謎の影を追って
別れてすぐに自分の事を後悔するラインバルト。
そんなラインバルトに変な影が見つかります。
彼女と別れてちょっとして。ラインバルトは路地裏を早足で歩きながら後悔していた。彼女のお願いにまともに答えなかった事、意図的に彼女から離れてしまった事が、彼に忸怩たる気持ちを湧かせていたのだ。
(有り体に言って見た目も中身もかなり器量良しの娘さんなんだよな……)
そう。ハルカはかなり良く出来た娘さんなのだ。うちの漁村にいたら嫁に迎えたい奴らが後を絶たないだろう。俺みたいなしみったれのしがない漁師崩れなんかと一緒に居ていい理由なんかないのだ。あの娘にはあの娘の、目指すべき世界があるのだから……。ラインバルトはふとむず痒くなった眼を擦り何故か濡れていた事に気づく。
しかしあれだ。別れちまったのは失敗だったかな。ラインバルトは石壁の影から空を見上げて呻く。そう、二手に別れてハルカちゃんの兄貴の店を探す予定だったのだが……肝心の姿を自分が知らないのだ。これじゃ探すものも探せないし、本当に迂闊である。
(……らしくねぇな)
ラインバルトは嘆息した。本当に、らしくない。
……ふと、その時。『ナニか』が走っていった。
「あん?」
猫か? とラインバルトは目で追ったが……捉えきれなかった。普通ならどうでもいいのだが……今は少し、気になる。ちょっと追いかけてみた。
「確かあっちの奥だったな……」
ラインバルトはその影が曲がった方に向かってゆく。もっとも影がどんな物でどっちに行ったのかは知らないから……適当に当たりをつけるしかないのだが。
「あの角かな?」
ラインバルトは多分こっちだろうと直感で曲がる。
そしてその先に、その『店』を見つけたのだった。
ラインバルトも気晴らしに追いかけてしまいます。