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約束  作者: Giveup&up
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第8話『誘導』

公務員試験。

俺は、刑事になる将来を考えてみた。


人々の安全を守り、事件を解決できる。

俺にとって大切な約束ともリンクしている。


「受験資格は、、、年齢制限くらいで

中卒でも大丈夫そうかな、、、」


よく分からないが、受験可能だとしても

実際、刑事になれるかは別物だ。


問題集を読んでみたが、ちんぷんかんぷんだ。

何が何だか分からない。

そもそも問題を理解できないのに

解けるはずがない。


俺がこれを解けるようになるには

それなりの時間と労力がかかるだろう。

それに、仮に解けるようになっても

試験に合格できるかは別問題。


さらに、合格しても刑事になれるとは限らない。

刑事になったとしても

自分のやりたいことができるとは限らない。


そう考えると刑事を目指すことすら躊躇(ちゅうちょ)する。


俺は公務員試験の問題集を本棚に戻した。


ホントいつからこんなに、

将来が不安になったんだよ。

前に進むことが億劫(おっくう)になってしまったんだ。


計画より先に行動。

それが自分のモットーだと思っていた。

でも、今の俺は自分のことさえも

自分で決められない。

保険をかけてしまう。


自分の可能性を信じて、

そこに全額betする勇気。

今の俺にはそれがない。


自分の将来は自分で決めるべきだ。

親や教師や上司、いや社会全体は

我々の将来を誘導してくる。


厄介なのは彼ら自身が本気で

個人の意思を尊重していると

思い込んでいること。

誘導などしていないと本気で信じている。


そして、我々自身も

誘導などを受けていない

自分自身で決めていると

本気で思い込んでいる。


確かに俺達は

強制まではされてないだろう。

しかし間違いなく

強力な誘導を受けている。


判断に自由性が保たれているが、

その自由性が絶妙な隠れ蓑となり、

気づかない内に、

我々の選択は大きく誘導されている。


その誘導は洗脳になり、

自分の事がどこか他人事になる。

自分の将来を誰かに決めて欲しい

そんな気持ちにさえなっていく。


学校教育や就活や仕事。

社会にある多くの制度。

その全ての根幹には、国民への誘導。

ひいては洗脳がある。


ある強い力が、人間、

いや動物の持つ本能に作用する。

「防衛本能」を巧みに操作する。


まぁ、これはあくまで俺の考えなんだが。

社会の仕組みをそのように感じている。


しかし、

何もかも社会や他人のせいにしていては負ける。

負けじと努力することが必要だ。

なぜなら、社会に潜む強大な力を前にすると、

我々の微弱な力では対抗できず、

文句を言っても何も変わらないからだ。


自分の人生は自分で切り拓くものだ。

社会の根幹にある洗脳から目を醒ます。

その上で、

強く自分を信じて前に進んだ者のみが勝てる。


俺はそう考えているのに、まだ迷っている。

将来を何も決められない。

強く前に進めない。

それが愚かで情けない。


圧倒的な力が、、、欲しい。



そう考えていると、

俺の中に1つのひらめきが降ってきた。

自分の中で閉ざされたカギが1つ開いた感覚。


今回の線路落下未遂事件。

そして2年前の殺人事件。

この2つは、ある大きい力により

ミスリードされているはず。


それは、警察や検察、

そして司法やメディア、

国民までをも

嘲笑い、欺く力。


それほどの誘導力。

あるいはそれに似た何か。


それを社会や組織が有しているのではなく、

ある「個人」が有しているのだ。


つまり、その個人が真犯人であり、黒幕。


絶対に「捕まらない」という自信。

完全犯罪のために、力の悪用。


これは俺の妄想と思われるかもしれない。

しかし、俺の中で確信できるほどの閃きである。


真犯人の深層心理が掴めた。そう直感した。


2つの事件を解決するには、

その圧倒的な力に対抗できる圧倒的な力が

俺にも必要なことを悟った。


圧倒的な力。

それは例えば、経済力、発信力、

多くの人に好かれるカリスマ性、

誰にも負けない知恵と知識など、

何でも良い。


そして、力の使い方も大切。


俺にも武器が必要なんだ。

戦うための武器が。


そう考えて本屋から出ようとしたその時、

たまたま、店内である人を見掛けた。



佑樹(ユウキ)だ!



佑樹は高校の同級生。

高校の1年と2年で同じクラスだった。


2年前の事件当時も

現場となった教室にいた。


佑樹は学校の成績が良い訳ではない。

むしろ成績は悪かった。


もちろん、俺と同じ高校だし、

偏差値も高くない。


けど、彼は昔から誰にも流されず

自分の道を真っ直ぐ進んでいだ。


佑樹は、学校で学ぶ勉強が

彼自身の人生において、

あまり有益でないと考えていた。

だから学校の勉強はしない。


高校1年の時に、

佑樹からそれを聞いた。


佑樹は、中学と高校の6年間

司法試験に向けた勉強をした。


彼の両親は、医者と弁護士である。


金銭的にも余裕のある家庭に生まれた彼は

資格専門の塾で、

司法試験の勉強だけをしたらしい。


いわゆる学校の勉強は、形だけ。

高校受験も誰でも受かる高校を受け、

大学受験の勉強は全くしていない。

大学には行かなかった。


そして見事、高校3年生の18歳

司法試験に合格した。

彼が司法試験合格の最年少であった。


しかし、彼は法曹の道へは行かず、

15人程の仲間とベンチャー企業を立ち上げ、

現在その経営者となっている。

今はIPOに向けて動いているらしい。


俺は、人づてにその話を聞いて

佑樹に憧れていた。


20歳、30歳を越えて、40歳、50歳を越えて、、、

歳を重ねても

歯車の一部のように生きている大人達より

佑樹は、よっぽど自立した大人に見えたから。


俺は佑樹に声をかけようとしたが、


その時あることに気づいてしまった。




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