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真夏の合法的歴史変更  作者: 刹那
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第二話「作者寝不足を実感する」

【真夏の合法的歴史変更】   刹那



「いやぁ~なつかしい、何もかもがなつかしい」

ここにいいる宮野紗香は俺の知っている宮野ではない。俺の知っている宮野は、静かで、頭が良くて、華麗なイメージである。しかし、目の前にいるのは

「くぅ~、一気に若返ったみたいだぜぇえええ」


まるでおっさんである。


「なあ、君本当に宮野さん?」

「何、まだ疑っているの?」

これだから橘はモテなかったんだよ。ハ~とため息をつかれ、どこか哀れみを含んだ視線で見てきた。おい、今ちょっと意味深なこと言ったぞ。

「さっき言った話(略)だけど、私はこの数日間のどこかで、大切な何かをやり残したらしいの」

(ずいぶんフワッとしているんだよな)

「だから過去の私を陰ながら手助けして、ハッピーになろうってのが私の計画」

どうよこの計画、と自慢気に誇示してくる。このただでさえ暑い真夏の真昼間。目の前の太陽に負けないくらいの熱量を心に宿したおっさん女が、こっちに向かって語り掛けてくる。暑い暑い暑い

「そういうのは一人でやってくれ。俺を巻き込まないでくれ」

こっちは高校最後の夏、部活も終わって受験勉強に励みたい時期なのだ。正直さっき道端で会っただけの未来女に尽くす義理はない。それに俺がいたからどうにかなるとも限らない。

「いっそ親にでもあって来いよ。そっちの方がうまくいくと思うぜ」

「……私もそうしたいんだけど……」


トラベラーの五原則によって禁止されているの


「トラベラーの五原則?」

そう、言うと彼女は目をつむり。唱えるように話し出した。


****************************************


第1条。過去の自分に自分の存在を知られてはいけない。また親族及び自分の存在を本人に伝える可能性のある人物とは交流してはならない。しかし、その人間とその後一切の関係のない生活をしている場合、この限りではない

第2条。第1条に違反しない限り、他人との関りを現在の自分の生活に影響が出ない範囲で許可する

第3条。過去に未来の出来事を伝えてはならない。第2条において許可された関係においてもこれは例外ではない。

第4条。長期間の滞在は例外なく禁止であり、必ず元の時間に戻らなければならない。

第5条。その時代のものを持ち帰ってはならない。また置いていくのも例外なく禁止である。


****************************************


「以上が五原則。法律も適用されないタイムトラベル中は、この五原則の範囲での行動をして、過去に影響をできるだけ与えないようにしているの。あ、もちろんモラル違反については書いてないけどダメ、ほら、殺人とか」

もともとは歴史の真偽の調査や、事件の調査に使われていた技術で、「歴史を変えることを前提としていない原則」なのだそうだ。しかし昨今は(未来の話だが)観光としての利用が検討されており、この五原則よりも厳しいルールが制定されるかもしれない。だから今こうして、まだ簡素なルールしかないうちにやってきたんだそうだ。

「え、そんなに俺に喋ってもいいの?第3条違反じゃない?」

「あ、うん、大丈夫、橘君は私の補佐だから。この時代の人物として認識されないの」

そういって笑う。変な笑みだなと少し思ったが、それがどこから来るのか分からず、橘は何も言わなかった。

「じゃあ、親族を補佐にしてしまえばいいじゃないか」

「それは絶対にダメ。私だってそうしたい、けど、それをしてしまえば」


わたし、宮野紗香という存在に矛盾が生じて、存在が消えてしまうの


だから会ってしまうだけでOUTなのだと、彼女は続けた。

「理不尽よねぇ、一番会いたい人に会えないなんて」

一瞬視線を少し下に向け、少しくぐもった表情をした。本当にそれは一瞬で、そのあと何ともないような顔をし、「だから、し、か、た、な、く、君と一緒にいるの、勘違いしないでよね~」とちゃかしてきた。

「うるせぇなぁ、でも、俺にとっちゃ何も得がねぇじゃねえか」

「ならついでに、この私が橘君の未来を明るくして差し上げましょう。どう?悪くないでしょ?未来はきっとモテモテだよ~?」

「……それ信用してもいいんだな」

「それはわからない」

「おい」

「とりあえず、面倒なルールがあるの。だからこれを上手くすり抜けて未来を変えるのを手伝ってほしい」

彼女はさっきまでとは打って変わって、真剣なまなざしでこちらを見てきた。その表情はやっぱり俺の知っている宮野と同じで、嘘をついていないのが良く伝わってくる。

「あぁ。精々努力して、お望み通りのハッピーエンドにしてやるよ」

「……ごめん。ちょっとイタイ」

「……しまいには泣くぞ」


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