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「それより、クロノスって言う人が作った時空の裂け目って、何なのですか?」
「ああ、それはね」
女神フレイヤは、時空神クロノスの実験を解説し、それが原因で今回の事象が起きたのだと説明した。さらに、訊いてもいないのに、今立っている場所がショーカーン王国の首都イーラハーイであることと、王国について簡単だが説明してくれた。
ザックリ言うと、西洋の中世っぽい世界らしい。しかも、魔法が使える世界。
「なるほど。私は、剣と魔法の世界に転移したのですね。ラノベ好きの知り合いから聞かされていましたから、何となくイメージはつかめます」
「ところどころ分からない言葉があるけれど、ある程度は理解してもらえたようね」
そうでした。ラノベとかイメージとか、ついつい、口にしてしまったけれど、通じないのね。
「すみません。難しい言葉を使ってしまって」
「そう言えば、あなた――」
「はい?」
「私に魅了されないのかしら?」
フレイヤが小首を傾げて微笑む。
「魅了? もちろん、とてもお美しい神様だと思いますが」
「その程度?」
もっと容姿を褒めて欲しいのだろうか?
「あなた。不思議よね?」
「伏木です」
「そうじゃなくって、私に心を奪われなくて、不思議よねって」
それ、自惚れ過ぎませんか?
「…………」
「うーん。あなた、実に面白いわ」
ニコニコする女神。
「じゃあ、私の作った気晴らしのゲームに参加しない?」
「え? 参加って?」
「テスターよ」
「その言葉、こっちの世界にもあるんですか?」
急に話が飛ぶし、異世界にも同じ横文字があって、目を白黒させる私。
「その格好、この世界では奇異な格好なので、お着替えしてもらうわ」
フレイヤは、そう言って、私に向かって右手を突き出すと、辺りが光の粒に包まれ、眩しくて目を開けていられなくなった。