一日目 夜の2
白、白、白、
ただ、白だけが目の前に広がっている。俺の脳内のニューロンとシナプスが悲鳴を上げているのか?こりゃあ俺死んだな。
「おい……」
答えるもの等、いるはずもないのに、
「神様、仏様、いるのか?いるのなら答えろ、俺はこんな人生の結末を認めないぞ!!」
俺は問いただしたかった。世界を統べる上位の存在共に出来るのならば復讐したかった。そして……
「落ち着いて、白木起継君。君はまだ死んでいない」
不思議と答える奴はいるものだ。黒い丸が白一色の空間に現れ、一人の男の像を成す。ツンツンした蒼い頭髪の下には相応に整った、美青年と認めざるを得ない顔があり、その蒼く冷たい双眸が俺を見つめる。
「神様……なのか?これは……」
おお、読めたぞ。最近ラノベやアニメで増えてきたパターンだ。異世界転生ってったか、多分それをいまわの際に死にかけた俺の脳が投影しているんだろう。
「君の生存をもって、この世界はボクらの世界からは切り離された。君の思った通り、君は異世界へ転生することになる」
こいつ、人の考えを読みやがったな……って俺の脳が走馬燈のように像を成しているとすれば当然か。
「しかし妙な走馬燈だな。ふつうこういう時、過去の記憶とかがフラッシュバック的に過るんじゃないのか?」
「疑り深いねえ、君は」
「悪かったな……ってことは、神様、本当に俺を異世界に転生させるつもりか?」
にわかには信じられなかった。だがそうしてくれるのならば渡りに船だ。
「勿論、こんな人生の結末認めないんだろう?あとボクのことは先生か博士と呼びたまえ」
あっけらかんと神様、いや博士は答える。そういえばこの人、白衣を着てるわ。
「さて、もうちょっと話しておきたいことがあるが、残念ながら君の眼覚めまでもう時間がない」
ちょっと、説明不足過ぎるぞ!?転生お約束のチート能力とかは!?
「君達が、この世界を『未来』として見ないことを祈るよ。どうか『修正力』に打ち勝ってくれ」
待ちたまえ、俺にチート能力を授けるまでは待ちたまえ。だが願いもむなしく、博士は元の黒い玉となってフェードアウトしていった。
再び、白一色となった世界。広がっていく白は、やがて俺をも包み込んでいく……
*ニューロン 神経細胞。
*シナプス ニューロン同士を繋ぐ接合部位・構造で、ニューロン間の情報伝達を化学物質や電流を通して行う。神経系はこの両者で構成されている。
*神様、仏様 都合のいい時には手助けをしてくれない者。
*異世界転生 このサイトにいる方に説明は不要だろう。