初春の嵐
初春の嵐
切り裂かれた風が
私を切り裂いて通り過ぎる
猫柳の柔らかな花たちは
ただくすぐったそうに
ふわふわと揺れるから
風に引っかかれた赤い頬も
もう痛くはない
うすーく張った氷の水たまり
細い枯れ枝いっぱいに吹き出た桜の蕾
柳の垂れた枝えだを飾る小さなリボンのような浅葱色
切り裂いて散り飛ぶ風は
誰かのように粋がっているだけ
本当は優しさが怖いだけ
暖かさが怖いだけ
無謀に空気を乱し
荒れ狂っているのは
手の中に握っていることのできない
別れへの嘆き
傷ついた心は傷ついた体は
自分がもう長くないことを
知っている
猫柳の柔らかさ
そばにいれば温まる
陽だまりの中で陽炎に姿を変えてもいい
諍がわないで自分が変われば
愛されることを知っている
一気に空に突き進む
ちりぢりに裂かれた体が
金粉になってサラサラと舞い落ちる