第1話『力』
俺の名前は二郎。
高校2年生だ。
まだ高校2年生だけど、
いろいろ疲れた。
何の役に立つか分からない勉強。
スクールカーストみたいな
変なしがらみ。
もっと学校は、
みんなに役立つ勉強を必須科目にしてくれよ。
例えば、①語学②論理学③実用学みたいな感じで
必須3科目にして、あとは選択科目にしてほしい。
ジャストアイデアだが。
その方が良くない?
俺の才能も活かせるし、、
まぁ才能なんか無いか。
高校1年生まではサッカー部に入っていた。
けどレギュラーになれなかった。
中学ではキャプテンで活躍していたのに。
オマケにサッカー部の同級生に
彼女の明美を取られた。
そいつは、1年生からレギュラーでエース。
みじめ過ぎて辞めるしかない、、、
サッカー部を辞めてから1年近く経つか。
高校2年の7月。クラスは2組。
何か、圧倒的な力が欲しい。
みんなに自慢したいし、
尊敬されたい。
女の子にモテたい。
お金も欲しい。
頭も運動神経も良くなって
チヤホヤされたい。
皆にチヤホヤされたい。
そのためには、どうすれば
まぁ、無理だろーなぁ、、
革命起きて欲しい、、
そんなことを教室で考えてると
1人の男が話しかけてきた。
「何してんー?」
でた。サトシだ。
クラスメイトのしょうもない奴。
というのは、冗談でそこそこ良い奴だ。
「休み時間だから寝てる。
サトシは相変わらず暇そうだな!」
まぁ、話しかけてくれたのは嬉しい。
クラスではこいつと
裕美と佑樹
くらいしか話しかけてくれないからな。
もっと、みんな俺に着目して
仲良くしてくれよー。
俺とサトシの会話を周りに聞こえるように
わざと大きめの声で
「サトシは相変わらず暇そうだな!」
と言ったが、周りは全然無反応だ。
うちのクラスの2年2組にも
スクールカーストみたいなのがある。
一軍~三軍に分けるとしたら、
多分俺は二軍かな?
と思っている。
まぁ、三軍かもしれないが。
イケイケグループの一軍が羨ましい。
サトシも多分二軍かな。
本当はそんなこと、どーでも良いんだが。
いろんな人とみんなで仲良くしたい。
「ジロー。何か面白いことないかなー。」
「ないでしょー。」
俺とサトシは何の生産性もない会話をしていた。
もうすぐ休み時間が終わろうとしている。
「次は5限、物理か、、」
そう言った刹那、
俺の中で凄まじく嫌な予感がした。
背筋がピリッとした感じ。
あるいは頭から電流が流れる感じ。
よく分からないが、
自分の中にある本能が危険を察知した。
「明美!!」
俺は大きな声でクラスにいる明美に叫んでいた。
何しているんだ俺は。
クラスがざわついている。
「、、、、」
明美は戸惑った表情でこちらを見ていた。
「あいつ何言ってんの?まじキモいな、、」
二軍の俺がいきなり大声で叫んだからだろう。
クラスメイトの陰口が耳に入る。
「お前何言ってんの。」
一軍のイケイケ田口が俺に威嚇した。
しかし、俺は構わず
明美の方へと向かっている。
「ジロウ何してる。いきなりどうしたんだ?」
サトシも慌てた様子で俺の肩を持った。
明美に近づく俺を止めようとしてくれた。
自分でも何をしているか分からない。
しかし、俺の中の何かが俺を動かした。
同級生に彼女だった明美が奪われた。
突然休み時間、
明美にフラれた俺が
明美に話しかける。
それも大声で。
クラスメイト全員がいる前で。
一軍の奴なら許されるだろうが、
二軍の俺が言うと中々きつい状況。
普通に痛い奴だ。
しかし、その直後、
2年1組の担任である谷本先生が
入口に笑顔で立っていた。
1組の先生がどうしたんだろう。
そう思った刹那
「キャーーー!!」「うわぁっっっ!」
クラスの女子の悲鳴、男子の悲鳴が飛び交った。
谷本先生の右手には、
刃渡り20㎝程の大きなナイフがあった。
時々考える。あの時の俺に「力」があれば、
今の俺はどうなっていたのだろう。
人を守る力があったら。