2-6
なるほど。私は、どこかの学園に通っていて、剣術が上手な女生徒という設定らしい。
勇姿と言うからには、女剣士並みに強いのか。
このゲームを作った女神フレイヤが、ストーリーも設定も説明してくれていないので、登場人物の言葉や、周りの状況から把握していく必要があるが、情報を入手してから、それに合わせて話をしなければいけないので、結構きつい。
まずは、自分がどの程度強いのかの情報収集から。
「あんな恥ずかしい姿を、ここでご覧に入れるのは――」
「とんでもない。学年一の成績を収めた方が、ご謙遜を」
それは、かなり強そう。
私のレベルを無視した設定ですけど。
なんて言葉を返そうかと思っていると、玄関の扉が開いて、執事服を着た二人の若い男が木剣を持って現れた。
形は、幅が広い剣。確か、ブロードソードとかいうやつ。
木製とはいえ、なんだか、格好いい。
二人は、私とエドワードへ、一礼して、木剣をうやうやしく渡すと、すすっと下がっていった。
でも、私の今の格好って……。
「ちょっと、ヘラルド」
「はい、お嬢様」
「ドレスを着たまま、ここで手合わせをやる私を見て、なんとも思わないのかしら?」
「はい。いつものことでございますから」
私は、めまいで倒れそうになった。
クララは、ドレスを着たまま、剣を振るう人物で通っているらしい。
まあ、確かに、ゲームで、ドレス姿の可愛いキャラが、剣で戦っていることがありますが。
でも、絶対、動きにくいって、この格好。
今ちょっとスカートを中から足で蹴ってみたのでわかるけれど、めっちゃ大変よ。
観ている人は、格好いい、憧れる、萌えーって思っているでしょうが。
制服のスカートが、アニメとかで、紙みたいにヒラヒラ舞っているけれど、実際の生地は厚いの。重いの。
このドレスだって、生地は厚いし、制服の何倍も重いし。
「さあ、クララ様。手加減無用です」
「…………」
いきなり、絶体絶命に追い込まれた気分。
心臓バクバク。
ええい、どうにでもなれ!
私は、木剣を構えた。いつもやっていた、VRゲームのキャラのように。




