2-2
カーブを曲がると、裏道の先にある景色が広がり、三階建ての木造建築や、左右に行き交う人々の姿が見えてきた。
想像以上に人出が多く、人間以外に、犬や猫やイノシシの顔をした人もいる。
ああ、ここは異世界だぁと、改めて実感。
山高帽に濃紺や黒の背広姿で、ステッキ片手に悠々と歩くのは、紳士だろう。
その横を、傘を持って歩く淑女は、私のドレスよりも簡素だが、様々な色のロングドレスを着ている。
彼らと距離を置いて歩く、質素な民族衣装を着た人々は、紳士や淑女より身分が低い人たちなのだろうか。
買い物の途中らしく、たいていの人は、荷物を両手で抱えていたり背負っていたりしている。
ヘラルドに案内されて、乗り込んだ馬車は、所々金色の装飾を施した濃茶色の車を、一頭の馬が引くタイプで、二人掛けの座席が向かい合わせになっている。
御者は、猫の顔をした白い毛並みの男性で、金糸を縫い込んだ服を着ていた。いかにも、貴族の召し使いって感じ。
他の馬車を見ると、装飾がない物ばかりだ。豪華な馬車、イコール、貴族の乗り物なのだろう。
実際、道行く人々の視線を、たくさん集めている。
貴族様が、こんなところで何をしているのだろうと、言いたげな顔、顔、顔が、こちらを向いていて、私は見世物じゃないと言いたくなる。
でも、この貴族の馬車の中は、外の豪奢な作りとは関係なく、意外と狭い。
ヘラルドに勧められた座席は、進行方向を向いた右奥。タクシーの上座と同じだ。
私はニーナと向かい合わせになり、左横にカレンが座ったが、二人とも、私の周りに極力空間を作ろうとして縮こまっていた。
私たちを乗せた馬車は、滑るように発車した。
意外にも、揺れが少ないのに、驚く。
石畳の上を走るから、もっとガタガタ言うかと思っていた。
最初、「次は何の情報を引き出そうか」と考えていた私だったが、後方へゆっくりと流れていく外の景色に気を取られてしまい、子供が窓の外を夢中で眺めるように、ずっと外を見ていた。