2-7
左足を前に踏み込んで、木剣をまっすぐ上に構えたエドワードは、目を丸くした。
「その構え……。初めて見る構えですが」
「――――」
「もしや、僕に、新たな剣術をお披露目してくれるのでしょうか?」
素人の構えを見抜かれたのだろうか。
新たな剣術なんて、皮肉っぽい言い方は、そうに違いない。
私は、両腕を斜め下に開き、木剣の切っ先は斜め下を向けている。相手から見れば、漢字の「木」みたいな格好だ。
なじみのVRゲームなら、この格好で、魔物に向かって走り寄り、剣を斜め上に切り上げたり、横薙ぎにしたり、とどめは真上から振り下ろしたり。
でも、今はドレスを着ているので、動きたくないから、相手が斬りかかってきたら、剣を払ってやろうと思っていたところ。
「この格好なので、いつもと変えてみました」
「なるほど。では、お手並み拝見させていただきます」
普段のクララがどんな剣さばきなのか知らないので、「いつもと変えてみた」とテキトーに答えるしかないのだが、これでエドワードは納得した様子。
彼は真剣な顔になり、木剣を上に上げたまま、駆け寄ってきた。
この体勢なら、私から見て、剣を左上から右下に向かって振り下ろすだろう。
だったら、剣を振り上げてみよう。
「ハッ!」
エドワードが、かけ声と同時に剣を斜めに振り下ろした。
手加減しているのか、緩い感じで、剣が軌道を描く。
私は、予定通りに、剣を斜め上に振り上げると――、
コーン!
木の乾いた音が鳴り響き、エドワードの木剣は、青空に向かって、くるくると回転しながら上昇した。




