2-9
「片手の剣法でも編み出したのですか?」
「というか、このドレスを着ていると、お腹が締め付けられて、力が入りにくいので」
嘘である。
本当は、普段のクララの構えを知らないから。
この、後から取って付けた言い訳に、エドワードは目を見開き、肩をすくめる。
「参りました。こんなに強いとは思ってもみませんでした。完敗です」
「はあ……」
「私では、不釣り合いですね」
悲しそうな顔をした彼が、肩をすくめて、私に背を向ける。
そうして、がっくりとうなだれ、その場にしゃがみ込み、頭を抱えた。
「ああ……。無理だ。婚約なんて……」
嘆き悲しむエドワードの声が聞こえてきたかと思うと、急に景色が歪み始めた。
手にしていた木剣が、煙のように消える。
周りにいた執事たちが、背景とともに、滲んでいく。
え? 何が起きているの?
呆然とする私は、軽いめまいに襲われて、血の気が引いた。
数秒後、景色が一変し、裏通りの光景が現れた。
この異世界へ初めてやって来た時に見た場所だ。
ってことは、スタート地点に飛ばされた?
瞬間移動に驚いていた私は、背後に人の気配を感じたので振り返る。
すると、白い一枚布を纏った、背の高い美女が微笑んでいた。
金色の目をした、絶世の美女――女神フレイヤだ。
「あらあら。いきなり、ゲームオーバーね」
「――――」
「彼、婚約破棄を決意したわ」
ゲームマスターのこの言い方だと、婚約がゲームのクリア条件だったようだ。
「なら、あそこで私が負けて、エドワードを立てれば良かったのですか?」
女神は、フフンと笑う。
「そうとも限らないわよ」




