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1-5

 フレイヤが、身振り手振りを交えて、ゲームの解説を始めた。


「あなたは、このゲームの世界では、大金持ちの貴族の令嬢。衣食住に何一つ不自由しない身分で、身の回りのことは全て、お付きの人がやってくれるわ」

「貴族生活を楽しむゲームなのですか?」

「違うわ」

「じゃあ、何のゲームで、何をクリアすればいいのか、教えてください。ルールとかも」

「それは、やりながら覚えて」

「OJTみたいな言い方では困ります。ルールが分からないと――」


 OJT――On The Job Trainingって、放置されることがあるらしい。大手企業に就職した先輩が、そんなことを言っていた気がする。


「じゃあね。頑張って」


 微笑むフレイヤは、煙のように消えた。


「ちょっと! ん、もー」


 それにしても、貴族の令嬢という立場だけ説明され、何をすればいいのか、ルールもゴールも分からないという、(ひど)いゲームに巻き込まれたものだ。


 さて、これからどうしようかと思っていると、前方のカーブを曲がってこちらへ走ってくる老執事と2名の若いメイドの姿が見えてきた。

 何となく、ビクトリア朝時代の執事とメイドという雰囲気だ。彼らが、私のお付きの人なのだろうか。


「クララお嬢様! こちらでしたか!」


 老執事が、しわがれ声で私を呼ぶ。どうやら、私の名前はクララという設定らしい。

 それにしても、なぜ、ここにいることが分かったのだろう?


 私がキョトンとしていると、


「さあ、今すぐ、お屋敷へお戻りください! エドワード様がお待ちです!」

「エドワード? 誰?」


 心の声が、つい、言葉になってしまった。これには、老執事もメイドも同時に目を丸くする。


 令嬢なので、ここは「どなたですの?」と言うべきだったかも。なので、言い直し。


「どなたですの、そのエドワード様って?」

「何を(おつしや)います? お嬢様の婚約者です。今日、指輪の交換の儀式があるのです」

「何ですの、それ?」


 また、三人が同時に目を丸くする。


「気が乗らないというお気持ちは、分からないでもないですが、お嬢様にとって大切な儀式ですので――」

「聞いていませんわ」


 これは事実です。


「とにかく、お戻りください!」


 真っ赤な顔になった老執事の血圧が心配なので、渋々、彼の指示に従うことにした。


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