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第4話 部長、初めてだったんですけども

まだキスのせいで少し体が火照ってる中、無事男の人は目を覚ましてくれた。

んまぁ、取り合えず死なずにすんでよかったよかった。

「……誰だ?貴様は」

意識を取り戻した途端、不機嫌そうに鎧の隙間から見える紅い瞳で睨みながらも私に言ってくる鎧を着た鎧の人。

あらら、せっかくの綺麗な紅い瞳が勿体ない。

ルビーのように紅く煌めく宝石みたいで綺麗なのに。

もう少し鎧の人の瞳を観察していたいところだが、私は鎧の人の質問に答えてあげる。

「いや、私はただの通りすがりの者なんですけど丁度貴方が熱中症で倒れているところを見かけてしまったもんで。今しがた貴方に水を飲ませてあげていたところです」

「そうか……。礼を言う、人の子の少女よ」

鎧の人は淡々とした様子で礼を言うと私の膝から頭を上げ、まだ少し気だるげに手で頭を押さえている。

悪い人ではなさそうだけどちょっと威圧的で少し怖いな、この人。

そう思いながらも私は思いきって先程の行為のことについて聞いてみることにした。

「あ、あの~。先程の行為についてなんですけれども……」

「……?先程の行為とは一体なんの事だ」

あれ?この人、もしかして覚えてないの??

あんな熱烈なキスで乙女の純潔のキスである私のファーストキスも奪ったくせに?

「私ならもう大丈夫だ。人の子よ早くこの森から去れ」

あれれー?何このあっさり感。

流石の私もなんかちょっとカチンときたぞぉ?

私は怪人さんの肩を両手でしっかりと掴み、目と目をちゃんと合わせて話しをする。

「何って先程の熱ッーいキスのことですよ。もしかして覚えてらっしゃらないんですか?」

「き、キスだと……!?私と君でか?」

「そーですよ!こちとら水を飲ませようと医療行為でキスしたってのにいきなり人の頭掴んで、ぶちゅーって!」

「ぶちゅーだって!?」

私はわざとオーバーなリアクションをとる。

これぐらいの意地悪なら許されるよねぇ?きっと。

「ぶちゅーとは!い、一体どんな!?」

すると、予想外なぐらいに面白い動揺ぷっりを見せる鎧の人。

ブハァッ……!!やばい、この人ッ!!めっさ動揺してる!

前言撤回この人超面白い。

そんなことをされてしまったら益々いじってみたくなってしまうではありませんか♪

調子に乗った私はさっきあったことをつい勢い任せに話してしまう。

「まず舌を入れられましたでしょー」

「……ッ!」

「で、その次は何度も何度も舌を絡めさせられました!」

「……ッ!!」

「そしてやがて二人の唾液は深く絡みつき、男は無意識に少女の首筋を撫であげ……」

その後もまるで官能小説を読むが如く私は具体的に話していく。次々に信じれない事実を私が赤裸々にすると絶句するかないといった様子の鎧の人。

兜で顔は見えないがきっと今頃、この人の顔色は絵の具の綺麗な紺青色みたいな色していることであろう。

「い、医療行為でやってくれたと言うのに。わ、私はなんて事を……!!」

鎧の人は見た目は大きいし黒くて危なそうだし、ちょっとクールなところもあるけど。この反応を見る限り、それ以外は普通に優しくていい人だ。

少しだけ世で悪女と呼ばれる人たちの気持ちが分かったかもしれない。にょきにょきと私の頭と背中から黒い角と羽が生えてくるのを私は感じてしまう。

「でも、鎧の人とのキスは気持ちよかったですよ。キスがあんなに素晴らしいものだと私は今まで知りませんでした」

最後の方、自分もうっとりとしてしまったのもまた事実であった。

私は素直に自分の気持ちを言って少しでも鎧の人の心の中に芽生えてしまった罪悪感なるものを取り除ければと思ったのだが。

逆効果だったのか余計ぴしりっと石のように動かなくなってしまった。

あ、あれー?ちょっと意地悪しすぎたかなぁ…?

「もしもしー?」と話しかけるが反応はなし。まるで屍ようだ。

ぴっくりとも動かなくなってしまった鎧の人に私はすぐにやり過ぎたと後悔した。

「ご、ごめんなさい!少しオーバーに私言い過ぎましたかも」

ほ、ほら!ファーストキスなんていつかはなくなるものだし、むしろきっと高校三年生にもなって遅すぎるぐらいだし!

大人のその、キスだって?今時の子ならきっと経験してる子、沢山いますよ!

私が必死に手振りしているとようやく体を動いてくれた鎧の人。

ふぅー、良かった。なんか傷つけちゃったのかと思ったよ。

私はほっと胸を撫で下ろした。すると鎧の人はうつむきながら私に喋りかけてきた。

「お前は怖くなかったのか…?こんな見ず知らずの奴を相手に」

「いやだな~。そんなぐらいで怖がるぐらいならそもそも最初から助けたりしようなんてしませんよ」

どうやら私のことについて気を遣ってくれていたらしい。

えへへ。

私はなんだか無性にその気遣いが嬉しくて照れ痒かった。

「それに見ず知らずの人だからと言ってほっとくこともできませんからねぇ。ジャパニーズ人としては!」

そして、最後は恥ずかしいけど私の思いを告げる。

「あっでも、これだけは信じてください。キスは本当に嫌じゃなかったですし、気持ち良かったんですよ……?」

私ができる範囲の精一杯の笑顔で言うと信じてくれたのか鎧の人はゴホンッと咳き込みながら「そうか……」とぼそりと呟く。何故

あっ、私大事なこと忘れてた。

「それと体力が回復してからでいいんで後でスケッチ書かせて下さいね」

「はぁ……?」

「助けてあげたお礼&私のファーストキスを奪った贖罪としてそれぐらい別にいいっすよね?」

私がそう強く言うと怪人さんは心底呆れたといった様子で私を見てくると「やっぱりお前は変わってるな」と言われたので私は「それが私の専売特許でもありますから!」と答えてあげた。

確かによく友達には変なところでスイッチの切換えがはやすぎると言われたものだが私は、別にいっか程度でいつも済んでしまう。まぁ、実際深く考えるのが苦手なのでそうなってしまうだけなのだが。

この鎧の人とも会ってあのキスもしたのもまた何かの縁って思えばこれぐらいどうってことはないのよ。今回の話しも。

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