ポマセア・カナリクラータの臓物
今夜は水気が強い・・
ラテン語で書かれた
ペルペトゥアのテキストが
湿り気を帯びている。
諸君、ご存じだろうか?
それらは沼地からやって来るのだ・・
真菌を含んだ大気・・
屍穢を纏った温度・・
刈り取られた
葦から滲み出る黒い液体・・
悲し気な獣の咆哮・・
抗原性糖タンパク質を含んだ
球状の肉が均等に配置された荒野で、
我々は衣服を着けずに歩き、
錆びた釘と破傷風に怯えながら
王国の門を探す。
ああ、
罪という宿痾の
外科医であるキリストよ。
教えてくれ。
夜の葦の心臓に
カテーテル手術を施し、
世界に蔓延るこの惨めさを
取り除く事は可能なのだろうか?
主よ。
貴方は、この世界の蛆湧く虚栄と、
人間の強欲と、
世界の物質循環による均衡の中に
ホモロジーを見出し、
魂の中心に墓標を立て、
下賤な瘀血を治療した。
私は道を歩くだけで
それらを見る事が出来る。
まだ若い沼地の巻貝
ポマセア・カナリクラータの臓物の
致命的で不可逆的な損失・・
夜の街灯に集まる
膜翅目と双翅目の共演・・
沢山の恥辱の靠旗を背負った魂・・
(ああ、我々の魂・・)
だが、
それが終焉なのだろうか?
キリストよ・・
魂の外科医よ。
肉体の卑賤から
死への飲食作用に飲み込まれ、
高挙へと脱殻し、
魂はやがて地上の素材から
再び器を作るのなら、
病とは創造であり、
命とは殺戮であり、
我々は宇宙の癌であり、
破滅とは生命の果実なのだ。
この世界で繰り返される
エントロピーによる遷移は、
巻貝の臓物の不可逆的な損失から、
厨房にぶら下げられた
腸抜き肉を通過し、
壮大な復活祭へと続いている・・
ああ、
それは悲し気な
内臓の埋葬であり、
糸状菌を纏ったペルペトゥアのテキストであり、
そんな、彼の外科医の記すカルテの文字は、
一介の患者である我々が
永遠に知るべき事ではない・・