殺意
その場にいる、誰もが言葉を失った。
帝国の中枢を牛耳る派閥の第3秘書官が、あろうことか、『自分の悪口言われたから、帰ってきた』と言い出した。
ガキの使いじゃないんだから。
「「「「「「「「「……っ」」」」」」」」」
笑える。
しかし、誰も笑えない。
ブュギョーナは第3秘書官。この中での序列は高く、自尊心も高い。笑えば、ネチネチと、いつまでも粘着的に仕返しされる。絶対に笑う訳にはいかない。
そんな中。
「クク……クククハハハハハハハハ! ハハハハハハハハ、ハハハハ!」
「……でゅふ」
唯一爆笑したのは、そこにいるエヴィルダース皇太子だった。
そして。
「……ハハ……ハハハハハハハハ」
つられるように第1秘書官のグラッセが乾いた笑い声を浮かべる。
そして。
「ハハハハハハハ」「クハハハハハハハハハハハハ」「ハハハハハハハ」「ハハハハハハハ」「ハハハハハハハ」「ハハハハハハハ」「グハハハ、ハハハハッハハハ」「ハハハハハハハ」「ハハハハハハハ」「ッ……ハハハハハハハ、あー、おかしい」「ハハハハハハハ」「……ははあはあははは、ごめんなさい、あははは」「ハハハハハハハ」「ハハハハハハハ」
堰を切ったように、他の秘書官たちが笑い始める。
同調圧力。
エヴィルダース皇太子が笑い、筆頭秘書官のグラッセが笑ったのだから、これは笑うべきものだと秘書官たちが認識した結果だ。
中には、数人ほど真に受けて、本気で笑っている者もいたが、第1秘書官のグラッセを初め、他は若干ブュギョーナを気遣った、乾いた笑い声だった。
唯一、第2秘書官のアウラだけが苦笑いに留めた。
「……でゅっふ」
屈辱中の屈辱。絶対にぶち殺すと、ブュギョーナは心に誓った。そんな中、唯一心の底から笑っていたエヴィルダース皇太子が笑顔で話し始める。
「ははははは……あー、笑った。いや、すまないな、ブュギョーナ。まさか、これほど爵位の低い者が、君ほどの男を小馬鹿にするなど珍しかったものだから」
「……あ、し、しかし! 私が小馬鹿にされたと言うことは、我が陣営が小馬鹿にされたのと同義でーー」
「違うだろ?」
エヴィルダース皇太子が瞬時に冷たい声を出す。
「……でゅ、でゅふ?」
「君が小馬鹿にされたのは、あくまで君が小馬鹿にされただけであって、我の陣営がされたわけではない。そうだろう?」
「あ……あ、はい。失礼しました。その通りです。馬鹿にされたのは偏に私であって、エヴィルダース皇太子殿下とは、なんら関係のないことでございます!」
ブュギョーナは全力で土下座した。そうだった。エヴィルダース皇太子は面子を非常に重んじる。低爵位の者に自分がバカにされたなんてこと自体、あってはならないことなのだ。
「しかし、ブュギョーナ。非常に大事な我の秘書官個人を小馬鹿にするなど、許されないことだ。まあ、残念ではあるが、人材は他にもいる。この男の登用はあきらめることとしようか」
「は、はい! もったいなきお言葉」
額に地を擦り付けながら叫ぶ。
そして。
会合後、ブュギョーナは、ブチブチとつぶやきながら廊下を闊歩した。
「あ、ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す。ぶち殺す」




