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第1話 部長、異世界で捨てられました。

いつものように夕暮れまで学校に残り、ジャージ姿で一人静かに絵を描いていた時だった。突然、目の前の景色が変わる。

えっ、ちょっとここドコデスカ??

私は気づいたら何処かも分からない中世のヨーロッパの城の中にいた。けど、私以外も私と同じ学校の生徒がいた。皆、部活動の途中だったのか学校の制服や部活動のユニフォームを着た人がいる。

私、もしかして異世界にでもトリップしちゃった……?

すると、私の予感は的中。いかにも王様ぽっい感じの恰好した男の人が現れる。

「異世界から遙々ようこそ、そしておめでとう。君たちは悪である魔王を倒すため勇者として選ばれたのだよ」

勇者?私たちが??けど、お恥ずかしいながら私の身体には特に変わった様子もなく、ジャージ姿で顔には所々、油絵の絵の具がくっついたままの情けない姿のまんまである。

「えっ、あの~ご質問なんですがお家への帰り方は?」

「さぁ?」

えっーと、どうやら各国の人間たちの王により私たちは魔王を倒すための勇者として、そんな自分勝手な異世界召喚に巻き込まれてしまったと?そして、今現在私の還す方法も分からないと?なんともなろう顔負けな強引かつ理不尽な異世界転移ですな。

勿論、そんな強引な王様たちに対し不安の声が上がり中には泣き出してしまう子もいる。すると、王様は宥めるように優しい声で言う。

「まぁまぁ、ここに召喚されたということは勇者の資格があるということ。君たち全員、何かある特別な能力を授かっているはずだ」

そんなこと言われてもですねぇ~。ん?いや、ちょっと待てよこのメンバーって確か……。あっ!そうだ!皆、どこかしらの部活の部長さんだ。この前の生徒会の部活動の予算決めの時に顔合わせたことがあるから間違いない。

「さぁ、君たちの力を見せておくれ」

「じ、じぁ試しに俺から……!」

そう言って王様の前に出たのは剣道部部長の確か……そう、冴原くんだ!いつも大会では主将を務めてて剣道初段の腕前を持つ。生徒会の書記もやっておりそのクールだが皆に優しいと女子にいつも囲まれている。胴着姿で竹刀を構えていると控えていた騎士ぽっい人が容赦なく剣を振り翳す。

「危ない!」

皆誰しもが叫ぶ中、冴原くんは見事な腕前で竹刀で騎士から剣を弾き飛ばす。す、すごい竹刀で剣をやっつけちゃうなんて!

「な、なんだ……?身体が勝手に……!」

「素晴らしい!君は物凄い剣術の能力を手に入れたようだね。よし、今日から君はこの国の騎士団長だ」

えー!いきなりだな!おい!!ほら、見ろ冴原くん本人だってポカーンとしてるぞ!

「つ、次俺!!」

「わ、私も!」

皆冴原くんの姿を見て触発されたのか、列に並んで王様に能力を見定めしてもらおうとしている。どうやら、皆自分の能力を確かめたいのと地位が与えもらいたくて躍起のようだ。まぁ、確かにこんなわけ分からん異世界に来てしまった以上、相応のポストも必要だしね。

みんな、しっかりしてるなぁー。

私は列の最後尾に並ぶ。

皆次々に部活動で培ってきた才能を開花させ歌姫や国家魔術師の称号を手にする。すると、色んな国からやってきた偉い人から勧誘を受ける。そんな凄い能力の中、私の能力ってなんだろう?わくわく。最後に私のターンがやってくる。

「君の力は?」

「私はこれです!」

バーンっと私ご自慢のスケッチブックを取り出した。だけど、中身を人通り見た王様の反応は薄い。あ、あれぇー?けっこう自信作ばっかりなんだけどなぁ。

「これ以外の物は?」

「え?」

「この絵以外の物はないかと聞いておるのだ」

「な、ないです……」

えっ、えっ?ちょっと怖いよ、王様。スマイル、スマイル!!

さっきまでの上機嫌は何処へやら急に不機嫌な顔を見せる王様に私は戸惑う。

「ならば特に君には用はない」

そういうと王様は指パッチンをし、後ろから衛兵を呼び出し私を追い出すように命令する。

訳が分からず私はヘルプの視線を他の皆に送るが誰も目なんか合せちゃくれやしない。そりゃ、ないぜ皆。

そのまま私はぽっいとお城の外へと捨てられる。

あぁ、だから嫌だったんだ。部活動の部長なんて引き受けるのは。

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