第2話 部長、アホですから
城を追い出されて私は町の中をブラブラと行く宛もなく歩く。
「はぁー……これからどうしよ」
私が持ってる物と言えばこのマイ・スケッチブックとポケットに入れてた鉛筆と消しゴムという三種の神器だけ。
「これからどうしよう、でも私に出来ることって絵を描くことだけだし」
ぐぅ~。
盛大に私のお腹が空の彼方へ鳴り響く。
くそぅ、こんなことなら昼ご飯の時間ちゃんとご飯食べときゃよかった。
つい絵に夢中になると昼ご飯の時間なのに弁当も食べず美術室に乗り込んで絵を描く時間にまわしちゃうんだよなー。
コンテストも近いから少しでも時間があるなら絵を描く時間にまわしたいし、何より絵を描いてる時が一番の私の至福の時間だった。
「お腹空いたなぁ~……」
私は街角の階段に座る。目の前の人たちはまるで川のように流れていく。町の人たちは自分の仕事で忙しいのか私のことなど見えてないかのように通りすぎる。
うぅ、なんか今頃になって寂しくなってきた。
私はそんな人たちを前にしながら私は空腹と寂しさを紛らわすように指を動かし林檎の絵を描く。
あぁ~、この絵の林檎が本物になればいいのになぁ。
そう私が思った瞬間だった。突然私のノートが淡く光り輝き、林檎が浮き出る。
「えっ、え!?」
気づいたら私が絵に書いたはずのを林檎が階段にころりと転がっていた。
な、なんじゃこりゃ!これ、私が描いた絵だよね?
何度も私は林檎を描いたページを見返すが、描いたはずの林檎の絵を切り取ったかのようにまっさらなページに戻っていた。
「ほ、本物……?」
林檎を拾ってみって確認してみるが質感は間違いなく私の知っている林檎そのものであった。
けど、お味の方はいかがなのかしら~?私は林檎を擦ってパクリと皮つきのままかじってみる。
「お、美味しい~!」
口一杯に林檎の酸味と甘味の果肉の味が広がる。
うん!この味はまごうことなき林檎の味だねぇ!あぁ、空きっ腹のせいか余計うまく感じるわぁ~。
私はむしゃむしゃと林檎を食べ進める。あっという間に林檎は芯だけになりちゃんとゴミ箱に捨てて私はこれからの生活について考えた。
うーん、どうしよ。食料の心配はなくなったけど全然いいアイディアも浮かばないや。
美術の成績以外は壊滅的に酷い私の通知表。そんな私がこれからの生活をどうするかなんてすぐに決められるはずなんてないじゃん。
「あー!やめたやめた!」
難しいことを考えそうになると頭がパンクを起こしそうになる。絵の構図を考える時はこんなことにはならないのにそれ以外はてんでダメなんておかしな話しだよね?
「きっと、なんとかなるさ」
私の魔法の言葉。不安になりそうな時はいつもこうしてのりきってきた。
勿論、なんの確証も保証もございませんがね。
取り合えずこの人間で溢れ帰っている狭苦しい鳥篭のような国から出たかった。正直、ここは息苦しくてたまらない。
私はスケッチブック片手にと国の出口へと足を進める。こうして私の自由気ままの旅は始まった。