表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束  作者: Giveup&up
7/18

第6話『真意』


「2年前の事件って、何?」


巡査がこう聞くのも無理は無い。

知らない人には

今回の事件との関連性が全く見えない。

2年前の事件にも現場に俺と明美がいた。


隣にいる明美が小刻みに震えている。

そりゃそうだ。

2年前のあの事件でも、

明美は危険な目に遭った。


俺が思い出させてしまったのか。

俺は発言を後悔した。


「お巡りさん。

明美は心身共に疲れています。

少し家で休ませてもらえませんか?」


俺がこう言うと、

突然スーツの男が警察署に入ってきた。


「駅ホームから線路に落とされそうになった

事件の関係者だね?

刑事課の柳田(ヤナギダ)という者だ。」


俺と明美は柳田という男から

警察手帳を見せられ、名刺を渡された。

先ほどのお巡りさんも柳田に対し敬礼している。


「そこの巡査から事件の連絡を受けた。」


俺が電話している時に、連絡していたのか。


「二人共とても疲れているだろう。

雨もひどいし、家まで送るよ。」


柳田刑事にそう言われ、車へと案内された。

俺は震えている明美の手を優しく握った。


「明美。今日は色々あって疲れただろう。

帰ってゆっくり休もう。」


「うん。ジロウありがと。」


言われるとおり、

黒い車の後部座席に俺と明美は座った。


すると、運転席の柳田刑事が話し出す。


杉田明美(スギタアケミ)さんと

松井二郎(マツイジロウ)さんだね?」


明美と俺の名前。

なぜ、この刑事が知っている?


実はこの男。刑事でなく、

俺達をどこかへ誘拐する気なのか?


一瞬、そう頭によぎったが、

以前のような嫌な予感はしない。

さすがにそれは無いか。


「俺は2年前の事件を捜査しているんだ。」


そう柳田が言った。

するとまた、明美が震え出した。

呼吸も少し乱れている。


「柳田さん。やめてください。」


俺は柳田刑事の言葉を止めた。

今、明美は精神的にキツイはずだ。

ついさっき、命の危険にさらされた。


その状況の明美に

2年前の事件の話を切り出すのは、

あまりにも酷じゃないだろうか。


すると、柳田刑事はゆっくりと

明美に話しかけた。


「杉田明美さん。

自分を強く持ちなさい。

あなたには、隣にいる

松井二郎くんも付いている。

それに、俺もあなたの味方だ。

多くの警官をあなたの護衛につける。

女性警官もいるから何でも相談しなさい。

送り迎えも警察がする。

安心していい。

だから現実と向き合って、一緒に闘おう。

俺達警察が、必ず犯人を捕まえるから。」


それを聞いた明美は前を向いていた。

手の震えも徐々に止まっていく。

呼吸も少しずつ整っていく。

明美はか細い声で、しかしハッキリと答えた。


「ありがとうございます。」


明美の心を癒したのは、

俺でなく、この刑事だった。


少し悔しい気持ちになったが、

とてもありがたい気持ちになった。


明美の家につき、明美が玄関に入る。


俺は、柳田刑事と玄関の外まで行き、明美と話す。


「明美、気を付けてな、、、」


その時、また連絡すると言いたかった自分がいた。

でも連絡先は全て消したから、連絡は取れない。


「うん。ジロウ。本当にありがとね。」


「明美、、、あの。」


「ん?何?」


「いや、何でもない。」


「うん、、、じゃあ、またね。」


「またな、、、」




明美に聞きたいことはたくさんあった。

連絡先や、

今守ってくれる彼氏がいるのかとか。

それに、親のこと。

あと、今何をしていて、

何のために駅で待っていたのか。

そして、一番引っ掛かっていることは

なぜ、


今日、俺に大事な面接があることを知っていたのか

という点。


明美は俺が電話して警察署に戻った時、確か

「大事な面接とかだったんじゃない?」

と心配していた。


あの時点で面接の会話は出ていないはず。

スーツ姿の俺を見てそう言ったのかもしれないが、

例えば働いていると思うのが普通じゃないか?


まぁ、「とか」って言っているし、

選択肢の1つを言っただけ。

1つの例示として言ったに過ぎない。

考え過ぎか?


でも、多くの選択肢から

第一候補として「大事な面接」

という言葉が来るのは引っ掛かる。


面接だけでなく「大事な」

という内容や程度も含む言い方。


まるで俺の面接に行く予定や

その内容を知っていたみたいだ。



「じゃあ、ジロウくんも送るよ。」


そう言って柳田刑事は運転席に座り、

俺は助手席に座った。



「刑事さん。2年前の事件について

知っているんですね?」


「ああ。」


「今回の事件と何か関係があるんですか?」


「まだ分からない。」


「、、、」


俺は、気になっていることがある。


「谷本先生って、まだ刑務所にいるんですよね?」


谷本先生も今回の犯人と同様、

身長が175㎝程だと記憶している。

まさかとは思うが一応確認してみた。


「ああ。まだ服役中だよ。

懲役10年だから、

仮出所をするにしても、

刑期の3分の1が経過しないと出れない。」


2年前の事件だから、

谷本先生はまだ刑務所の中か。


というか、その前に

まず聞かないといけないことがある。


「2年前の事件って解決したんじゃないんですか?」


「、、、、俺は他に黒幕がいると思っている。」


「そんな、、、」


俺は言葉に詰まる。

柳田刑事の様子から、

そのように感じてはいたものの、


俺の人生を狂わせたあの事件。

いや俺だけじゃない。

サトシや明美を。


その事件がまだ解決していないなんて

信じたくなかった。

サトシ、、、、

俺はサトシの最期の言葉を思い出していた。


柳田刑事に聞くべきことはたくさんある。


「黒幕、、、つまり未解決。

それって、谷本先生の[脅されて刺した]

というあの弁明とも関係があるんですか?」


「、、もう到着だ。」


俺の家に着いていた。


「キミはもうこの事件に首を突っ込む必要はない。

今日はよく杉田さんの命を守ってくれた。

本来は警察の仕事だ。

その礼は言う。どうもありがとう。

でも、決して危ない橋は渡るなよ。」


これ以上の詮索はできないと悟った。

「危ない橋を渡るな」か。

俺の心配というより、一種の忠告だな。

俺は家に帰った。



俺が帰った後、

車に乗ろうとした柳田刑事は

後部座席に何かを発見する。


「ん?この紙切れは、なんだ?」



明美が(ジロウ)に残したメッセージだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ