彼女を取り戻す為に
ハルカがさらわれたと知ったラインバルトとイブシェード。二人は彼女を救う為に駆け回ります。
「まさかハルカちゃんがさらわれるなんて……! いや、確かに美人の娘さんだからやられかねないとは思っていたが……!! ちくしょう!! 俺がついていてやれば良かったんだっっ!!」
地面を叩きながら、ラインバルトは悔恨の叫びを放つ。
「すまねぇあんた……俺達も相手があのドーマ海賊団じゃなきゃあ救いには行ったんだが……」
慰めるように喋りかける船乗り達。
「いや……仕方ねぇさ……。あの人でなし共に挑めなんか俺には言えねぇよ……」
ラインバルトはゆっくりとかぶりを振って相手の罪悪感を解す。
「しかし放ってもおけませんね……。
ラインバルトさん! 今すぐユウキさんのお店に戻りましょう!!」
イブシェードはラインバルトの肩を叩いて促す。
「どうしてだ?!」
「理由は後で話します!!」
駆け出すイブシェードに、ラインバルトも走って着いて行った。
◇◇◇
「臨時休業……? 一足遅かったみたいですね」
何でも屋の前に立ち扉に掛けられた看板を見て。イブシェードは荒い息を直しつつ嘆息した。
「なぁ兄ちゃん……どうしてオニヘビの店に……来たんだ……?」
ぜーぜーと肩で息をしながら尋ねるラインバルト。
「……このユウキさんの何でも屋は、奴隷の人身売買もやっているのですよ」
「は?! あいつら人を売っているのか!?」
ラインバルトは絶叫した。
「えぇ。彼らには彼らの理由があるのですが……今は置いておきましょう。とにかく、ユウキさんのお店はこの地域で一番の権力を持っている奴隷商売の業者ですから……ここに最初の情報が流れていると踏んだんですよ」
……ですが一足、遅かったらしいですと。イブシェードは苦々しく歯噛みした。
「せめて彼の足取りか、ドーマ海賊団のアジトでも判れば良いのですが……。
? あれは――」
イブシェードが双眸を細めた先、店の窓辺にそいつはいた。
「ぐけけ、ぐけけけけっっ!」
奇妙な鳴き声の、気色悪い烏が。
「チャムチャックボンバービングリンド? お前チャムチャックじゃないか!」
イブシェードが――多分、その烏の名前なんだろう、何か嫌な名前だが――を叫んだ。
「兄ちゃん、こいつは?」
とにかく名前は無視して、ラインバルトはイブシェードにこの烏が何なのか尋ねる。
「ユウキさんの連絡員の烏ですよ。ちょうどいい。チャムチャックならユウキさんの居場所を知っているはずだ! チャムチャック!! ユウキさんの所に案内してくれ!!」
「ぐけけけけっっ!」
イブシェードの頼みを承けて、チャムチャックは飛び立った。
「ラインバルトさん! 行きますよ!!」
再度駆け出すイブシェードに、
「ま、待ってくれ兄ちゃん!」
ラインバルトも何とか追いすがってゆくのだった。
人身売買にはちゃんと理由があるのです。