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絶望のバスチーユ04


「なるほど……」


 十二回目の金曜日の昼休み。


 僕とアハト先輩は学食にいた。


 朝の……昇降口でアハト先輩を見つけて、恋に落ちて、告白して、そしてアハト先輩に受け入れてもらっている。


 アハト先輩は泣きながら僕の告白を受けてくれたのだ。


 そしてはれて恋人同士になった僕とアハト先輩は、四月朔日や百目鬼を放っておいて学食で食事を共にしている。


「スーパーパワー……ですか。にわかには信じがたいですけど……」


 焼き魚定食を食べながらアハト先輩。


「ですが……なるほど……その可能性には至りませんでした……」


 ふぅむと唸る。


「たしかに十一回も私が死んだとして、それが他意に因るものだというのは在りえない話ではありませんね……」


 先輩は感心したようだった。


「いえ、むしろ運命論よりは信憑性はあるかと……」


「僕もそう思います……」


 同意する僕。


「仮にそうだとするなら……」


 焼き魚を食べながらアハト先輩は言う。


「それが誰なのかを見極めなければいけませんね」


「先輩の死を望んでいる人を探す……ってことですか?」


「はいな」


 頷くアハト先輩だった。


「でも……」


 僕はキョロキョロと視線を彷徨わせる。


 学食において僕を見る学生達の視線は……羨望と憤怒と嫉妬によって構成されるものであった。


 誰もの視線が言う。


「なんであんな奴がアハトと……」


 と。


 僕が恨まれるならともかく……、


「先輩が恨まれることなんて無いと思いますけど……」


 僕はそう結論付けた。


 しかして、


「そんなことはないです」


 アハト先輩は僕の言を否定する。


 …………。


「なにゆえ?」


 問う僕に、


「だって九十九は魅力的な男の子ですもの」


 答えになっていない答えを口にするアハト先輩だった。


 いやいや……。


「そんなことあるわけないじゃないですか……。なにせ僕は、恋人いない歴イコール年齢ですから」


 四月朔日のように可愛らしくない。


 百目鬼のように格好良くない。


 誰かに惚れられる要素が無い。


 だから、


「その線はありませんね」


 僕は断言した。


「そうですかね~?」


 からかうようにアハト先輩。


「少なくとも私にとって九十九は魅力的な男の子ですよ?」


「蓼食う虫も好き好きって言葉がありますね」


 カモ蕎麦をすすりながら僕。


「私が偏食だと?」


「だって……なんで先輩が僕に惚れてくれるのか僕にはわからない……」


「九十九の愛が真摯だからですよ」


 そう言ってアハト先輩はニッコリと笑う。


「…………」


 僕にとって先輩は十二回目の告白の相手ではあるけど、先輩にとって僕は初めて告白された相手のはずだ。


 どこに僕を信用する要素がある?


 僕は顎に片手を添えて、


「ふむ……」


 と唸ってみる。


 考えの纏まらない僕に向かって、


「こんな真摯に私を想ってくれる九十九を私が愛さないはずがありません。聞いた話では九十九は私を十一回も助けようとしてくれたんでしょう?」


 アハト先輩は、


「それだけでも私にとっては嬉しいことなんです」


 そんな言葉を紡ぐ。


「すみません……話が逸れてますね……。少なくとも先輩以外の人間は僕を過小評価していますよ?」


「歯がゆいですね」


 唸るアハト先輩。


「それより先輩が嫉妬を買っているという方がまだしも理解できますが」


「私が嫉妬……されている……?」


「はいな」


 僕は頷く。


「先輩はおモテになりますから。誰か女子から嫉妬を買うこともあるんじゃないかな~……なんて」


「そんなことで私を殺そうとする意志が存在するんですか?」


「それを言うなら僕の慕情に納得せずに先輩を殺そうとする意志の方が存在しがたいと思うんですけど……」


「そんなものでしょうか?」


 とぼけるようなアハト先輩の言に、


「そんなものです」


 僕はしっかと頷く。


「でもそうすると容疑者はトレーズ学園の女生徒全般ということになりませんか?」


「…………」


 沈黙する僕。


「それは……」


 考えてもいなかった。


「一人一人殺していきましょうか?」


「いや……それはさすがに……無茶じゃないですか?」


「ですけど……そうしないと私が死ぬんじゃないんですか?」


「それはそうですけど……仮に当たりを引いて僕がリセット現象を取り止めたら先輩が犯罪者になってしまいますよ?」


「少年法が適用されるから大丈夫ですよ」


 それ……大丈夫とは言いません。


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