結果
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「という訳でして……あの」
「でひょ……でひょでひょでひょ」
ベテラン女性の部下が説明する報告を聞きながら、第3秘書官のブュギョーナは不気味な声で、ほくそ笑みまくっていた。ヘーゼン陣営が皇位継承権第2位デリクトール皇子に対して必死の接触を試みているからだ。
まさか、我がエヴィエルダース皇太子の陣営に働きかけているとは思わず、生涯の屈辱を喫する羽目になったが、その分こちらの根回しは完璧なものとなった。
ブュギョーナは、いち早くヘーゼン陣営の人間関係を収集し、繋がりそうな人脈をすべて刈り取っていたのだ。
エヴィルダース派閥秘書官の権力は圧倒的だ。部下は最下位でも数十人。ブュギョーナほどの上級秘書官ともなれば、下に数百人ほどの部下がつく。
それに加え、ゴスロ家の人脈と影響力を使えば、低爵位の貴族であるヘーゼンの動きなど封じるのは容易だ。
懸念したのは、ドネア家の動きだったが、こちらは令嬢であるエマ単独の動きで、表だってヘーゼンを支援してはいないことが判明した。
当然の判断だ。当主のヴォルトは皇帝派の筆頭。心情はどうであれ、今の情勢でエヴィルダース陣営を敵に回すことなど、皇帝にとって益のないことだ。
そんな中。若い女性の部下が報告にくる。
「ブュギョーナ様の読み通り、ドクトリン領のダゴル領主との接触を図ってきました」
「やはり……そのツテを頼ってきたか。潰したか?」
「はい。それとなく賄賂めいたものも持ちかけてきたようですが、突き返したそうです」
「……っ」
必死。
保身に必死じゃん。
「でひょ……でひょでひょでひょ! でひょでひょでひょでひょでひょでひょでひょでひょでひょでひょでひょでひょ――――――ん!」
笑いが止まらない。
「はひょ……あ、浅ましいな。でひょ……はひょでひょ……意気揚々と我が派閥の誘いを断っておきながら、でひょ……でひょでひょでひょ! ではひょでひょではひょでひ……」
嬉しすぎる……もう嬉しすぎて笑いと涙が止まらない。この鮮やかな手際。目の前の部下も、尊敬の眼差しを浮かべている。
「あ、でだ! 人事の話は進んでいるか?」
「は、はい。おおよそ、同格のポジションであれば、ブュギョーナ様のお好きにできます」
「はっっひょぉ……」
嬉しい。完璧に根回しが決まった。ヘーゼンと言う愚か者は、権力というものを甘く見た。その報いは、ヤツとその母親に受けてもらう。
「はひょ……ふんふんふんふんふんふんふん! ふんふんふんふんふんふんふん! ふんふんふんふんふんふんふん!」
ブュギョーナは何度も何度も腰を振り、エアでまだ見ぬヘーゼンの母親を犯す。犯して犯して犯して犯して犯しつくす。
所詮は格が違うのだ。
「……うぷっ」
「あ、どうした? 体調でも悪いのか?」
「は、はい。朝から少し吐き気がして……うぷっ……も、申し訳ありません」
「そうか。無理をさせたからな。もう、上がっていいぞ? 体調管理も上官の仕事だからな」
「は、はい。ありがとうございま……うぷっ、し、失礼」
若い女性の部下は、吐き気を我慢しながら、逃げるように去って行った。
「……可哀想に」
ボソッと別のベテラン女性部下がつぶやく。まあ、女性ならではの悩みもあるのだろう。そこらへん、ブュギョーナは理解していた。
「それで、ヘーゼン=ハイムの役職候補がこちらになります」
「おおおお、いいのがいーっぱい!」
出された書類は、地方の閑職が目白押し。地位だけが保証されて、末代まで目立ちようもないほど酷いものだ。
「あ、しかし、こんなのじゃ全然気が済まないな。もっともっともーっと、過酷で厳しくて、絶対に生きていけないものがいいな」
ヘーゼンの死体を前にして、泣き尽くしている母親を犯す。葬式の前で、公衆の面前で犯し尽くす。
いや、むしゃぶり尽くす。
「……では、こんなのはどうでしょう」
ベテランの女性部下は、1枚の紙を手渡す。
「……」
「……」
・・・
「はひょおん! ふんふんふんふんふんふんふん! ふんふんふんふんふんふんふん! ふんふんふんふんふんふんふん!」
「……っ」
ブュギョーナは興奮し、何度も何度も腰を振り、まだ見ぬヘーゼンの母親を、エアで犯しつくす。犯して犯して犯し尽くす。
「お、お気に召しましたか?」
「あ、はぁ……あ、はぁ……いいぞぉ! いいぞぉ!」
これであれば、絶対に死ぬ。間違いなく、生きて帰ることはない。
プュギョーナはガシッと熟年女性部下の肩を掴み、顔を近づけて褒め称える。
「あ、よくやった……よくやったぞぉ!」
「……っ」
「……うぷっ」
「あ、どうした? 気分でも悪いのか?」




