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2-8

 私が片手で、たった一振りしただけなのに、こうも簡単に木剣が空を飛ぶとは、信じられなかった。

 放物線を描いて芝生の上に落下した木剣が、小さく弾むのを見届けた後、正面に目をやると、左手で右手を握りしめるエドワードは、相当しびれるのか、顔が少し歪んでいる。


 一方、私の方は、右手に少し衝撃が伝わっているが、しびれるほどではない。

 興奮していると痛みを感じないことがあるが、そうではなさそうだ。


「驚きました。あの構えで、振り下ろした剣を払えるのですか?」


 それは、私が聞きたい。


 彼が少々手加減したとしても、木剣は男性の力で振り下ろされたのだから、私がかなうはずがないのだ。

 しかし、現実は、見ての通り。

 まるで、私は剣の達人、エドワードは初心者の(てい)


 あり得ない。


 異世界に来て、私は勇者の力を得たのだろうか?

 これが、いわゆる、チートってやつ?

 などと、首を傾げていると、


「もう一度、お相手願えますか?」

「……え、ええ」


 苦笑する彼は、木剣を拾いに行くが、かがんだ姿がなんとも惨めで、かわいそうになる。

 無理もない。

 執事たちの見ている前で、赤っ恥をかいたようなものだから。


「では、もう一度」

「はい」


 エドワードは、木剣を後ろに大きく振りかぶったまま、突進してきた。

 なんだか、顔が怖い。よくも恥をかかせたなって、目が言っている。

 でも――、


 コーン!


 今度は、木剣が回転しながら、左方向へ飛んでいく。

 彼が、私から見て左から右に向かって、横薙ぎに木剣を振ってきたので、右から左へ片手で払っただけ。

 なのに、おもちゃの剣のように、むなしく飛んでいく。


「もう一回」

「はい」


 これが、三回続いた。

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