 やがて、それに飽きると、ギュウギュウな身体にズボンを履かそうとしていたメイドを雑に蹴る。


「いつまでチンタラやってんだ! 遅えんだよ!」

「きゃ! し、失礼しました」


 蹴り飛ばされたメイドが、慌てて謝る。


「ちっ……使えねえ」


 そう言い捨て、部屋を出て玉座の間に向かう。すると、廊下で、小太りで卑屈そうな男が、嬉しそうにチンゴックに近づいてきた。


「兄さん」

「オナルン。お前も呼び出されたのか?」

「ええ。なんでしょうね?」

「さあな」

「……そろそろなんじゃないですか? 兄上が王になられるのも」


 そう言いと、チンゴックはまんざらでもなさそうな表情で笑みを浮かべる。


「ふっ……まあ、今の状況だと、父上の手には余るか。しかし、貧乏くじ引いちまうな」


 自信はある。父親のマラデカは息子から見ても、どうにも頼りない。実際、家臣たちからも早く王になって欲しいと言われるし、年齢的にも、そろそろだろう。オナルンは嬉しそうに、言葉を続ける。


「戦場には兄上のような勇猛な王が必要なんですよ」

「クク……そう言えば、あの臆病者の穀潰しは呼ばれたないようだが?」

「あははは! 呼ばれる訳ないじゃないですか、あんなクズ」

「ク、ククク。ああ、すまない。冗談でも酷すぎた」


 チンゴックとオナルンは互いに顔を見合わせて笑う。この2人が子どもの頃から、ジオスはお気に入りの玩具おもちゃだ。


「俺が王になったら、もっともーっと遊んでやらなければな」

「そうしましょう、そうしましょう」

「ほーんとに、使えないゴミだからな」

「ええ、本当に本当に」


 ジオスは、昔からなにをやらせてもグズでのろまだった。それに引き換え、自分たちはなんでもできた。なんで、自分たちのような高貴な生まれにも関わらず、こんな無能が生まれたのか。


 それは、母親の血が下賎であったからだ。


 チンゴックとオナルンは正室のインラインから。そして、ジオスは側室のゼルーサという下賎な女から生まれた。一見、外見がわがいいように見えるが、大事なのは内面なかみだ。


「兄上が王になったら、あの売女も、追放しなくてはいけませんね」

「ああ、任せておけ。その前に、奴隷にでもして十分に遊んだ後だがな」


 そう言いながら、玉座の間に入った。


「父う……な、なぜ……お前っ」

























「控えろ。王の御前だ」

「……っ」

 


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