第16話『告白』
※この話はヒロミ視点となります。
「んー、そろそろ起きよっと。」
私はヒロミ、19歳。
ピチピチの大学1回生。
朝6時に起きた。
今日の午前中の授業には
9時に起きたら間に合う。
でも、今朝は眠りが浅かった。
今日はジロウと会う日だから。
楽しみであまり眠れず
早起きしてしまう。
私は朝からお風呂に入り、
ストレッチと軽いマッサージをした。
化粧もバッチリ。
久しぶりの本気モード。
「お母さん行ってきまーーす!」
「えらい元気じゃのー?
昨日ジロウくんが来たからか?」
お母さんには
私のジロウに対する気持ちを
悟られつつある。
やはり、親には分かるのだろうか?
「うるさい!そんなんじゃない!」
昨日ジロウが来ただけじゃなく
今日も会えるんだし!
私は大学へと向かった。
道中も、授業中もずっと
ジロウのことを考えていた。
待ち合わせは12時50分に□□駅。
ちょっと早く□□駅に着く。
「まだ12時半かー。」
20分後が待ち遠しい。
そう思っていた時、
「おっ!ヒロミ!
早いじゃん!待たせた?」
ジロウが来た!
「ジロー!!!」
私はジロウに駆け寄る。
女の子はみんな
自分の可愛い見せ方を
知っている。
好みの男には、
そういう仕草が自然と
出てしまう。
ジロウも早めに来てくれたんだ。
何だか嬉しい。
「それじゃカフェに行こっか!」
ジロウの声がセクシーに聴こえた。
「うん!行く!」
私はジロウのことが
好き。
中1に出会った時からずっと。
中学時代、
私とジロウと明美とサトシは
4人でいつも遊んでいた。
ジロウのことを最初に意識したのは
私と明美がボールを蹴っていた最中、
「俺からボールを取ってみろ!」
そうジロウに言われて、
ふざけながらじゃれあった時。
なんかその時にドキッとした。
なんでかは分からない。
それからジロウをずっと意識していた。
段々とジロウへの気持ちが大きくなった。
サッカーをやってる時のジロウ
4人でふざけている時のジロウ
いつも文句ばかり言うジロウ
ふてくされているジロウ
褒めると調子にのるジロウ
明美を見つめる時の
ジロウの横顔
全部が好きだった。
私は中学時代、
ジロウと明美の両方から
恋愛相談を受けていた。
互いが互いのことを
好きだという相談。
相談された恋愛を
成就させるのは簡単だった。
ただ単に、
相手もあなたのこと好きみたいだよー。
って伝えるだけ。
そのことを私が
二人に伝えていたら。
二人はもっと早くに
付き合っていただろう。
だけど、それはできなかった。
かと言って、二人の邪魔も
できなかった。
ジロウから明美が好きという
相談を受けていた時が
一番辛かった。
堪えきれずに
陰で泣いたこともあった。
それをサトシに見られたこともある。
誰にも見られたくない私。
本当の弱い自分。
それをサトシに見られた。
ジロウが明美と別れた高校1年。
私は嬉しかった。
死ぬほど嬉しかった。
その気持ちを隠そうと
ジロウがフラれたことを
いじったりもした。
先週の金曜、
明美からLINEがあった。
明美とは親友。
でも、許せなかった。
どうしても許せなかった。
2年ぶりにジロウくんを
電車で見掛けたよ。
久しぶりにジロウくんの顔を見たら
昔の気持ちを思い出しちゃった、、、
という内容のLINE。
明美は私が
ジロウを好きなことを知らない。
私がずっと隠してきたから。
サトシ以外には
私の気持ちは悟られていない。
サトシには泣いたのを見られてバレた。
まぁ、母親にもバレかけているが。
だからきっと。
明美には悪気がない。
でも、許せなかった。
明美には佑樹がいるのに。
私とジロウはカフェに入った。
□□駅から徒歩10分くらいにある
良い感じのカフェ。
もし今日、
ジロウと良い感じになれたら
私は告白したいと思っている。
ジロウに対する私の気持ちを。
ずっと好きだったという気持ちを。
「ジロウと二人でカフェなんて
ホント夢みたい!」
「そんな大袈裟だな!」
「だっていろいろあって
もうジロウとは会えないとさえ
思ってたんだから。」
「そうだなー。
俺もこうやって話せるの
なんか懐かしくて嬉しい。」
ホントにそう。
懐かしくて、安心する。
だけどドキドキする。
私とジロウの二人だけの時間。
これがずっと続けば良いのに。
「そう言えば、人生相談って何ー?
ジロウこそ大袈裟じゃないの?」
冗談混じりでそう言った。
「自分のしたいことが
見つからなくて。」
ジロウは少し俯いてそう言った。
その声や表情に男らしさを感じた。
私が見とれてると
ジロウは続けた。
「俺さ、あれからいろいろ考えてて
夢や目標が見つからない。
生き甲斐もなくて、
何のために生きてるか分からない。
俺に何ができるんだろうなって
考えちゃうんだよなー。
なんか自分に酔ってるみたいで
キモいだろ?」
ジロウは私と同い年なのに
もういろいろ悩んでる。
私にも目標なんかないよ。
でも夢ならある。
ジロウと一緒になるという夢。
ジロウは私と状況が違う。
私は大学に行っていて、
卒業するまで遊んでいても
社会は私を
それなりに評価してくれる。
でもジロウは中卒。
何もしなければ、
社会からの目は冷たい。
私のように遊んでいたら
「何をしていたんだ。」
と評価される。
やってること同じなのに。
大学ってお金で
働かないで許される時間を
買っているようなものなのかな。
ジロウの話を聞いていたらそう思う。
「、、キモくないよ!
ジロウは何か趣味とかないの?
そういうのあれば
人生楽しいかもよ?」
「趣味か、、、、ないなぁ。
ヒロミは何かあるの?」
「私も特に、、、
だけどダンスサークルが
水曜と金曜にあるから。
今はそれかなー。」
「へぇー。
どこでやってるの?」
「ここから近いとこよ!
今から行ってみる?」
冗談でそう言った。
私はジロウに明るく振る舞って
元気付けようとすることしかできない。
「行くわけないだろ!」
ジロウは笑っていた。
ジロウが笑うと
私も笑ってしまう。
恋してる女の子なら
この感じ分かってくれると思う。
「先週もサークル行ったの?」
「うん!
水金、両方行ったよー!」
「へぇー!
ちゃんと行ってるんだな!
土日とかは何してるの?」
えっ。
休みの日に何してるか
聞いてくれてた。
また土日にデートでも
誘ってくれるの?
考え過ぎかなー。
「土日暇してるよ!
たまにバイトあったり、
大学の図書館に
勉強しに行くくらい!」
「土日にも勉強かよ!
偉!」
「一応大学生ですから!」
ジロウとの何気ない会話が楽しい。
ずっと続いて欲しいこの時間。
でも、
次の質問で私のその感情が
一気に無くなった。
なんで、、、こんなことに。
「前の土曜とかは
何してたのー?」
「、、、、、」
黙っちゃダメだ。
怪しまれる。
私は咄嗟に嘘を付いた。
あの日は、
先週の土曜は、、
私が明美を線路に落とした日。
「えー。何してたっけ。
あ、大学の図書館行ってたよ?」
「え?勉強してたの?
やるなー!
何時頃から?」
「朝からやってたよー!」
そう答えると
ジロウは涙を流した。
その涙は。
私にとって
最も清らかで
透き通った涙に見えた。
「ヒロミ、、、
気づいてるか?
今お前は自分が犯人だと
俺に自白したんだ。」
「一連の事件の犯人は
ヒロミお前だな?」




