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通りに面した様々なお店に並ぶ、見たこともない商品が、好奇心をくすぐる。
動物の顔をした人間と、普通の人間が談笑しながら歩いて行く姿が、和やかな雰囲気を感じさせる。
反対車線を通り過ぎる、幌のない旅客馬車が、綺麗に着飾った客を乗せて遠ざかるので、つい目で追ってしまう。
こんな風に、異世界に心を奪われ、車窓から外を飽きずに眺める私を、ヘラルドたちはどう見ているのだろうか。
ふと、視線を車内へ移すと、彼らはずっと下を向いたままだ。
まるで、次の出番まで待機しているかのように。
ここで彼らに話しかけると、イベントでも起きるのかと思ったが、変なフラグでも立つとイヤなので、このままにしておく。
時の流れに身を任せる私を乗せて、馬車がゆっくりと左折すると、今度は全く違う景色が見えてきた。
黒光りする鉄製の高い縦格子のフェンス。
棒の先端は、槍のように尖っている。
格子の隙間から見える、きれいに刈り込まれた芝生、手入れが行き届いた花壇。
広々とした敷地の奥には、横長で二階建ての、どっしりとした石造りの屋敷。
今まで目に焼き付けてきた、庶民の世界とは、遠くかけ離れた世界が目の前に広がる。
ここは、貴族の住まう区画なのだろう。
馬車が進むにつれ、このような大きな屋敷と広大な敷地が次々と現れる。
庶民の生活の息吹など、何も感じられない。
道を行き交う人の姿は皆無で、人間はというと、たまに庭師が花壇を手入れしているのを見かける程度。それも、みんな、猫耳の人物だ。
そうだ、表札はないか、と見てみたが、左右の門柱の真ん中に、獅子みたいな動物やアラベスク模様をあしらったレリーフがある。
家々の門柱でデザインが違うので、家紋みたいなものなのだろう。
しばらくすると、馬車が減速して停止した。




