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約束  作者: Giveup&up
12/18

第10話『信用』

、、、、


「ユミ、、姉さん?」


「ジロウ久しぶりね。

元気にしてたの?

お父さんがね、、、」


俺は電話を切った。

そして、ユミの携帯番号を着信拒否にした。


松井裕美(マツイユミ)

戸籍上は俺の姉だ。

血は繋がっていない。


俺は海外出張が多い父親から

仕送りを受けることで何とか

生活できている。


ユミは今、彼氏と住んでいる。

俺はある出来事がきっかけで

姉と父親を恨んでいる。

それから二人とは疎遠になっている。


でも、父親からの仕送りが無ければ

俺は生活できない。

そんな自分が情けなくてたまらない。

親からの支援を受けず、

早く一人立ちしたい。


姉のユミと友達のヒロミは

同じ漢字の名前をしている。


「裕美のことを、頼んだ。」


サトシが残した最期の言葉。

それは俺にとって大事な約束だ。


サトシは裕美が好きだった。

サトシは俺に何を頼んだのか。

俺は裕美に対し、何をすれば良いのか。



俺はベッドに寝転び、

明美からもらった紙切れと

柳田刑事の名刺を眺めた。


すると、ある嫌な感覚がした。

以前のように危険を察知する感覚とはまた違う。


でも、あの時にも感じた嫌な気持ち。

見て見ぬフリをしたくなる気持ち。

何かに自分が操作されている予感。


俺自身にもう一人の自分がいるとしたら、、


そう考えると俺は自分が怖くなる。

多重人格。

そういうものがこの世にあるらしい。


俺は自分の中で、

少し何かが違えば、

凶悪な犯罪を犯していたのではないか。

そう思うことがよくある。


柳田刑事にも聞かれた。

自制が効かないことがあるかという質問。


仮に、もう一人の俺が

今回の線路落下未遂事件と2年前の事件の

真犯人だったら。


もし本当にそうなら

今の自分がいる内に自首したい。

自制が効く今の自分がいる内に。


実行者を巧みに操り、

明美を狙い、、、、

俺が明美を守る。

それが俺と明美の約束の実現になる。


約束のために俺が明美を、、


それに俺は、、、


明美を愛してると共に、

どこか憎しみを、、、



そういう意味で俺にも十分

犯行動機があるんじゃ、、、



俺は柳田刑事の名刺にある番号に電話した。



「もしもし。ジロウです。

柳田刑事ですか?」


「ジロウくんか。

どうした?何かあったか?」


「少し相談したいことがあるのですが。」


「わかった。もし良ければ今日。

うちに来れないか?」


「え、、良いんですか?」


「ああ。娘もジロウくんのことが

心配みたいだ。会いたがっている。

うちの場所は分かるかな?」


「はい。ヒロミん家には

おじゃましたことがあったので。」



そして、俺は柳田宅へ到着した。


そこで、俺が感じたことを告げた。



「何をしてる時に、そう感じたんだ?」


柳田刑事に問われた。


「この紙を見た時。」


そう言って例の紙切れを渡すと、

ヒロミが何かに気づいた。


「これって、、、」


俺と柳田刑事とヒロミは

事件について色々話した。


最近あった出来事や

その時感じたことも全て。


そして、

俺は2年前の事件で気になる点を

柳田刑事に尋ねた。


「凶器の入手ルートは明確になったんですか?

それと谷本先生の購入履歴はあったんですか?」



帰り道。

柳田刑事が家まで送ると言ってくれたが、

俺は断った。

一人で考えたかった。


雨が降ってきた。

傘もなく、雨に打たれる。

それが少し心地よかった。


ヒロイズムやナルシズムに

酔っているのかもしれない。


ぐちゃぐちゃになる気持ちを抑えながら

歩いていると、



「ジロウ、、、」


そこには佑樹と明美がいた。


俺は二人から逃げようと走り出した。


「待て!!」


佑樹が俺を止めた。


そして佑樹が話した。



「俺は、いつでもジロウの味方だ。

だから俺を信用しろ。

もし、他人から俺と違うことを言われても

俺だけを信用すれば良い。

そのことだけは忘れないでくれ。」



親友。

俺にとっての親友と呼べる存在。

それは、 サトシと佑樹だけだった。



俺は膝をつき、涙が溢れた。



そのまま俺は、明美と佑樹の家に行った。


俺は決めた。

これから何があっても、

佑樹だけは信頼すると。


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